学校迷宮と若返りドーナツ

クリヤ

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(17)図工室の試練

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 ボクたちは、長かった試練をクリアして家庭科室を出た。
 初めてやることがたくさんで、すっごく大変だったけどね。

 だけど、ボクは今までできなかったことができるようになった。
 だから、今回はふたりとも胸を張って廊下に出たんだ。

 「フルーツポンチ、おいしかったね!」
 「ああ、そうだな」
 「じーちゃんがさっき言ってたみたいにさ」
 「うん」
 「この【迷宮】って、悪いことばっかじゃないのかも」
 「そうだなぁ」
 「だけど、いったいだれが、ボクたちをここに閉じ込めてるんだろ?」
 「……」
 「……? じーちゃん?」

 急にじーちゃんの返事が聞こえなくなって、ボクは振り返る。

 「じーちゃん!」

 そこには、さっきまでのボクと同じくらいのじーちゃんはいない。
 ボクの見慣れたじーちゃんが、しゃがみ込んでたんだ。

 「じーちゃん、どっか行っちゃったのかと思ったよ!」
 「いや、オレはどこにも行く気はないんだが……」
 「どうしたの? また足が重い?」
 「いや、足は大丈夫だ」
 「えっと、じゃあ、どこか痛いの?」
 「うん……。肩がな……」
 「肩こり? だったら、ボクがもんであげる!」
 「う~ん、この痛さは肩こりじゃあないな」
 「じゃあ、なに?」
 「たぶん、五十肩じゃ……ないかなぁ?」
 「ゴジューカタ、ってなに?」
 「オレくらいの年になるとな、突然、肩が痛くなってな」
 「うん」
 「腕が上がらなくなるんだよ。イテテテ……まいったな」
 「さっきのフルーツポンチがあったら、いいのにね!」

 じーちゃんになると、大変なことがいっぱいみたい。
 『ローガン』に『ゴジューカタ』だって!
 ゲームに出てくる、すっごく強い技とか武器の名前みたいなのにね。

 まだ試練は続いてる。
 じーちゃんが『ゴジューカタ』でも、できるといいんだけど。

 肩は痛くても歩けるみたいだから、ボクらは廊下を進んだ。
 じーちゃんは、時々「イテテテ」って言うけど。
 長い長い廊下をしばらく進む。

 ようやく着いた次の教室は、図工室だった。
 ボクは心の中で「やった!」とガッツポーズをした。
 体育と給食の次に好きなのが図工。
 絵を描くのも楽しいし、粘土も好き。

 去年の夏休みには、図工の宿題でブックスタンドを作った。
 ひとりで! と言いたいけど、パパが手伝ってくれた。
 でも、クギを打ったのはボクだよ。
 パパは、押さえてただけ。

 「図工室かぁ。懐かしいなぁ!」

 じーちゃんは、腕をなでながら言った。
 やっぱりまだ、『ゴジューカタ』は痛いみたい。

 「オレは、図工が1番好きだったなぁ」
 「そうなの?」
 「ああ。ものを作るのが楽しくてな」
 「うん、ボクも好き」
 「ま、勉強がキライだったってこともあるけど」

 そう言って、じーちゃんは大口を開けて笑った。
 やっぱり、そうだよね!
 大人はみんな、子どもの頃に勉強したって言うけどさ。
 絶対、ウソだと思うんだ。
 だって、体育とか給食とか図工とか。
 そっちのほうが、楽しいでしょ?
 全部の授業が、それだったらいいのになぁ!
 あ、家庭科もいいよね。
 料理は楽しいし。
 音楽?
 あれは、ダメダメ!
 だって、ボク、歌が苦手なんだよ。
 ひみつだよ?

 図工室に入ると、絵の具の匂いと粘土の匂い。
 それに、木の匂いがした。

 パンパカパーン! パンパンパン! パンパカパーン!

 出た! あのうるさい音! ということは……?
 やっぱり!
 黒板に浮かび上がってきたのは、試練。
 4回目だからね。
 ボクは、もう驚かないよ。
 

 ☆学校迷宮の挑戦者へ☆

  ここは、第四の関門。図工室の試練。
  これをクリアできなければ、先へは進めない。
  先へ進めない挑戦者は、永遠に迷宮をさまようことになる。

  【図工室の試練】

   電動糸のこを使って、板でゾンビを10体作り出せ。
   下書きどおりに切れたら、絵の具で色をつければクリア。

   絵の具がたりなくならないように注意。
   板を割ってしまう。
   ゾンビに指定の色がぬられていない。
   どちらかでもクリアできていない場合は、失敗になる。


 糸のこ~⁉︎
 ホントに、この【迷宮】はちょっとだけイジワルだ。
 糸のこも2学期の楽しみな授業なんだ。
 だから、ボクはまだやったことがない。
 ノコギリと違って、上手にまあるく切れるんだって。

 じーちゃんは、できるのかなぁ?
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