学校迷宮と若返りドーナツ

クリヤ

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(1)学校の迷宮

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 「ユウスケ、オレが分かるか?」

 ボクの後ろに突然、現れた男の人はそう聞いてきた。
 
 (知らない! 今、それどころじゃないし)

 そう言い返したかったけど、我慢した。
 『知らない人には、丁寧に話すのよ』
 これが、ママの教えだから。

 「知りません。ちょっとボク、忙しいので」
 「ちょ、ちょ、ちょっと待て!」
 「なんですか?」
 「オレだよ!」
 「だれです?」
 「おまえのじーちゃんだ」
 「うちの祖父は、そんなに若くありません」

 どう見たって、若いお兄さん。
 今年、学校にやってきた新任の先生くらいに見える。
 ウソをつくにしても、もうちょっとうまくつけばいいのに。

 「どうやら、若返っちゃったみたいなんだよ!」
 「はぁ。そうですか」
 「信じてないだろ!」
 「いえ、信じてます。それじゃあ、また」
 「待て、待て、待てって!」
 「なんですか? ボクには時間が……」
 「証明してみせるから!」
 「いえ、大丈夫です」
 「いいから、見てろって!」

 ボクの言葉を無視して、その人は何かを半分に割って食べた!
 持っていた紙袋から、いつのまにか取り出してたみたい。

 ごくん。
 その人が飲み込んだ瞬間。

 ボフン!
 大きな音とピンク色のモヤが出て、その人が見えなくなる。

 モヤが消えると、そこにはボクと同じくらいの年の子がいた。

 「あれ? さっき、ここにいた男の人は?」
 「だから、オレだって!」
 「キミは、どこから出てきたの?」
 「ユウスケ、おまえ、若いのに頭固いなぁ」

 ボクのことを知ってるみたいなことを言う。
 だけど、こういう人ほど気をつけなきゃいけない。
 そう、これもママの教えだ。
 『悪い人はね、色々調べてくるのよ』
 『だから、知り合いと言われても信じちゃダメ』

 「じゃあ、いいよ。ボクはここを出ないと」

 ペコリと頭を下げて、ボクは先に進もうとした。
 この子に構っている時間はない。
 だって、ボクは今、ものすご~く困っているんだ。

 学校の理科室から出られない。
 入ってきたはずの戸は、どこにもない。
 薬品や実験器具が入っている棚は、ひとつも開かない。
 黒板の下のチョーク入れだって、開かないんだ。
 もしかしたら、と思って準備室のドアもガチャガチャやってみた。
 準備室は先生しか入っちゃいけないから、初めてさわった。
 もちろん、開かなかった。
 まるで、全部が絵になっちゃったみたいだ。

 黒板には、チョークでこんなことが書いてある。

  ☆学校迷宮の挑戦者へ☆

  ここは、第一の関門。理科室の試練。
  これをクリアできなければ、先へは進めない。
  先へ進めない挑戦者は、永遠に迷宮をさまようことになる。

  【理科室の試練】

   アルコールランプに火を灯せ。
   ただし、使えるのはマッチのみ。
   マッチをすることができるのは、1回だけ。
   失敗すれば、マッチは消えてなくなる。
   挑戦するのは、ペアのどちらでも良い。

 あのうるさい音がして黒板に浮かんできた文字。
 だけど、ボクは『挑戦者』になんてなった覚えはない。
 『学校迷宮』って、なんなんだ?
 『ペア』って、だれと?
 そもそもボクは、ひとりで学校にきたはずなんだ。
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