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クリヤ

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第4章 独占欲

(5)クローゼットシェアと幸せな結末

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 クローゼットも共有したいと思ったのが、キッカケだった。

 模様替えをした時には、とにかくナオキと離れたくなくて。
 呼ばれなくても当たり前のように、一緒に寝たくて。
 ベッドと家具を入れ替えることで満足だった。
 だから、クローゼットにまで手がまわらなかった。
 けれど、洗濯をして、自分のものとナオキのものを分ける時に感じる。

 (なんだか、寂しい……。全部が一緒じゃないって)

 「ねぇ、ナオキ。クローゼットも一緒に使っていいかなぁ?」
 「いいよ、当たり前でしょ」
 「ナオキの服、勝手に着てもいい?」
 「着たいの?」
 「うん、ナオキのいい匂いするから」
 「オレは、いいけど。ショウゴのも着ていいってこと?」
 「いいよ、もちろん」

 ふたりのサイズは、同じだった。
 身長差があるから、本当は違う。
 けれど、ショウゴはゆったりサイズが好きで、ナオキはピッタリサイズ好き。
 結局、選ぶサイズは同じになった。

 「でも、不思議だよね。
  同じ洗剤使ってるのに、ナオキの服からだけ、いい匂いがする」
 「ショウゴの服からだって、ショウゴの匂いするよ」
 「え? まぢで? 臭くない? 自分だと洗剤の匂いしかしない」
 「いい匂いだよ、抱きたくなる匂い」
 「え? ホントに?」
 「うん、ほら」

 洗濯物をたたむショウゴは、ナオキに後ろから抱きしめられる。
 背中に押しつけられたナオキの鼻が、クンクンと匂いを嗅ぐのが分かる。
 それだけのことなのに、ショウゴの腹の奥はキュンとうずく。
 それからすぐに腰のあたりに、膨らみを感じる。

 「ねぇ、あたってる」
 「うん、そう言ったでしょ。ショウゴ、いい匂いさせるから」
 「ふふっ、なんだか嬉しい」
 「でも、コイツをなだめる手伝いをしてもらわないと」
 「それは、いつだって、大歓迎」

 ナオキがショウゴの肩を掴んで、くるりとまわす。
 唇を少しだけ舐める仕草が、なまめかしい。
 赤色に染まったナオキの唇の内側が、ツヤっぽく光る。
 ショウゴは、数秒さえ待てなくて、その赤色に唇を寄せる。
 なめらかに受け入れるナオキの瞳に、情欲の炎が灯る。
 その目は、ショウゴを虜にする。
 自分から腰をぐいぐい押しつけて、唇を割ると舌をねだる。
 いつだって、ナオキの舌は、ショウゴを拒まない。
 ナオキの甘みに、ショウゴの全身が震える。
 唇を合わせたまま、スルスルとショウゴの着衣は、はがされていく。
 ナオキには、ショウゴの体のラインすべてが把握されているみたいだ。

 「ショウゴ、ここに座って……」
 「……ん」

 ソファに座るナオキのひざの上に向かい合うように、またがる。
 ショウゴの脳裏に、初めて一緒に入った風呂の情景がよぎる。

 (あの時のナオキは、キレイで、かわいくて、色っぽくて……)

 思い出すだけで、ショウゴ自身がぐいっと持ち上がる。

 「……なんか、別のこと、考えてる?」
 「ちょっと……前の、ん、……んぁ、ナオキの……こと」
 「ふふ。変なショウゴ。オレは、ここにいるのに」
 「あ、あぅ……、そう、だけど、前の……んんぁ、ナオキもかわいくて」
 「今のオレのことだけ、考えて」
 「ん……、ナオキのことだけ考えてる……」

 後ろの窪みをほぐしながら、ナオキは、ショウゴの胸の突起を舌で転がす。
 ナオキの片手とショウゴの片手が、ふたり自身をまとめて包み込む。
 上下にゆるゆると動かすと、心地いい刺激に全身が貫かれる。

 「あぁ、もう……ダメかも……、んくぅ」
 「いいよ、イキたい時にイって」

 ショウゴが達しても、ナオキの指は止まらない。
 ナオキの指の動きに、ショウゴの腰が止まらなくなる。
 ソファの背もたれを掴むと、ナオキのそそり立った自身に窪みを沈めていく。

 「ナオキ……、ボクが動く……」
 「ん、ムリはしないで。でも、嬉しい」

 ナオキに背中と腰を支えられながら、ゆっくり上下する。
 抜けてしまいそうなギリギリの中で、何度もくり返す。
 いつもとは違うじわじわとした快感に支配される。

 「……ごめん、ショウゴ。……もう、ガマンできない」

 ナオキは、繋がったままのショウゴを抱き上げると、床に寝かせる。
 洗濯物でいっぱいの床の上は、ふわふわで、ナオキの匂いがする。
 唇を合わせて、舌をからめると、ナオキの腰が動き出す。
 さっきまでのスローな動きでたまった欲求をぶつけるように。
 その動きは、少しずつ激しさを増す。

 「ん、ん、んん。……あっ、あっ、あっ、……んん」

 ナオキの動きに合わせるように、ショウゴの口からは喘ぎ声がもれ続ける。
 じわりと汗ばむナオキの肌が光り、ナオキの匂いが強くなる。
 洗剤の香りと、ナオキの匂いに包まれる。
 からめられた指に力が入ると、ショウゴの窪みは勝手にキュイキュイと締まる。
 耐えるようなナオキの表情。

 (……その顔、好き。感じてくれてる。ボクだけのもの)

 ショウゴの独占欲は、この時ばかりは満たされる。
 ナオキと交わった日は、とろけるようないい夢を見る。
 要は、今のところ、毎日、夢見がいい。

 くるりとショウゴは返されて、四つん這いになる。
 けれど、もう腕に力が入らずに、下半身だけがナオキに支えられている。
 ふわふわのタオルに顔をうずめる。
 タオルの端の緑色のストライプ柄が目に入る。

 (あれ? この柄、どこで見たんだっけ……?)

 何かを忘れている気がして、ショウゴは思い出そうとする。
 けれど、繋がったナオキの熱に浮かされて、何も考えられない。
 何度か絶頂を迎えて、その日のショウゴも意識を手放した。


 ***

 クローゼットを共有にするために、ショウゴは衣類を引っ張り出していた。

 (昨日は、ナオキの魅力に負けちゃったからなぁ)

 ナオキといると、つい、抱き合いたくなって。
 抱き合ったら、やっぱり繋がりたくなってしまって。
 作業は、全然進まない。
 だから今日は、料理をナオキに任せて、ショウゴはクローゼットを片づける。
 ナオキのクローゼットからは、ナオキのいい匂いがする。
 その匂いを嗅ぐと、今すぐにでもナオキに抱きつきたくなる。
 けれど、そこをグッとこらえて、ショウゴは作業を進める。
 衣類を出していくと、クローゼットの端に一着だけスーツがある。

 (うわ、ナオキのスーツ姿、すごく見たい。絶対カッコいいよね)

 スーツと一緒にハンガーにかけられたネクタイは、緑色のストライプ。
 その柄を見た途端によみがえる、入試会場。
 そこで出会った、優しくてイケメンなメガネの試験監督。
 その人がしていたネクタイの柄に似ている気がする。
 緊張のあまり、ものを落とすショウゴに嫌な顔ひとつせず接してくれた。
 あの試験監督のおかげで、緊張がほぐれたと言ってもいい。

 (あの人、いい人だったし、カッコよかったなぁ……)
 (学年は上だから、向こうのキャンパスかぁ)
 (あっちは、ボクのことなんて覚えてないだろうなぁ)
 (だけど、もう顔も曖昧になっちゃったな)

 実は、試験の間、ショウゴは、その人を目で追っていた。
 広い階段教室を颯爽と動き回るその人から目が離せなかった。
 問題に行き詰まると、その人を見た。
 不思議と心が落ち着いて、次の問題を解くことができた。

 お昼に自販機の前で見かけた時は、心が踊った。
 自分の飲みものは、とっくに買っていた。
 けれど、どうにかして話してみたかった。

 「あっ」

 そんな適当な声しか出せない自分にガッカリする。
 それでも、その人は、ショウゴに応えてくれた。
 お気に入りのアップルティーを勧めると喜んでくれた。

 「午後も頑張ってください」

 そんな言葉をかけてくれた。
 この大学に入って、もう一回、この人に会いたい。
 そう思った。
 マコトが落ちて、ショウゴが受かったのは、あの人のおかげかも。
 そう思えるくらいに、試験を頑張ることができた。

 (それなのに、すっかり忘れちゃってたなぁ……)
 (マコトのことがあって落ち込んで、ナオキに会えて浮かれて)

 今年は、ショウゴにとって、それくらい目まぐるしい日々が続いた。

 (会ってみたい気もする……?)
 (すっごく目を引く人だったなぁ)
 (いやいや、ボクにはナオキがいるし!)
 (浮気じゃないよ、ごめん、ナオキ)

 「ショウゴ~、そろそろお昼にしない?」

 ショウゴが好きなナオキの低めの声が聞こえる。

 「うん! 今、行くよ!」

 自分を呼ぶ愛しい声に、ショウゴの頭はナオキでいっぱいになる。
 さっきまで考えていた試験監督のことは、頭から追い出される。

 ダイニングテーブルの上には、ナオキお手製のドリアとサラダが並ぶ。

 「ありがと、おいしそう!」
 「お礼は、チューでいいよ」
 「ぶっ! ナオキ、酔ってる?」
 「うん、ショウゴには、ずっと酔い続けてる」
 「はは、嬉しい。ボクも」

 椅子に座る前に、ナオキと唇を合わせる。
 かたちのいい唇からは、オリーブオイルの味がする。

 「ナオキ、ドレッシングの味するよ」
 「あ、さっき、味見したから」
 「ふふ。おいしい」
 「良かった。あとで、ショウゴの味見もさせて」
 「味見だけでいいの?」
 「お、言うねぇ! じゃあ、ガッツリ食べるんで覚悟してください」
 「は~い、楽しみにしてます!」

 (ナオキを手放さないためなら、なんでもしよう!)
 (ホントは、この大事な人を閉じ込めておきたいけど……)
 (でも、普通のボクには、そんなのムリだから)
 (ずっと、ずっと、好きでいる。心の中に閉じ込める)
 (覚悟するのは、ナオキだよ?)

 大好きなナオキの顔に見とれながらも、ショウゴは心の中で決心する。

 「いただきます!」
 「はい、どうぞ」

 その決意に満ちた顔を、ナオキが同じ想いで見つめていること。
 それをショウゴは、知らない。
 きっと、これからも知ることはない。
 けれど、想いあっているふたりに訪れるのは、幸せな結末。
 そうに違いない。

                                 (終)
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