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第2章 ラントを巡る旅
(7)ブラオ=ラントへ
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次の朝。
目立たずに宿を出ようとしたティムと王子に声がかけられる。
「ティムだろう?」
ティムは、とっさに王子をかばって構える。
「オレだ。父さんだ」
現れたのは、近衛隊長であるティムの父だった。
「父さん⁉︎ なぜ、ここが?」
「昨日、王様のお供で闘技場の特別試合を観に行ってな。
剣闘士テオが、すぐにおまえだと分かった」
「本当に? それは、なぜ?」
「当たり前だろう? 剣も足運びも、教えたのはオレだ」
「確かにそうだった」
「人とは思えない速さだったが、動きのクセは同じだ」
「そうだったか、さすが父さんだ」
「王子は、お助けできたのだろうな?」
「ええ、もちろん。こちらに」
「近衛隊長、ティムを助けに寄越してくれて感謝する」
「おお、王子。よくぞ、ご無事で」
「うん。ティムのおかげだ」
「お役に立てて、光栄です。少しの間、お話することはできますか?」
「うん。構わないが。どうだ、ティム?」
「ええ。安全な場所であれば」
「オレの行きつけの店の二階を借りよう」
ティムの父に連れられて、ふたりは街の広場の隅にある酒場に来ていた。
「朝飯は、まだだろう? ここのミルクスープは、うまいぞ」
色とりどりの野菜と羊肉が白いスープに浮かぶ。
焼きたてのパンにたっぷりのバター。
赤ワインを少し。
三人は、そのおいしさに夢中でほおばる。
「腹も落ち着いたところで、父さんに聞きたいことがあるんだけど」
「当たり前だろうな」
「父さんは、今回の事態を予測していたのか?」
「予測とまでは、いかない。ただ、グリュンの姫を追放すると聞いてな。
おかしなことが起きている気がしたんだ」
「なぜ?」
「グリュンの姫との婚約は、王都にとって利があるから結ばれた。
一方的に、破棄などすれば、全連邦の反感は必至だ」
「そうだよな。王子も納得していたはずだし」
「連邦の国々は、順に王都との姻戚関係を結ぶことで強固な関係を保つ。
一方的に破棄などすれば、姻戚関係を結んでもムダだと思われてしまう」
「父さんは、魅了にかかってはいないようだが?」
「うん。オレは、不思議なことに平気だったようだ」
「今までの調べでは、同性を愛する者には魔女の魅了が効かないようなんだ」
「なにっ? そういうことか……」
「なにか思い当たることでも?」
「城の中にも魅了が効いていない者は、意外にいたんでな。
特に、近衛兵には、ほとんど効いていない」
「近衛兵は、同性を愛する者が多かったのか?」
「そもそも、王様を敬愛する者が志願する部署だからな」
「ああ、若い時は、その麗しさで性別を問わず愛されたと聞いていたが。
大げさな話ではなかったのか……」
「その通りだ。あの麗しさは、連邦中から愛された。
隣国が攻めてこなくなったのも、それが理由とする説もある」
「それは、すごいな。でも、王様は王妃様一筋なんだろう?」
「うん。ブラオへの旅行中に、見初められてな。
王子様も、あの頃の王様に似てこられた」
「そうか? 自分では、母のほうに似ていると思うが」
「王妃様にも、似ていらっしゃる。どちらも麗しいおかただ」
「それで……、王様と王妃様のご様子は?」
「それがな。おまえたちを逃したあとは、いつも通りなんだよ」
「やはり、そうか」
「うん。意識がぼんやりされるのは、王子様と婚約破棄の話の時だけ。
それ以外は、まったく問題がない」
「王子は療養中というのは、誰が言い出したんだ?」
「分からんのだ、それが。いつの間にか、そういうことに。
王様と王妃様は、毎日、王子様を見舞っていらっしゃる」
「はぁ? 誰か影武者でもいるのか?」
「いや。無人のベッドに話かけられている。その光景は、ちょっとな。
しかし、魅了されている者たちは、同じようになっている」
「同じようにとは?」
「誰もいないベッドに食事を運び、お体を清め、衣類を取り替えて」
「怖いな」
「ああ。だが、それ以外は、特段変わったことはない」
「魅了されていない者は、どうしてるんだ?」
「なにも言わずに、魅了されている者に合わせている。
そうするようにと、オレが指示を出しておいたんだ」
「さすが、父さん。賢明な判断だ。そのままで頼む」
「まかせておけ」
「ところで、ブラオのことで何か聞いていないか?」
「ブラオというと、カール陛下のことか?」
「うん。少し気になる話を聞いたんだが」
「体調を崩されて、休みがちだとはうかがっている。
王様からも見舞いを出したはずだ」
「それだけ?」
「うん。公務が滞っているわけでもなし、疲れだろうと聞いている」
「そうか」
「おまえたちが、なにをやっているかは聞かないほうがいいか?」
「いや、大丈夫。今は、連邦中を旅しながら、各国の王と会っている。
今のところ、魅了魔法がかけられたのは王都だけだ。
この大規模魔法がかけられるのは、ゴルトの伝説の魔女らしい。
だから、我々はそれ以外の国と協力して魔女包囲網を作るつもりだ」
「王都ができることは?」
「今のところはない。
けれど、最終的には王都で全王会議が開かれるはずだ。
その時には、王都の協力が不可欠になる」
「分かった。その時には、知らせを。最大限、尽力する」
「助かる。父さん」
「近衛隊長、今しばらく、ティムを借りる」
「王子様。ティムは、あなた様専属になった時から、あなた様のもの。
どうか、ご自由に」
「感謝する」
ティムは、父親とのしばしの別れをハグで惜しみながら、小声で問う。
「で、父さんの相手は誰なんだ?」
「はは。おまえ、知らなかったのか? ヨーゼフだ」
「え? 父さんの幼なじみの?」
「うん。幼い頃からの関係だ」
「そうか。幸せならいい」
「おまえ、王子とはどうなんだ?」
「うまくやっていると思うよ」
「そうか。肝心なところで、愛を逃すんじゃないぞ」
「愛……? この気持ちは、愛なのかな?」
「ははは。よく考えることだ」
ティムと王子は近衛隊長に別れを告げて、目立たないように王都を出た。
王都から出る時に、念のため、王子はカッツェンの姿へ変身した。
衛兵は、外に出る人の顔をのぞき込んで確認しているようだったからだ。
「ああ、ネコか。早く出ろ。王都から、色々持ち出してくれるなよ?」
「あっはっは! そんなこと、言うだけムダだろう」
「そうだな。生まれつきの盗賊根性が、手を動かすだろうしな」
「なんだ? こっちを見ていないで、早く行け。財布はないぞ」
あいかわらず、衛兵のカッツェンへの差別はひどい。
差別されて、真っ当な仕事に就けない者の中には盗賊に堕ちた者もいる。
けれど、そもそも差別されなければ、そうはならなかったはずである。
「ルイ、平気ですか?」
「うん。無知の者たちが、そう思うのは仕方ない。もう慣れた」
「気持ちを切り替えて、ブラオに向かいましょう」
「楽しそうだな、ティム」
「ええ! ブラオは、いつ訪れても素晴らしい国ですから」
「そうだな。わたしも久しぶりに温泉に浸かりたい」
馬に乗ってティムと王子の旅は、再び、始まった。
***
ティムの親父の近衛隊長が、オレたちの前に現れた時は驚いた。
剣やら足の動きやらで、ティムって分かるってすげぇ。
さすが、父親にして師匠ってとこか。
オッサンおすすめの酒場メシ。
これは、あれだな。
ホワイトシチュー、羊肉バージョン!
羊肉って、あんまり食わないけど、これはうまかった。
パンと赤ワインとの相性も良くて、ペロリだった。
どうやら、オッサンは、すべてを予測してたわけじゃないらしい。
魅了魔法がかけられた、あの日。
オッサンは、すぐにオレを王子の元に行かせたし。
アイテムバッグも用意してあったから、何か知ってたのかと思ったが。
長年、王都の中枢に仕えていた人の勘みたいな? ものっぽい。
王様と王妃様の様子は、オレが闘技場で予想した通り。
王子のことだけが、すっぽりとおかしな具合に改ざんされている。
ほかの人たちに害はないようだから、今のところは静観だな。
で、オッサンの相手は、ヨーゼフ!
って、誰だよ?
ティムの記憶を探ると、王様の執事をしてる人。
ティムのことも、小さな頃からかわいがっていたようだ。
ん? じゃあ、ティムの母は?
記憶を探っても、母の記憶はない。
亡くなってるのか? それとも、養子?
ティムは、父とふたりで暮らすことに疑問がなかったらしい。
まぁ、物心ついた時から、そうなら、そっか?
あいかわらず、王都の衛兵はカッツェンへのからかいをやめねぇ!
イラッとはするものの、オレは、ほっとくことにする。
今、騒ぎは起こせないし。
ネコのかわいさを知らんやつらには、言わせておくに限る。
あの体を知ったら、差別なんてできやしねぇだろ!
思い出しただけで、オレの喉はゴクリと鳴った。
*****
次の目的地、ブラオ=ラントまでは5日ほどの距離。
王都で時間を使ってしまったが、誤差の範囲だろうと自分を納得させる。
「ティム、近衛隊長に会えて嬉しかっただろう?」
「ええ、まぁ。どちらかというと、幸せで嬉しかったですね」
「どういう意味だ?」
「わたしは、今、四六時中、ルイといられて幸せなので。
父さんが、ひとりなら申し訳ない気持ちになるところでしたが」
「ふふふ。こんな旅をしてるというのにか?」
「はい。ルイさえいてくだされば、そこがわたしの居場所です」
「ネコなのにか?」
「なにをおっしゃいます。カッツェンの素晴らしさは、もう!
我が身を持って、実感していますから。
今だって、サラサラふわふわで気持ちいいというのに!」
「ティムは、カッツェンのわたしが好きだなぁ」
「カッツェンのルイも! 好きです。どんな姿だって、ルイです」
「ふっ。そう言われると、そんな気がしてくるよ」
そんなじゃれ合いを続けながら、道なき道を進む。
やはり、クマにオオカミ、イノシシは、よく現れる。
ティムも王子も慣れたもので、手際よく倒しては毛皮や肉をはぎ取る。
だが、それと遭遇した時は、さすがのふたりも驚いた。
森の中に、ヌゥッと立っていたのは、二本足で立つ牛の姿。
「あれは、なんだ?」
「おそらく、ミノタウロスでしょう」
「ミノタウロス? またしても、伝説の生きものではないか」
「そうですね」
「なぜ、次から次へと」
「魔女の仕業なんでしょうか?」
「う~ん、なんのために?」
「分かりません。ともかく、このまま進ませてはもらえないようです」
「うん。まずは、弓か?」
「はい。あとは、その場に合わせてお願いします」
ティムと王子は、馬から降りて、近くに隠す。
それから、隠密姿勢から弓で狙いをつける。
同時に矢を放つと、その上半身に命中する。
が、まったく効いていないようだ。
まっすぐ、ふたりに向かって突進してくるミノタウロス。
その手には、大きな斧らしきものが握られている。
あっという間に、ティムの目の前までミノタウロスが迫る。
大きく斧を振り回すと、近くの木々が草のように簡単に倒される。
「ルイ! 斧には、絶対に当たらないように!」
「分かっている」
木々の間を攻撃をかわしつつ、進む。
剣も分厚い皮ふに弾かれ、斬りつけることがむずかしい。
と、突然、ビリビリッと音がしたかと思うとミノタウロスが止まる。
王子が、ミノタウロスの斧を狙って、雷魔法を使ったようだ。
鉄でできた斧には、雷がよく入る。
雷で麻痺したミノタウロスが固まっている間に、炎が飛んでくる。
炎はミノタウロスの毛皮を猛然と焼き尽くす。
バタバタと暴れていたミノタウロスだったが、やがてバタリと倒れ込んだ。
「ルイ! いつの間に、あんな強い火炎魔法を?」
「王都の魔法書店は、品揃えが豊富だったぞ。
しかも、強い魔法書は売れないらしくて、安売りをしていた」
「なんと! ルイには、驚かされてばかりですね」
「ティムが驚いた顔を見るのは、なんだか嬉しいな」
「強くて、愛らしくて。わたしが魅了されるのは、あなただけです」
「ふふふ。ティムは、褒めすぎだ」
ティムが魔法を使えないからだろうか。
王子は、どんどんと新しい魔法を手に入れては助けてくれる。
ティムは、嬉しい気持ち半分ともう半分は複雑でもあった。
王子が強くなっても、自分が側にいる意味があるといいが。
そう思ってしまうティムであった。
***
出た! ミノタウロス!
なんで森の中に、牛のモンスターがいるんだろうなぁ?
ゲーム内では、古代の遺跡の守護者として登場してたっけ。
それが、ふらりと森にいるじゃん!
こいつ、かてぇんだよな~。
伝説のモンスター系の敵って、近接武器が効きづらい。
魔法が有利って設定みたいなんだよな。
なのに、ティムは攻撃魔法が使えない。
もう力技で、バシバシいくしかねぇかなっと思ったらさ。
王子が、魔法であっという間に倒しちゃったよ!
さすが、このゲームの元々の主人公ってこと?
いや、でもさ。
王子がどんどん成長しちゃったら、オレって要る?
*****
ブラオが近づくにつれて、森の中にも古代の遺跡群を目にする。
この遺跡は、連邦がここにできる前に住んでいた者たちの名残りらしい。
忽然と消えた古代エルフの王国。
その国は、現在の連邦よりも魔法力も技術力も上回っていたと聞く。
その古代エルフが遺した遺跡は、連邦のあちこちに散らばる。
遺跡の中には、今も動く罠が張り巡らされており、他者の侵入を防ぐ。
研究者たちは、その技術や遺された宝を探すために発掘に挑んだが。
罠の仕組みを解明する前に、命を落とすハメになってしまう。
結局、遺跡群は、そのほとんどが放置されたままになっている。
ブラオには、遺跡の数がほかの国よりも極端に多い。
そのため、古代エルフの王国の王都があったのではないかと言われている。
そんな遺跡の石の入り口を、いつも通り、素通りしようとした時だった。
「やめてくれっ。誰か、誰か、いないのかっ?」
大声で叫びながら、ひとりの男が遺跡の中から転がるように飛び出してきた。
「どうした? 大丈夫か?」
「おお。旅のかたか? 助かった。
わたしは、ブラオで古代エルフの研究をしている者だ」
「そうか。なにがあった? 遺跡は危険じゃないのか?」
「そうだ。そうだが、危険を恐れていては研究ができない。
今日は、安全だと言われていた遺跡の研究に来たのだが……」
「ひとりでか?」
「いや、数人の護衛を頼んでな。けれど、誰も……」
「そうか……。それは、諦めるしかあるまい」
「そういうわけには、いかない。中には、弟子とわたしの研究手記が」
「なに? その弟子とやらは、生きているのか?」
「最後に見た時には、当然、生きていたが」
「ルイ、どうします?」
「事情を知ってしまって、放置することはできないだろう?」
「確かにそうですが」
「幸い、今はふたりとも暗視が使える。どうにかなるだろう」
予定していなかった遺跡探索に向かうことになったティムと王子。
困難は、ふたりの前に、わざわざ現れるかのようだった。
***
きました! 遺跡探索!
古代エルフの遺跡ってさ、お宝ザックザクなんだよな。
プレイヤー的には、おいしい。
だけど、まぢで罠だらけ。
一周目では、なんとなく入った遺跡で、あっさり罠にかかって。
はい、もちろん死亡です。
問題は、暗さ。
まぢで真っ暗なんだよ。
松明つけると、敵がワラワラ寄ってくるし。
が、今回はすでに暗視能力ゲット済み。
意外に簡単にいけちゃうんじゃね?
目立たずに宿を出ようとしたティムと王子に声がかけられる。
「ティムだろう?」
ティムは、とっさに王子をかばって構える。
「オレだ。父さんだ」
現れたのは、近衛隊長であるティムの父だった。
「父さん⁉︎ なぜ、ここが?」
「昨日、王様のお供で闘技場の特別試合を観に行ってな。
剣闘士テオが、すぐにおまえだと分かった」
「本当に? それは、なぜ?」
「当たり前だろう? 剣も足運びも、教えたのはオレだ」
「確かにそうだった」
「人とは思えない速さだったが、動きのクセは同じだ」
「そうだったか、さすが父さんだ」
「王子は、お助けできたのだろうな?」
「ええ、もちろん。こちらに」
「近衛隊長、ティムを助けに寄越してくれて感謝する」
「おお、王子。よくぞ、ご無事で」
「うん。ティムのおかげだ」
「お役に立てて、光栄です。少しの間、お話することはできますか?」
「うん。構わないが。どうだ、ティム?」
「ええ。安全な場所であれば」
「オレの行きつけの店の二階を借りよう」
ティムの父に連れられて、ふたりは街の広場の隅にある酒場に来ていた。
「朝飯は、まだだろう? ここのミルクスープは、うまいぞ」
色とりどりの野菜と羊肉が白いスープに浮かぶ。
焼きたてのパンにたっぷりのバター。
赤ワインを少し。
三人は、そのおいしさに夢中でほおばる。
「腹も落ち着いたところで、父さんに聞きたいことがあるんだけど」
「当たり前だろうな」
「父さんは、今回の事態を予測していたのか?」
「予測とまでは、いかない。ただ、グリュンの姫を追放すると聞いてな。
おかしなことが起きている気がしたんだ」
「なぜ?」
「グリュンの姫との婚約は、王都にとって利があるから結ばれた。
一方的に、破棄などすれば、全連邦の反感は必至だ」
「そうだよな。王子も納得していたはずだし」
「連邦の国々は、順に王都との姻戚関係を結ぶことで強固な関係を保つ。
一方的に破棄などすれば、姻戚関係を結んでもムダだと思われてしまう」
「父さんは、魅了にかかってはいないようだが?」
「うん。オレは、不思議なことに平気だったようだ」
「今までの調べでは、同性を愛する者には魔女の魅了が効かないようなんだ」
「なにっ? そういうことか……」
「なにか思い当たることでも?」
「城の中にも魅了が効いていない者は、意外にいたんでな。
特に、近衛兵には、ほとんど効いていない」
「近衛兵は、同性を愛する者が多かったのか?」
「そもそも、王様を敬愛する者が志願する部署だからな」
「ああ、若い時は、その麗しさで性別を問わず愛されたと聞いていたが。
大げさな話ではなかったのか……」
「その通りだ。あの麗しさは、連邦中から愛された。
隣国が攻めてこなくなったのも、それが理由とする説もある」
「それは、すごいな。でも、王様は王妃様一筋なんだろう?」
「うん。ブラオへの旅行中に、見初められてな。
王子様も、あの頃の王様に似てこられた」
「そうか? 自分では、母のほうに似ていると思うが」
「王妃様にも、似ていらっしゃる。どちらも麗しいおかただ」
「それで……、王様と王妃様のご様子は?」
「それがな。おまえたちを逃したあとは、いつも通りなんだよ」
「やはり、そうか」
「うん。意識がぼんやりされるのは、王子様と婚約破棄の話の時だけ。
それ以外は、まったく問題がない」
「王子は療養中というのは、誰が言い出したんだ?」
「分からんのだ、それが。いつの間にか、そういうことに。
王様と王妃様は、毎日、王子様を見舞っていらっしゃる」
「はぁ? 誰か影武者でもいるのか?」
「いや。無人のベッドに話かけられている。その光景は、ちょっとな。
しかし、魅了されている者たちは、同じようになっている」
「同じようにとは?」
「誰もいないベッドに食事を運び、お体を清め、衣類を取り替えて」
「怖いな」
「ああ。だが、それ以外は、特段変わったことはない」
「魅了されていない者は、どうしてるんだ?」
「なにも言わずに、魅了されている者に合わせている。
そうするようにと、オレが指示を出しておいたんだ」
「さすが、父さん。賢明な判断だ。そのままで頼む」
「まかせておけ」
「ところで、ブラオのことで何か聞いていないか?」
「ブラオというと、カール陛下のことか?」
「うん。少し気になる話を聞いたんだが」
「体調を崩されて、休みがちだとはうかがっている。
王様からも見舞いを出したはずだ」
「それだけ?」
「うん。公務が滞っているわけでもなし、疲れだろうと聞いている」
「そうか」
「おまえたちが、なにをやっているかは聞かないほうがいいか?」
「いや、大丈夫。今は、連邦中を旅しながら、各国の王と会っている。
今のところ、魅了魔法がかけられたのは王都だけだ。
この大規模魔法がかけられるのは、ゴルトの伝説の魔女らしい。
だから、我々はそれ以外の国と協力して魔女包囲網を作るつもりだ」
「王都ができることは?」
「今のところはない。
けれど、最終的には王都で全王会議が開かれるはずだ。
その時には、王都の協力が不可欠になる」
「分かった。その時には、知らせを。最大限、尽力する」
「助かる。父さん」
「近衛隊長、今しばらく、ティムを借りる」
「王子様。ティムは、あなた様専属になった時から、あなた様のもの。
どうか、ご自由に」
「感謝する」
ティムは、父親とのしばしの別れをハグで惜しみながら、小声で問う。
「で、父さんの相手は誰なんだ?」
「はは。おまえ、知らなかったのか? ヨーゼフだ」
「え? 父さんの幼なじみの?」
「うん。幼い頃からの関係だ」
「そうか。幸せならいい」
「おまえ、王子とはどうなんだ?」
「うまくやっていると思うよ」
「そうか。肝心なところで、愛を逃すんじゃないぞ」
「愛……? この気持ちは、愛なのかな?」
「ははは。よく考えることだ」
ティムと王子は近衛隊長に別れを告げて、目立たないように王都を出た。
王都から出る時に、念のため、王子はカッツェンの姿へ変身した。
衛兵は、外に出る人の顔をのぞき込んで確認しているようだったからだ。
「ああ、ネコか。早く出ろ。王都から、色々持ち出してくれるなよ?」
「あっはっは! そんなこと、言うだけムダだろう」
「そうだな。生まれつきの盗賊根性が、手を動かすだろうしな」
「なんだ? こっちを見ていないで、早く行け。財布はないぞ」
あいかわらず、衛兵のカッツェンへの差別はひどい。
差別されて、真っ当な仕事に就けない者の中には盗賊に堕ちた者もいる。
けれど、そもそも差別されなければ、そうはならなかったはずである。
「ルイ、平気ですか?」
「うん。無知の者たちが、そう思うのは仕方ない。もう慣れた」
「気持ちを切り替えて、ブラオに向かいましょう」
「楽しそうだな、ティム」
「ええ! ブラオは、いつ訪れても素晴らしい国ですから」
「そうだな。わたしも久しぶりに温泉に浸かりたい」
馬に乗ってティムと王子の旅は、再び、始まった。
***
ティムの親父の近衛隊長が、オレたちの前に現れた時は驚いた。
剣やら足の動きやらで、ティムって分かるってすげぇ。
さすが、父親にして師匠ってとこか。
オッサンおすすめの酒場メシ。
これは、あれだな。
ホワイトシチュー、羊肉バージョン!
羊肉って、あんまり食わないけど、これはうまかった。
パンと赤ワインとの相性も良くて、ペロリだった。
どうやら、オッサンは、すべてを予測してたわけじゃないらしい。
魅了魔法がかけられた、あの日。
オッサンは、すぐにオレを王子の元に行かせたし。
アイテムバッグも用意してあったから、何か知ってたのかと思ったが。
長年、王都の中枢に仕えていた人の勘みたいな? ものっぽい。
王様と王妃様の様子は、オレが闘技場で予想した通り。
王子のことだけが、すっぽりとおかしな具合に改ざんされている。
ほかの人たちに害はないようだから、今のところは静観だな。
で、オッサンの相手は、ヨーゼフ!
って、誰だよ?
ティムの記憶を探ると、王様の執事をしてる人。
ティムのことも、小さな頃からかわいがっていたようだ。
ん? じゃあ、ティムの母は?
記憶を探っても、母の記憶はない。
亡くなってるのか? それとも、養子?
ティムは、父とふたりで暮らすことに疑問がなかったらしい。
まぁ、物心ついた時から、そうなら、そっか?
あいかわらず、王都の衛兵はカッツェンへのからかいをやめねぇ!
イラッとはするものの、オレは、ほっとくことにする。
今、騒ぎは起こせないし。
ネコのかわいさを知らんやつらには、言わせておくに限る。
あの体を知ったら、差別なんてできやしねぇだろ!
思い出しただけで、オレの喉はゴクリと鳴った。
*****
次の目的地、ブラオ=ラントまでは5日ほどの距離。
王都で時間を使ってしまったが、誤差の範囲だろうと自分を納得させる。
「ティム、近衛隊長に会えて嬉しかっただろう?」
「ええ、まぁ。どちらかというと、幸せで嬉しかったですね」
「どういう意味だ?」
「わたしは、今、四六時中、ルイといられて幸せなので。
父さんが、ひとりなら申し訳ない気持ちになるところでしたが」
「ふふふ。こんな旅をしてるというのにか?」
「はい。ルイさえいてくだされば、そこがわたしの居場所です」
「ネコなのにか?」
「なにをおっしゃいます。カッツェンの素晴らしさは、もう!
我が身を持って、実感していますから。
今だって、サラサラふわふわで気持ちいいというのに!」
「ティムは、カッツェンのわたしが好きだなぁ」
「カッツェンのルイも! 好きです。どんな姿だって、ルイです」
「ふっ。そう言われると、そんな気がしてくるよ」
そんなじゃれ合いを続けながら、道なき道を進む。
やはり、クマにオオカミ、イノシシは、よく現れる。
ティムも王子も慣れたもので、手際よく倒しては毛皮や肉をはぎ取る。
だが、それと遭遇した時は、さすがのふたりも驚いた。
森の中に、ヌゥッと立っていたのは、二本足で立つ牛の姿。
「あれは、なんだ?」
「おそらく、ミノタウロスでしょう」
「ミノタウロス? またしても、伝説の生きものではないか」
「そうですね」
「なぜ、次から次へと」
「魔女の仕業なんでしょうか?」
「う~ん、なんのために?」
「分かりません。ともかく、このまま進ませてはもらえないようです」
「うん。まずは、弓か?」
「はい。あとは、その場に合わせてお願いします」
ティムと王子は、馬から降りて、近くに隠す。
それから、隠密姿勢から弓で狙いをつける。
同時に矢を放つと、その上半身に命中する。
が、まったく効いていないようだ。
まっすぐ、ふたりに向かって突進してくるミノタウロス。
その手には、大きな斧らしきものが握られている。
あっという間に、ティムの目の前までミノタウロスが迫る。
大きく斧を振り回すと、近くの木々が草のように簡単に倒される。
「ルイ! 斧には、絶対に当たらないように!」
「分かっている」
木々の間を攻撃をかわしつつ、進む。
剣も分厚い皮ふに弾かれ、斬りつけることがむずかしい。
と、突然、ビリビリッと音がしたかと思うとミノタウロスが止まる。
王子が、ミノタウロスの斧を狙って、雷魔法を使ったようだ。
鉄でできた斧には、雷がよく入る。
雷で麻痺したミノタウロスが固まっている間に、炎が飛んでくる。
炎はミノタウロスの毛皮を猛然と焼き尽くす。
バタバタと暴れていたミノタウロスだったが、やがてバタリと倒れ込んだ。
「ルイ! いつの間に、あんな強い火炎魔法を?」
「王都の魔法書店は、品揃えが豊富だったぞ。
しかも、強い魔法書は売れないらしくて、安売りをしていた」
「なんと! ルイには、驚かされてばかりですね」
「ティムが驚いた顔を見るのは、なんだか嬉しいな」
「強くて、愛らしくて。わたしが魅了されるのは、あなただけです」
「ふふふ。ティムは、褒めすぎだ」
ティムが魔法を使えないからだろうか。
王子は、どんどんと新しい魔法を手に入れては助けてくれる。
ティムは、嬉しい気持ち半分ともう半分は複雑でもあった。
王子が強くなっても、自分が側にいる意味があるといいが。
そう思ってしまうティムであった。
***
出た! ミノタウロス!
なんで森の中に、牛のモンスターがいるんだろうなぁ?
ゲーム内では、古代の遺跡の守護者として登場してたっけ。
それが、ふらりと森にいるじゃん!
こいつ、かてぇんだよな~。
伝説のモンスター系の敵って、近接武器が効きづらい。
魔法が有利って設定みたいなんだよな。
なのに、ティムは攻撃魔法が使えない。
もう力技で、バシバシいくしかねぇかなっと思ったらさ。
王子が、魔法であっという間に倒しちゃったよ!
さすが、このゲームの元々の主人公ってこと?
いや、でもさ。
王子がどんどん成長しちゃったら、オレって要る?
*****
ブラオが近づくにつれて、森の中にも古代の遺跡群を目にする。
この遺跡は、連邦がここにできる前に住んでいた者たちの名残りらしい。
忽然と消えた古代エルフの王国。
その国は、現在の連邦よりも魔法力も技術力も上回っていたと聞く。
その古代エルフが遺した遺跡は、連邦のあちこちに散らばる。
遺跡の中には、今も動く罠が張り巡らされており、他者の侵入を防ぐ。
研究者たちは、その技術や遺された宝を探すために発掘に挑んだが。
罠の仕組みを解明する前に、命を落とすハメになってしまう。
結局、遺跡群は、そのほとんどが放置されたままになっている。
ブラオには、遺跡の数がほかの国よりも極端に多い。
そのため、古代エルフの王国の王都があったのではないかと言われている。
そんな遺跡の石の入り口を、いつも通り、素通りしようとした時だった。
「やめてくれっ。誰か、誰か、いないのかっ?」
大声で叫びながら、ひとりの男が遺跡の中から転がるように飛び出してきた。
「どうした? 大丈夫か?」
「おお。旅のかたか? 助かった。
わたしは、ブラオで古代エルフの研究をしている者だ」
「そうか。なにがあった? 遺跡は危険じゃないのか?」
「そうだ。そうだが、危険を恐れていては研究ができない。
今日は、安全だと言われていた遺跡の研究に来たのだが……」
「ひとりでか?」
「いや、数人の護衛を頼んでな。けれど、誰も……」
「そうか……。それは、諦めるしかあるまい」
「そういうわけには、いかない。中には、弟子とわたしの研究手記が」
「なに? その弟子とやらは、生きているのか?」
「最後に見た時には、当然、生きていたが」
「ルイ、どうします?」
「事情を知ってしまって、放置することはできないだろう?」
「確かにそうですが」
「幸い、今はふたりとも暗視が使える。どうにかなるだろう」
予定していなかった遺跡探索に向かうことになったティムと王子。
困難は、ふたりの前に、わざわざ現れるかのようだった。
***
きました! 遺跡探索!
古代エルフの遺跡ってさ、お宝ザックザクなんだよな。
プレイヤー的には、おいしい。
だけど、まぢで罠だらけ。
一周目では、なんとなく入った遺跡で、あっさり罠にかかって。
はい、もちろん死亡です。
問題は、暗さ。
まぢで真っ暗なんだよ。
松明つけると、敵がワラワラ寄ってくるし。
が、今回はすでに暗視能力ゲット済み。
意外に簡単にいけちゃうんじゃね?
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