魅了なんて、オレには効かない

クリヤ

文字の大きさ
24 / 41
第2章 ラントを巡る旅

(11)農業大国の秘密

しおりを挟む
 翌朝、朝食を食べながら、カッツェンの家族からスプリガンの話を聞いた。
 グリュンでは、城壁外に農地を持っているのは、ほとんどがカッツェン。
 さらに、そのほとんどがスプリガンを使役しているという。
 街の中で暮らす人たちは、その事実を知らないかも知れないらしい。

 「そういえば、最初にグリュンに向かおうとして立ち寄った農場。
  あそこでも、スプリガンが働いていましたね」
 「うん。魔法で人に見せかけるためかとも思ったが……」
 「どうやら、グリュンでは魔物を使役する方法を早くから見つけていたと」
 「そういうことだろう」
 「通りで、国民の数に比べて生産量が多いはずです」
 「グリュンには、カッツェンが多いだろう?
  だから、グリュンは奴隷制をやめていないんじゃないかと。
  そういうウワサがあってな。全王会議で視察団を派遣したことがあった」
 「はい。そういえば、ありましたね」
 「結局、グリュンに住むカッツェンは奴隷どころか豊かに暮らしていた。
  家を持ち、畑を持ち、子どももたくさんいて……」
 「スプリガンを使役できていたからなんですね」
 「その時は、スプリガンの話は出なかったがな」
 「うまく隠していたんでしょう。それに……」
 「それに?」
 「この技術は、街では使えませんし」
 「なぜだ?」
 「スプリガンは、植物の精霊ですから土の上でないと死んでしまいます。
  それに、使役するための素材が禁止薬物となると……」
 「ははは。大っぴらにはできないか」
 「ええ。必ず、薬物に手を出す輩が現れますからね」
 「そう思うと、グリュンはすごいな。薬物を上手に使えている」
 「グリュンというより、カッツェンの薬物耐性がすごいのでしょう」
 「そうか……」
 「これは想像ですが、ルイの祖先のカッツェンもグリュンのかたでは?」
 「なぜ、そう思う?」
 「グリュンとブラオは、隣りあった国ですし。姻戚も多い。
  グリュンの王族の中に、カッツェンの血を持つかたがいるのかも」
 「それは、ますますグリュンに行くのが楽しみになってきた」
 
 馬に揺られながら、ティムと王子はグリュンへの道を進む。
 不思議なことに、金色のローブの暗殺者も王都兵もまったく見かけない。
 獣にさえ気をつければ、久しぶりの、のんびりとした旅路であった。
 街道沿いには、農家兼宿屋をやっている家が多い。
 泊まりにも食事にも、事欠かない。
 ふたりは、まるで普通の旅行をしているような気分になっていた。

 「しかし、どの宿も堂々と自家製アルコルを出していましたね」
 「うん。あれは知らなければ、ハーブ酒にしか思えないしな」
 「人には、薄めたものを出すようですから、依存する量でもないと」
 「わたしは、毎日、気持ちよくなりすぎるけれど」
 「ふふふ。そうなったルイは、かわいくて好きですよ?」
 「そうか? あきれないか? 毎夜、痴態をさらして」
 「いいえ。むしろ、王都でも毎晩、飲んでいただきたいくらいです」
 「ふふふ。ティムは、わたしに甘すぎる」
 「いえ、いえ。まだまだですよ」

 やがて、グリュンの城壁が見えてきた。
 赤土色のレンガが積まれた城壁。
 新緑のような鮮やかな緑色の門。
 金色で縁取られた緑色の旗の中央には、金色で描かれた大きな木の紋章。
 低めの城壁は、この街が平和であることを示しているのだろう。
 街の中心には、城と同じくらいの大きさの神木が立っている。

 城門の近くまで行くと、ブラオと同じように行列ができている。

 「おかしいですね。観光地でもないのに」
 「うん。どうやら、カッツェンとそれ以外を分けているようだ」
 「どうしましょう?」
 「ふふふ、当然、こうする」

 王子は、ティムと馬の陰に動くと、ピアスを外した。
 いつものように青色のモヤとともに王子の姿は見えなくなる。
 そして、再び、カッツェンになった王子が現れる。
 ネコのように伸びをすると、ティムを見てニヤッと笑う。

 「あぁ! この姿の開放感は、なんだろうな!」
 「わたしには分かりませんが、ルイがイキイキされているのは分かります」
 「窮屈な服を脱ぎ捨てたような気分だ」
 「本来のルイは、そちらなのかも知れませんね」

 城門では、王子が先に立つ。
 カッツェンが連れている人も、簡単に通してくれる。
 奴隷どころか、この国ではカッツェンのほうが好待遇のようだ。

 「さてと、どうやって城への約束を取りつけるかだが……」
 「魔術師ギルドも戦士ギルドも、この国の支部は小さいようです」
 「あまり、活動もしていないらしい」
 「農業国ですからね」
 「うん。直接、城に向かって、カール兄様の書状を信じてもらえるかどうか」

 ふたりは、城への取り次ぎを悩みながらも街の中心へ向かう。
 まずは、広場に向かうつもりだった。

 『ここから先は、現在、立ち入り禁止となっています!』

 大きな声で、複数の衛兵が道ゆく人々を誘導している。
 広場の半分ほどから先に、衛兵が並んで道をふさいでいる。

 「なにか、あったんですか?」
 「城の一部が崩れたそうです。危険なので、立ち入らないでください」
 「城に用がある時は、どうすれば?」
 「農業ギルドのマイスター経由なら、城への取り次ぎができます」

 どうやら、グリュンで力を持っているのは農業ギルドらしい。

 「農業ギルドというのが、あるのか」
 「そのようですね。その国独自のギルドは、どの国にもありますよ」
 「そうなのか? 知らなかった」
 「はい。ブラオの観光ギルドに、ロートの採掘ギルド。
  それから、ゴルトは貿易ギルドでしたかね」

 (オランジェの影ギルド、のことは言えないけれど……)

 「そうか。その国の特徴が出ていて、おもしろいな」
 「はい。その国で大きな力を持っていたりもするようです」
 「それじゃあ、農業ギルドとやらを訪ねてみるとするか」

 やはり広場に面した一等地に、農業ギルドの建物があった。
 入り口のドアには、国の紋章と同じ木が銀色で描かれている。
 建物に入ると、壁も床も板張りになっていて、木の匂いがする。

 ギルドの受付は、並んでいる人で、ごった返していた。

 「どうします?」
 「うん、ここは並ぶしかないだろう」
 「そうですね」

 しばらく並んでいると、大声で怒鳴る声が聞こえてくる。
 受付のほうに目をやると、ひとりの男が受付のカッツェンにからんでいる。

 「おい、ネコ! オレをバカにしてんのか? ネコのくせに!」
 「いえ、今は、ギルドへの新規登録は受け付けていないと申し上げて……」
 「うるせぇ! わざわざ、こんな、ど田舎まできてやったんだ。
  今さら、できねぇじゃ困るんだよっ!」
 「すみません。しばらく経てば、登録が始まりますので」
 「すみませんじゃ、すまねぇって言ってんだろうが!」
 「ですが」
 「ネコじゃらちがあかねぇ! 人を呼べよ!」

 どんなところにも、無理を通そうとする輩はいる。
 ティムは、その声が振りまく悪意にガマンがならなくなる。
 ズカズカと男の横に大股で向かうと、男の肩をぐいっとつかむ。

 「いい大人が、差別発言をまき散らしてんじゃねぇよ」

 ティムの怒りを込めた低い声に、その男はビクッと体を震わせる。

 「い、嫌だなぁ。そんな意味じゃねぇんですよ。
  あんたも人なら分かるでしょ。ネコは、ほら、手癖が悪くて。
  頭も悪りぃ種族ですから、こっちがちゃんと言ってやらねぇと」
 「おまえこそ、これ以上、その頭の悪い言葉を続けてみろ。
  オレの手がちょいと滑って、おまえの肩を砕いてしまうかも知れねぇな」
 「ひっ! あ、あの。オレは、またあとで」

 男は、ティムの怒りに恐れをなして、さっさと逃げ出していった。

 「あの、ありがとうございました」
 「いや、こちらこそ、勝手に口を出してすまない。
  わたしは、カッツェンが悪く言われるのがガマンできなくて」
 「お連れ様は、キレイなかたですもんねぇ。恋人でしょう?」
 「あ、あぁ、いや。そんな」
 「恥ずかしがらなくても。ともかく、助かりました」
 「いや。みんながみんな、カッツェンを差別するわけでは……」
 「はい。承知しています」
 
 ティムは、受付の若いカッツェンと話してから王子の元に戻る。

 「ティム、あの輩を追い出してきたのか?」
 「はい、すみません。カッツェンの悪口は聞くに耐えなくて」
 「はは。わたしは、慣れているけどな。
  わたしよりもティムのほうが、いつも怒っているみたいだ」
 「ええ。カッツェンの良さを知らないというのに。
  そのくせ、悪意を振りまく輩が、許せないんです」
 「あの受付の子は、かわいいものな」
 「はっ? それは、どういう?」
 「いや? おまえにかばわれるあの子に、少し妬けただけだ」
 「ルイ……。あなた以外に興味はありませんよ?」
 「真顔で、そんなことを言うな。軽い冗談じゃないか」
 「わたしは、傷つきましたよ?」
 「すまない。妬けたのは、本当だから」

 その王子の言葉に、ティムはふっと息を吐くように笑う。
 そして、王子の耳元でささやく。

 「そんなこと言われると、今すぐ抱き潰したくなります」

 さらには、耳に息を吹きかけて、首筋にチュッと音を立てて唇を落とす。
 王子は、耳と首を押さえて、目を潤ませている。
 カッツェンの時の王子は、顔が赤くなる代わりに目が潤む。
 その姿がかわいくて、ティムは唇にも軽くふれてしまうのだった。
 
 そんなことをしているうちに行列は進み、ティムたちの番がやってきた。

 「先ほどは、ありがとうございました。
  本日のご用向きは、なんでしょうか?」

 先ほどの若いカッツェンが、ティムにほほ笑みかける。
 確かに、王子の言う通り、整った顔立ちをしている。

 「マイスターにお会いしたい。直接、お話したいことがある」
 「マイスターですか。今は、緊急の問題に対処中でして……」

 断られそうな雰囲気を察して、ティムはカールからの手紙をチラリと見せる。

 「それは……、ブラオの?」
 「そうだ。我々は、マイスターから王に取り次ぎを頼みたいのだ」
 「わ、分かりました。わたしが、直接、一緒に参ります」

 そう言うと、受付のカッツェンは別の職員に受付業務を託す。
 そして、ティムと王子とともに広場に向かう。

 「いいのか? 我々の素性も知らないのに」
 「ええ。ブラオの王家の封蝋の印璽を見れば十分です」
 「そうか。マイスターは、どちらに?」
 「国の大きな問題に対処するため、広場に呼ばれています。
  このような時に現れたあなたがたは、もしかすると……」
 「なんだ?」
 「信じていただけるかは分かりませんが……」
 「話してみてくれ」
 「はい。この国では、危機が訪れると同時に救世主も現れると言われていて。
  その救世主は、カッツェンとともに現れるらしいのです」

 それを聞いて、ティムと王子は顔を見合わせる。
 その様子を見た受付のカッツェンは、苦笑いを浮かべる。

 「まぁ、信じてはもらえないですよね?
  他国のかたには、バカげた迷信だと思われると思います」
 「いやいや! そんなことはない。我々が救世主だといいのだが」
 「きっと、間違いないです! あんな風に助けていただきましたし」
 「さっきのは、わたしの勝手な怒りだが」
 「でも、わたしには救世主のように見えました」

 話しながら歩くうちに、衛兵がふさいでいる場所にたどり着く。
 衛兵に、その若いカッツェンが何か言うと、衛兵が道を開けてくれる。
 受付のカッツェンと一緒に、広場の反対側に向かう。
 城壁の外から見た神木が、目に入ってくる。
 神木は、葉はもちろん、その幹も含めて苔むしたような緑色だった。
 その根元が、枯れたような茶色に変わっている。
 心なしか、その根元から瘴気のようなものが立ちのぼっている。

 「変な匂いがする……」

 王子が、根元のほうを見て顔をしかめる。
 ティムには、その匂いは分からなかった。
 けれど、近くにいるカッツェンが皆同じような顔になっている。
 それを見て、やはりおかしなことが起こっているのだと確信した。

 「父さん! お客様をお連れしたよ!」
 「ニコ⁉︎  ここに来ては、いけないと言っただろう?」
 「でも、このかたがたは、ブラオの王家からの手紙をお持ちで」
 「なんだって? この緊急時に、ブラオの王家がなんの用で」
 「とにかく、話してみてくれよ。王様に用があるらしいんだ」
 「分かった。おまえは、ギルドに戻りなさい」

 農業ギルドのマイスターは、カッツェンの男性だった。
 品の良い仕草でお辞儀をすると、自己紹介を始めた。

 「はじめまして。わたしは、ミュラーと申します。
  農業ギルドでマイスターをさせていただいております」
 「これは、ご丁寧に。わたしは、ティム。こちらは、ルイです」
 「ルイさん……? こちらにご親戚が?」
 「はい、近い親戚ではありませんが。
  わたしは、ブラオの王家に連なる者なので」
 「やはり、そうですか。あのかたに、そっくりなわけです!」
 「あのかた……とは?」
 「ここではなんですから、城に参りましょう。
  すぐに、王様もお会いいただけるはずです」
 「え、ええ」

 マイスターは、王子の顔を見て、その名を聞くと城へと案内すると言い出した。
 戸惑いながらも、ティムと王子はマイスターとともに城へと向かった。


 ***

 一周目じゃ聞いたことのない話シリーズ、また出たよ!
 スプリガンを使役できるって⁉︎
 そんなの聞いたことねぇんだけど?

 しかも、モントツッカーを使って?
 確かに、ゲーム内にもモントツッカーは出てきたよ。
 カッツェンが愛用する砂糖っていう説明で。
 プレイヤーが食べると、スタミナ回復の効果はあった。
 だけど、それくらい。
 それ以上の素材じゃなかったはず。
 う~ん、このゲームと違いすぎるエピソードってなんなんだ?

 グリュンへの旅は、本当にラクだった。
 追っ手も来ないし。
 攻略サイトが、最初の旅としてオススメするわけだよな。
 なんだかんだで、最後のほうになっちゃったけど。
 今までが大変だったから、気が抜けるくらい楽しい。
 王子とのこんな日々が、ずっと続けばいいのに。

 グリュンの城門の前には、ブラオの時みたいな行列が。
 なんで、観光地でもないのに?
 って思ったけど、きっとゲーム的にはなんかある。

 カッツェンに、あっさり変身する王子は今日もかわいい。
 なでたい。さわりまくりたい。
 が! オレは、ガマンする。できる子だから。
 でも、どうせなら、変身するのは夜にお願いしたいなぁ~。
 ヤバい。考えるだけで、のどが鳴る。

 そんなカッツェン大好きなオレの前で、カッツェンを侮辱するやつ。
 オレは、まったく許せなくて、そいつをシメにいってしまう。
 アホは消えろ!
 ったくよう!
 だけど、王子のヤキモチを見られたのは収穫だったわ。
 なんで、あんなにかわいいかなぁ~。

 予定通りというか、なんというか。
 グリュンにも、何やら問題発生中らしいが……。
 紹介してもらった農業ギルドのマイスターは、王子の顔を見るなり。
 事情も聞かずに、城に案内するって言い出した。
 なんだ、なんだ?
 初めてのパターンじゃね?
 ま、ラッキーだから、ついてくけどね!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

婚約破棄された伯爵令嬢ですが、国の経済を掌握しました

鍛高譚
恋愛
「経済を握る者こそ、世界を動かす――」 前世、日本の証券会社で働いていた**瑞穂紗羅(みずほ さら)**は、異世界に転生し、サラ・レティシア伯爵令嬢として生まれ変わった。 貴族社会のしがらみや婚姻政策に巻き込まれながらも、彼女はひそかに動き始める。 「まずは資金を確保しなくちゃね」 異世界の為替市場(FX)を利用し、通貨の価値変動を読み、巨額の富を得るサラ。 次に狙うは株式投資――貴族の商会やギルドに出資し、国の経済に食い込んでいく。 気づけば彼女は、両替所ネットワークと金融システムを構築し、王国の経済を裏から支配する影の実力者となっていた。 そんな中、彼女に公爵令息との婚約話が舞い込む。 しかし、公爵令息は「格下の伯爵令嬢なんて興味がない」と、一方的に婚約破棄。 それを知った公爵は激怒する―― 「お前は何も分かっていない……! あの女は、この国の経済を支配する者だぞ! 世界すら掌握しかねないのだ!」 サラの金融帝国の成長は止まらない。 貴族たちは彼女にひれ伏し、国王は頼り、王太子は取り込もうとし、帝国は彼女の影響力に戦慄する。 果たしてサラは、異世界経済の頂点に立ち、さらなる世界の覇権を握るのか――?

処理中です...