4 / 36
2章
1
初夏がそろそろ近づいてくる。
商店街は昼間にも関わらず、シャッターが閉まっていて薄暗さがある。
まばらに通り過ぎる人が見えるぐらいだ。
老朽化や不景気の煽りや店主の高齢化、跡継ぎがいないなど閉店の理由は様々だ。
大半がシャッター街であるが、唯一人がそれなりに来るテナントがある――よろず屋ななつ星である。
正確に言うと商店街の路地裏にあるそれは、商店街の中でも新しい外観で清潔感がある。
すずらんは自分のデスクで動画とにらめっこをしていた。
これはある学校の保護者会の様子。
動画の日付は四月十五日の火曜日の十八時頃。
『残念な形になりましたが、皆様にはご不安にさせたこと、騒ぎを起こしてしまい申し訳ございません。――この方は本校の生徒ではありません!』
『そして、発見及び救急車の手配をされた警備員と生徒数名にはそれ相応の処分を致します』
保護者席がざわついて、どういうことだ、ちゃんと説明してほしいの声が聞こえる。
『・・・・・・先程申し上げましたように、今回亡くなられた方は本校の生徒ではありません・・・・・・皆様にはご不快、不安にさせて申し訳ございません・・・・・・これ以上は・・・・・・事実確認中です』
声を震わせて語る女性。
少し涙目になっているがわざとらしい。
『事実確認終了まで、四月十六日から一年生のみ休校といたします。外部及び他学年にも口外しないようお願いします。名前を出すのも禁止です。保護者の皆様にはご理解賜りますようお願い申し上げます』
女性は深々と頭を下げた。
そこで動画も終わっている。
すずらんは「なんだこりゃ」と呟いた。
今回の案件は藤ノ宮女子高校で、体育の授業中に死亡した生徒の真実の解明とターゲットの制裁である。
この動画が来たのは、四月二十二日の今朝。
すずらんの上司である大屋と依頼主である神原光政と澪子の話に同席して、保護者会の動画を見せてもらった。
最初見た時に無責任だとか意味が分からないという感想しかなかった。
光政は『まだ入学して数週間なのに。仲良しの志村さん――真凜ちゃんから話聞いたら、体育の田丸という人が無理やり体育館を五周走らせたそうで。娘は休みたいと言っても、向こうは拒否した。校長先生も追い詰めるだけで・・・・・・挙句の果てには、生徒達に丸投げして二人はどっかいったんですよ?!』
『しかも真凜ちゃんと保健室の先生を呼んだ和田紬さんには出席停止、警備員の男性を解雇処分するそうで・・・・・・』
大屋の隣で聞いていたすずらんは呆れて何も言えなかった。
千夏が救急車に運ばれた次の日の夕方――四月十五日、緊急で保護者会が開かれた。
出席したのは校長と一年生の担任三名と保健室の高山。
田丸は"体調不良"と言って出席しなかった。
警備員に解雇処分、千夏は初めから藤ノ宮の生徒として存在してない扱いをされた。
保護者会の動画を今日だけで五回程見たが、やはり理解し難いというのがすずらんの感想だ。
体育の先生と校長がなぜそろっていなくなったのか。
そしてそのまま保護者会を開く神経が分からない。
「あっ、例の動画ですか? 私も見ましたけど、ないわー」
後ろから声をかけてきたのは同僚のすいせんである。
彼女もすずらんと同じ案件を頼まれている。
マッシュルームヘアーに白のTシャツにジーンズとラフな格好をしている。
彼女は写真の分析や加工が得意である。
「この女性が校長でしょ? 学校のホームページに載ってたわ。で、説明会の服装は・・・・・・お金かかってるねー。体型にピッタリだからオーダーメイドかな」
校長が着ていたスーツは上下共に赤で彼女の体型にびっしり合わせて着こなしているような印象だった。
保護者への説明会で赤のスーツでやってくる校長。
自己主張が激しいひとなんだろう。
この説明会開いたのも「私悪くありません、無関係です」アピールをするためなんだろう。
口ではお悔やみの言葉を言っているが、まったく心に響かない。
そもそも派手な色のスーツを着ている時点で謝る気がない。
すずらんは藤ノ宮女子高校のホームページを見る。
直近は新入生が来たこと、新しい先生の紹介だった。
新入生が今年九十人程。その中に神原千夏がいた訳だ。
三月に更新された新しい先生の紹介は一人だけ。
腕を組んで睨みつけるかのような顔。
意地汚い印象だ。
田丸俊治――体育担当で今回の案件のキーパーソンである。
うわぁなんかやってそう。
今じゃなくても過去になんかしらやらかしてたような感じ。
それがすずらんの感想だった。
ホームページを隅から隅まで見る。
学校の考えや、行事、トップの言葉など。
制裁のためのヒントが残っている。
校長――佐久間倫子は去年代わったばかりのようだ。
前任の校長は退職になっている。
佐久間に代わって半年後を境に、学校関係者が二ヶ月に一回のペースで退職や異動になってて、入れ替わりが激しい。
田丸の前の体育教師も三月で異動になっている。
異動先は系列の学校が多い。
それにしても、生徒一人が亡くなって、保護者会騒ぎになっているのにもかかわらず、一切ホームページで触れてないのが気になる。
休校のお知らせすらない。
いきなり学校休みです。いつ再開するか分かりませんな事を言われても、保護者も困るだろう。
『今後一切話題にするな。名前出すな』
『救急車の手配をした警備員及び生徒に処分を下す』
――校長は揉み消す気でいるつもりだ。
志村真凜と和田紬を出席停止にさせ、警備員を解雇処分にするのは、この学校にいたら都合悪いっていうことなのだろう。
校長が自分にとって都合悪い人がいると排除するタイプなんだろうか。
この半年間で先生達の入れ替わりが激しいのもそういう理由だったとしたら……。
理由は何でもいい。些細なことでもいい。
すずらんはネットで藤ノ宮女子高校関係の事を片っ端から調べる。
掲示板、就職サイトおよび学校の評判の口コミやSNSなど。
学校の評判サイトでは、佐久間校長に代わったのを境に、星五つから二つや一つの評価が目立つ。
特に校則の項目は二年前は
『そこまで厳しくない』
『先生が熱心に向き合ってくれる』
などが目立った。
佐久間校長に代わってから
『校則が厳しくなった』
『刑務所みたいに管理をされる』
『通学のときにあちこち先生が服装の乱れがないか、スマホ持ってないか、道に広がって歩いてないかチェックされる。校長が仕切ってる』
『スマホの持ち込みは以前は授業中以外の使用禁止だったけど、今は学校に持ち込み自体ダメで、見つかると最悪解約させられる』
一気に校則って変わるものなのか?
学校が荒れているのか?
過去の口コミにはそういう内容は全然なかった。
わりと真面目な学校だ。偏差値も低い訳ではなく普通だ。
校長が代わってから、自身で生徒指導に関わっている。
そもそもスマホの解約に学校が口出しできるのか?
就職サイトの口コミも同じく、佐久間校長に代わってから、辞める人が出てきてるようだ。
『校長が代わってから、身内で固めるようになった』
『少しでも校長に意見すると、すぐに辞めさせられる』
『生徒指導でかなり時間取られるようになった上、残業代が出ない』
一年前から半年前に集中している。
どれだけの先生方が辞めたのだろうか。
校則も徐々に厳しくなってるのが気になる。
すずらんは自分の高校時代を思い出す。
そこまで厳しくなかった。
進学校というのがあるかもしれないが。
まして藤ノ宮女子高校みたいに、先生が通学路周辺をあちこち立って、服装のチェックや、横に広がって歩いてないかなんてしてなかった。
他の学校もそうだ。
多分こんなことをしているのは藤ノ宮だけだろう。
身内贔屓な所があるということは、田丸も校長となんかしらの繋がりがあるということだろうか。
神原千夏が救急車で運ばれた日、二人揃ってどこか消えた。
そして次の日には何事もなく戻ってきてる。
――もしかして、男女の仲とか?
商店街は昼間にも関わらず、シャッターが閉まっていて薄暗さがある。
まばらに通り過ぎる人が見えるぐらいだ。
老朽化や不景気の煽りや店主の高齢化、跡継ぎがいないなど閉店の理由は様々だ。
大半がシャッター街であるが、唯一人がそれなりに来るテナントがある――よろず屋ななつ星である。
正確に言うと商店街の路地裏にあるそれは、商店街の中でも新しい外観で清潔感がある。
すずらんは自分のデスクで動画とにらめっこをしていた。
これはある学校の保護者会の様子。
動画の日付は四月十五日の火曜日の十八時頃。
『残念な形になりましたが、皆様にはご不安にさせたこと、騒ぎを起こしてしまい申し訳ございません。――この方は本校の生徒ではありません!』
『そして、発見及び救急車の手配をされた警備員と生徒数名にはそれ相応の処分を致します』
保護者席がざわついて、どういうことだ、ちゃんと説明してほしいの声が聞こえる。
『・・・・・・先程申し上げましたように、今回亡くなられた方は本校の生徒ではありません・・・・・・皆様にはご不快、不安にさせて申し訳ございません・・・・・・これ以上は・・・・・・事実確認中です』
声を震わせて語る女性。
少し涙目になっているがわざとらしい。
『事実確認終了まで、四月十六日から一年生のみ休校といたします。外部及び他学年にも口外しないようお願いします。名前を出すのも禁止です。保護者の皆様にはご理解賜りますようお願い申し上げます』
女性は深々と頭を下げた。
そこで動画も終わっている。
すずらんは「なんだこりゃ」と呟いた。
今回の案件は藤ノ宮女子高校で、体育の授業中に死亡した生徒の真実の解明とターゲットの制裁である。
この動画が来たのは、四月二十二日の今朝。
すずらんの上司である大屋と依頼主である神原光政と澪子の話に同席して、保護者会の動画を見せてもらった。
最初見た時に無責任だとか意味が分からないという感想しかなかった。
光政は『まだ入学して数週間なのに。仲良しの志村さん――真凜ちゃんから話聞いたら、体育の田丸という人が無理やり体育館を五周走らせたそうで。娘は休みたいと言っても、向こうは拒否した。校長先生も追い詰めるだけで・・・・・・挙句の果てには、生徒達に丸投げして二人はどっかいったんですよ?!』
『しかも真凜ちゃんと保健室の先生を呼んだ和田紬さんには出席停止、警備員の男性を解雇処分するそうで・・・・・・』
大屋の隣で聞いていたすずらんは呆れて何も言えなかった。
千夏が救急車に運ばれた次の日の夕方――四月十五日、緊急で保護者会が開かれた。
出席したのは校長と一年生の担任三名と保健室の高山。
田丸は"体調不良"と言って出席しなかった。
警備員に解雇処分、千夏は初めから藤ノ宮の生徒として存在してない扱いをされた。
保護者会の動画を今日だけで五回程見たが、やはり理解し難いというのがすずらんの感想だ。
体育の先生と校長がなぜそろっていなくなったのか。
そしてそのまま保護者会を開く神経が分からない。
「あっ、例の動画ですか? 私も見ましたけど、ないわー」
後ろから声をかけてきたのは同僚のすいせんである。
彼女もすずらんと同じ案件を頼まれている。
マッシュルームヘアーに白のTシャツにジーンズとラフな格好をしている。
彼女は写真の分析や加工が得意である。
「この女性が校長でしょ? 学校のホームページに載ってたわ。で、説明会の服装は・・・・・・お金かかってるねー。体型にピッタリだからオーダーメイドかな」
校長が着ていたスーツは上下共に赤で彼女の体型にびっしり合わせて着こなしているような印象だった。
保護者への説明会で赤のスーツでやってくる校長。
自己主張が激しいひとなんだろう。
この説明会開いたのも「私悪くありません、無関係です」アピールをするためなんだろう。
口ではお悔やみの言葉を言っているが、まったく心に響かない。
そもそも派手な色のスーツを着ている時点で謝る気がない。
すずらんは藤ノ宮女子高校のホームページを見る。
直近は新入生が来たこと、新しい先生の紹介だった。
新入生が今年九十人程。その中に神原千夏がいた訳だ。
三月に更新された新しい先生の紹介は一人だけ。
腕を組んで睨みつけるかのような顔。
意地汚い印象だ。
田丸俊治――体育担当で今回の案件のキーパーソンである。
うわぁなんかやってそう。
今じゃなくても過去になんかしらやらかしてたような感じ。
それがすずらんの感想だった。
ホームページを隅から隅まで見る。
学校の考えや、行事、トップの言葉など。
制裁のためのヒントが残っている。
校長――佐久間倫子は去年代わったばかりのようだ。
前任の校長は退職になっている。
佐久間に代わって半年後を境に、学校関係者が二ヶ月に一回のペースで退職や異動になってて、入れ替わりが激しい。
田丸の前の体育教師も三月で異動になっている。
異動先は系列の学校が多い。
それにしても、生徒一人が亡くなって、保護者会騒ぎになっているのにもかかわらず、一切ホームページで触れてないのが気になる。
休校のお知らせすらない。
いきなり学校休みです。いつ再開するか分かりませんな事を言われても、保護者も困るだろう。
『今後一切話題にするな。名前出すな』
『救急車の手配をした警備員及び生徒に処分を下す』
――校長は揉み消す気でいるつもりだ。
志村真凜と和田紬を出席停止にさせ、警備員を解雇処分にするのは、この学校にいたら都合悪いっていうことなのだろう。
校長が自分にとって都合悪い人がいると排除するタイプなんだろうか。
この半年間で先生達の入れ替わりが激しいのもそういう理由だったとしたら……。
理由は何でもいい。些細なことでもいい。
すずらんはネットで藤ノ宮女子高校関係の事を片っ端から調べる。
掲示板、就職サイトおよび学校の評判の口コミやSNSなど。
学校の評判サイトでは、佐久間校長に代わったのを境に、星五つから二つや一つの評価が目立つ。
特に校則の項目は二年前は
『そこまで厳しくない』
『先生が熱心に向き合ってくれる』
などが目立った。
佐久間校長に代わってから
『校則が厳しくなった』
『刑務所みたいに管理をされる』
『通学のときにあちこち先生が服装の乱れがないか、スマホ持ってないか、道に広がって歩いてないかチェックされる。校長が仕切ってる』
『スマホの持ち込みは以前は授業中以外の使用禁止だったけど、今は学校に持ち込み自体ダメで、見つかると最悪解約させられる』
一気に校則って変わるものなのか?
学校が荒れているのか?
過去の口コミにはそういう内容は全然なかった。
わりと真面目な学校だ。偏差値も低い訳ではなく普通だ。
校長が代わってから、自身で生徒指導に関わっている。
そもそもスマホの解約に学校が口出しできるのか?
就職サイトの口コミも同じく、佐久間校長に代わってから、辞める人が出てきてるようだ。
『校長が代わってから、身内で固めるようになった』
『少しでも校長に意見すると、すぐに辞めさせられる』
『生徒指導でかなり時間取られるようになった上、残業代が出ない』
一年前から半年前に集中している。
どれだけの先生方が辞めたのだろうか。
校則も徐々に厳しくなってるのが気になる。
すずらんは自分の高校時代を思い出す。
そこまで厳しくなかった。
進学校というのがあるかもしれないが。
まして藤ノ宮女子高校みたいに、先生が通学路周辺をあちこち立って、服装のチェックや、横に広がって歩いてないかなんてしてなかった。
他の学校もそうだ。
多分こんなことをしているのは藤ノ宮だけだろう。
身内贔屓な所があるということは、田丸も校長となんかしらの繋がりがあるということだろうか。
神原千夏が救急車で運ばれた日、二人揃ってどこか消えた。
そして次の日には何事もなく戻ってきてる。
――もしかして、男女の仲とか?
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
「お従妹様の看病で五年、夜会に出ておりませんの」
歩人
ファンタジー
侯爵令嬢イレーネは婚約者アーロンの要請で、五年にわたり彼の「病弱な従妹」クレアを看護してきた。夜会も社交も諦め、毎晩クレアの枕元で看護した。だが二十三歳の誕生日、医師会の抜き打ち健診でクレアは「むしろ同世代で最も健康」と診断される。イレーネが見せてもらった五年分の薬代明細には、存在しない薬品と架空の処置が並んでいた。アーロンは慌てる。「誤解だ。クレアは本当に弱くて……」イレーネは微笑んだ。「では、五年分の看護費と、わたくしが失った社交時間を、具体的な数字にして頂戴いたしましょう」。医師会長が断言する。「詐病誘導と医療費架空請求。司法に回します」。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
「贅沢不倫夫に「実家の支援は要らん」と言われたので屋敷の維持費を全額請求しました。――支払えない?なら体で払っていただきますわ」
まさき
恋愛
「お前の実家の支援など要らん」
贅沢三昧の不倫夫にそう言い放たれた侯爵夫人レイラは、動じるどころか翌朝、12年分・総額4万2千ルークの請求書を夫の朝食の隣に置いた。
用意周到な彼女は、万が一に備えてすべての支出を「貸付金」として記録していた。
支払えない夫が向かう先は、レイラの実家が経営する矯正労働施設。傍らには、元暗殺者にして絶対の忠誠を誓う執事・シオンが静かに控えている。
これは、完璧な清算と――思いがけない愛の物語。