10 / 36
3章
3
しおりを挟む
志村真凜は学校から出席停止を求められてずっと家にいる。
今日で一週間。
あの日に投稿したSNSはあっという間に、拡散された。
労いの言葉もあれば批判の言葉もあった。
嘘松とか自作自演とか。
一番心に来たのは『お前が殺したようなもん』だった。
現場見てない癖に。
私の何がわかるのよ!
最近は家に知らない人がウロウロしているのが見えるので、極力外に出ないようにしている。
宅配を装って家を撮影しに来た人達が来た時は言葉に出来なかった。
『ねぇ? いまどんな気持ち?』
男性複数人でインターフォン越しに話しかけてきた。まるで人の不幸を楽しむかのように。
私の家が全世界に公開処刑されているのかと思うと、おちおち外に出るなんてできない。
今まで近所のスーパーや買い物によく行っていたけど、あの一件から知らない人に追いかけられたり、声かけられたり続いたので、通販で済ましている。
宅配や郵便が来ても置いてもらっている。
直接の顔合わせるのがこわい。
担任は何としてでも真凜の無罪を晴らそうと躍起になってる。
真凜はスマホを開いて、学校専用の連絡アプリを開く。
これでクラスの連絡や学校からのお知らせが一斉に送られる。
「えっ・・・・・・? なんで?!」
画面にはアカウントがありませんの表示。
「嘘、マジで? 何で?」
再ログインするために、パスワードとアカウントを思い出す。が出てこない。
入学式の時に配られた学校専用アプリの説明が書かれたプリントを学校鞄から取り出す。
プリントにアカウントとパスワードをメモしたのだから。
プリントと照らし合わせて再ログインをするがだめだ。
何回やっても同じ結果。
先週まで普通にログインできたのに。
アカウント停止になるようなこともしてない。
真凜はスマホの画面の前で落胆した。
「まさか、出席停止になったから、アカウントを消したとか?」
真凜はクラス内のグループチャットでログインできないことを愚痴る。
これは学校のアプリとは別で、各クラス自分達でグループチャットを作っている。
参加は任意だ。
このままアプリが使えないと、学校の大事な予定が確認できなくなる。
グループチャットに頼るのもさすがに他のクラスメイトに申し訳ない。
真凜は学校に電話かけた。
いちかばちか担任が出るのを祈るばかり。
「はい、藤ノ宮女子高校です」
出たのは女性教師だ。
「私、一年二組の志村真凜と申しますが、佐田先生いらっしゃいますか?」
真凛は硬い声で尋ねる。ただでさえ目上の人に電話をするのは緊張する。
「・・・・・・佐田先生なんていらっしゃいませんが」
女性の発言に耳を疑う。
「一年二組の佐田佳樹先生です。私の担任なんですが・・・・・・」
「佐田先生なんていらっしゃいません!! 一年二組の担任は別の方です」
「ちょっと、待ってください! 別の方って?」
「個人情報なのでお教えできません」
女性は強く言い切って、電話を切った。
真凜は何がなんだか分からない。
学校の予定を調べるにも、ログインができない。
担任に繋げてもらおうとしてもらったら「存在していない」と言われる。
真凜は再びクラスのグループチャットに電話でのやりとりを投稿する。
すると返事がきた。東だ。
曰く、佐田先生は退職で、次回登校する時には代わりに田丸がすると。
保護者に伝わってるはずだと。
学校のアプリにログインできないのは紬も同様だったと。
真凜は東の投稿に対して、全く情報が来てないし、親も担任が代わるなんて聞いてないと送った。
次々と既読の跡が付く。
後追いするようにマジかよとか、何で? のコメントがつづく。
こっちが知りたい。
『もしかしたら、校長の指示かも。まーりんとつーちゃんがアプリ繋げられないようにアカウント停止、佐田先生には今回の件が表沙汰になったら困るから辞めてもらって、田丸を担任にさせるのかも。校長、田丸のことかなり気に入ってるらしいから。先輩から聞いた』
東の投稿になんとなく納得できる。
今回の件に関わった人を片っ端から排除させることで、何事もなかったかのようにするつもりなのかもしれない。
保健室の高山先生もそのうち辞めさせられるかもしれない。
真凜にとって学校の情報を手に入れる方法はこのクラス内のチャットだけだ。
しばらくこのチャットに、もし何かあったら教えてほしいと送った。
真凜は机の上に突っ伏した。
腹立たしさと悲しさと悔しさと。
クラス全員が完璧に集団行動の練習ができていたら?
私が花粉症を我慢しとけば解決できた?
千夏が死んだ以上私は言われて当然なの?
家にまで嫌がらせが来てるのも、誹謗中傷されるのも自分が悪いの?
『藤ノ宮女子高校の件はまーりんが元凶』と言わんばかりに噂が独り歩きしている。
一番辛いのは千夏の家族だ。
私は弱音を吐いたらいけない立場なのかもしれない。
だから、いかに自分と向き合ってきちんと解決と再発防止してほしい。
――田丸と校長は絶対許さない。
本音を言うともうこの二人に会いたくない。
いなくなってほしい。
両親が揃った夜、真凜は学校のアプリが繋がらなくなったこと、担任の先生が田丸に代わったことを話した。
「えーっ!! どうして?」
「まさか、千夏ちゃん絡み?」
青ざめた真凜の父が学校に電話しようとする。
時間が七時前なので、繋がるかどうか分からない。
「いつもお世話になっています。私、一年二組の志村真凜の父なんですが・・・・・・」
しばらく電話のやりとりを見守る。
「・・・・・だめだ、一方的に切られた・・・・・・『うちにはそんな生徒いません!』」ってさ。随分失礼な言い方するなー」
応対したのは男性だった。
「校長から箝口令敷かれてるんじゃないか? もう真凜もここの生徒じゃない扱いしてるのかも。あの校長、保護者会での自己保身ぶり酷かったからな。あれがよく教育者やってられるな」
「お父さんとこの会社に嫌がらせはなかった?」
「今のとこはない。むしろ同情的だよ」
真凜は胸を撫で下ろした。
「あー、そういや、藤ノ宮には色々イタ電来てるらしいな。もしかして、それもあるのか? あの学校が冷たい対応するのは」
保護者でも静観する人、事態を楽しむ人、学校の方針に納得してない人様々である。
「真凜、お前は悪くない。むしろ千夏ちゃんに対してベストを尽力したんだ。お父さん誇りに思ってる」
そうだ。自分はやれることをやったんだから。
「校長が無理なら、学園長に相談する。それしかない」
今日で一週間。
あの日に投稿したSNSはあっという間に、拡散された。
労いの言葉もあれば批判の言葉もあった。
嘘松とか自作自演とか。
一番心に来たのは『お前が殺したようなもん』だった。
現場見てない癖に。
私の何がわかるのよ!
最近は家に知らない人がウロウロしているのが見えるので、極力外に出ないようにしている。
宅配を装って家を撮影しに来た人達が来た時は言葉に出来なかった。
『ねぇ? いまどんな気持ち?』
男性複数人でインターフォン越しに話しかけてきた。まるで人の不幸を楽しむかのように。
私の家が全世界に公開処刑されているのかと思うと、おちおち外に出るなんてできない。
今まで近所のスーパーや買い物によく行っていたけど、あの一件から知らない人に追いかけられたり、声かけられたり続いたので、通販で済ましている。
宅配や郵便が来ても置いてもらっている。
直接の顔合わせるのがこわい。
担任は何としてでも真凜の無罪を晴らそうと躍起になってる。
真凜はスマホを開いて、学校専用の連絡アプリを開く。
これでクラスの連絡や学校からのお知らせが一斉に送られる。
「えっ・・・・・・? なんで?!」
画面にはアカウントがありませんの表示。
「嘘、マジで? 何で?」
再ログインするために、パスワードとアカウントを思い出す。が出てこない。
入学式の時に配られた学校専用アプリの説明が書かれたプリントを学校鞄から取り出す。
プリントにアカウントとパスワードをメモしたのだから。
プリントと照らし合わせて再ログインをするがだめだ。
何回やっても同じ結果。
先週まで普通にログインできたのに。
アカウント停止になるようなこともしてない。
真凜はスマホの画面の前で落胆した。
「まさか、出席停止になったから、アカウントを消したとか?」
真凜はクラス内のグループチャットでログインできないことを愚痴る。
これは学校のアプリとは別で、各クラス自分達でグループチャットを作っている。
参加は任意だ。
このままアプリが使えないと、学校の大事な予定が確認できなくなる。
グループチャットに頼るのもさすがに他のクラスメイトに申し訳ない。
真凜は学校に電話かけた。
いちかばちか担任が出るのを祈るばかり。
「はい、藤ノ宮女子高校です」
出たのは女性教師だ。
「私、一年二組の志村真凜と申しますが、佐田先生いらっしゃいますか?」
真凛は硬い声で尋ねる。ただでさえ目上の人に電話をするのは緊張する。
「・・・・・・佐田先生なんていらっしゃいませんが」
女性の発言に耳を疑う。
「一年二組の佐田佳樹先生です。私の担任なんですが・・・・・・」
「佐田先生なんていらっしゃいません!! 一年二組の担任は別の方です」
「ちょっと、待ってください! 別の方って?」
「個人情報なのでお教えできません」
女性は強く言い切って、電話を切った。
真凜は何がなんだか分からない。
学校の予定を調べるにも、ログインができない。
担任に繋げてもらおうとしてもらったら「存在していない」と言われる。
真凜は再びクラスのグループチャットに電話でのやりとりを投稿する。
すると返事がきた。東だ。
曰く、佐田先生は退職で、次回登校する時には代わりに田丸がすると。
保護者に伝わってるはずだと。
学校のアプリにログインできないのは紬も同様だったと。
真凜は東の投稿に対して、全く情報が来てないし、親も担任が代わるなんて聞いてないと送った。
次々と既読の跡が付く。
後追いするようにマジかよとか、何で? のコメントがつづく。
こっちが知りたい。
『もしかしたら、校長の指示かも。まーりんとつーちゃんがアプリ繋げられないようにアカウント停止、佐田先生には今回の件が表沙汰になったら困るから辞めてもらって、田丸を担任にさせるのかも。校長、田丸のことかなり気に入ってるらしいから。先輩から聞いた』
東の投稿になんとなく納得できる。
今回の件に関わった人を片っ端から排除させることで、何事もなかったかのようにするつもりなのかもしれない。
保健室の高山先生もそのうち辞めさせられるかもしれない。
真凜にとって学校の情報を手に入れる方法はこのクラス内のチャットだけだ。
しばらくこのチャットに、もし何かあったら教えてほしいと送った。
真凜は机の上に突っ伏した。
腹立たしさと悲しさと悔しさと。
クラス全員が完璧に集団行動の練習ができていたら?
私が花粉症を我慢しとけば解決できた?
千夏が死んだ以上私は言われて当然なの?
家にまで嫌がらせが来てるのも、誹謗中傷されるのも自分が悪いの?
『藤ノ宮女子高校の件はまーりんが元凶』と言わんばかりに噂が独り歩きしている。
一番辛いのは千夏の家族だ。
私は弱音を吐いたらいけない立場なのかもしれない。
だから、いかに自分と向き合ってきちんと解決と再発防止してほしい。
――田丸と校長は絶対許さない。
本音を言うともうこの二人に会いたくない。
いなくなってほしい。
両親が揃った夜、真凜は学校のアプリが繋がらなくなったこと、担任の先生が田丸に代わったことを話した。
「えーっ!! どうして?」
「まさか、千夏ちゃん絡み?」
青ざめた真凜の父が学校に電話しようとする。
時間が七時前なので、繋がるかどうか分からない。
「いつもお世話になっています。私、一年二組の志村真凜の父なんですが・・・・・・」
しばらく電話のやりとりを見守る。
「・・・・・だめだ、一方的に切られた・・・・・・『うちにはそんな生徒いません!』」ってさ。随分失礼な言い方するなー」
応対したのは男性だった。
「校長から箝口令敷かれてるんじゃないか? もう真凜もここの生徒じゃない扱いしてるのかも。あの校長、保護者会での自己保身ぶり酷かったからな。あれがよく教育者やってられるな」
「お父さんとこの会社に嫌がらせはなかった?」
「今のとこはない。むしろ同情的だよ」
真凜は胸を撫で下ろした。
「あー、そういや、藤ノ宮には色々イタ電来てるらしいな。もしかして、それもあるのか? あの学校が冷たい対応するのは」
保護者でも静観する人、事態を楽しむ人、学校の方針に納得してない人様々である。
「真凜、お前は悪くない。むしろ千夏ちゃんに対してベストを尽力したんだ。お父さん誇りに思ってる」
そうだ。自分はやれることをやったんだから。
「校長が無理なら、学園長に相談する。それしかない」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる