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1章

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 電気をつけると誰もいない。
 キッチンにはお手伝いの大野がナスと豚肉の味噌炒めをタッパーに入れて置いててくれた。
 結花と悠真の分だ。しかし結花は外で食べてきたので、悠真1人だけ食べる形になる。
「あー疲れた」
 結花はだらしなくソファーに座る。
 嫌いな身内の病院の付添いだけで疲れる。
 やっぱり姑という存在は私にとって害だわ。誰か追い払ってくれないかしら。というか義理の家族の存在がそもそも邪魔。
 私の世界を侵食してくる邪魔者。
 私たちは私達なの。口出しなんて絶対許さない。
 私は絶対義理の家族に対して協力するつもりない。でも利用するだけする。
 私は義理の家族は嫌いだけど、なんだかんだ言って向こうは私のことをかわいがってくれる。
 時々食材とともにお小遣いをくれる。
 でもその食材はすぐに捨てるか、お手伝いさん達にあげている。食べるものないでしょと憐れむように。
 お手伝いさんを見下すのは序の口だ。
 どうせ呉松家のお手伝いだからそんなにお金はないのだろう。人の下のつくのだから、たいしたお金もないし、所詮は貧乏人だと思っている。
 私が気に入らないものは全てイヤゲモノなの。
 だまってお金だけ渡せばいいの。
 義理家族も夫も私にとってはATMのようなものだ。
 私に尽くして当然な存在。
 だから私は一切働かない。働きたくもない。
 結婚のために、夫に尽くす人間を演じてきた。
 ”家庭的で清純な女の子”になりきっていた。
 自分でいうのもあれだけど、妙に演技力ある。
 私が得するためになら、なんだって演じる。それで異性をおちょくってきた。
 可愛い私のためならなんでもやると言わんばかりに男子は色々アプローチしてきた。
 期待させて最後落とす。それで悔しがっている姿を見て優越感に浸っていた。
 それでも課題や力仕事や面倒な雑用を男子に押し付けて、私は逃げてきた。
 私は自分が楽になるためならなんだってやる。
 母も似たような考えの人だ。
 例えば私がこれから働かないといけないとか、離婚になりそうだと、真っ先に止めるだろう。
 母も働きたがらないから。
 元々お嬢ちゃん育ちの母は、呉松家に父を婿養子に入れて、ずっと専業主婦でいたし、人にやってもらうのが当たり前の考えの人。家事は私より出来る方だが、お手伝いさんがいないと不安なので、大野さん、柿本さん、野田さん達に手伝ってもらっている。ちなみに三人とも母が子どもの頃からいる人達で、それぞれ家庭がある。
 母の口癖は「女の子が働くなんて可哀そう」だ。
 共働きの同級生の親を見ては「あの家はお母さんが働いてて大変そうね」と心配するフリをしては、見下していた。
 かといって義理の親――父の両親の介護はおろか、実両親の介護すらやっていない。
 介護は全て老人ホームに丸投げでろくに面会に行っていない。
 たまに面会いったらいかに介護だ大変か語っていた。
 だから私は絶対義理の親の介護なんてやらない。
 絶対夫に押し付けて逃げてやる。

 ――私にとって大切なのは自分自身。自分が一番可愛い。自己保身含めて。

 結花はコーヒーを準備してソファーに腰掛ける。
 その瞬間「ただいまー」と脳天気な声が聞こえた。
 夫の悠真が帰ってきた。
 まだ夜の7時だ。こんな時間に帰ってくるなんて珍しいなと思いつつ、結花は悠真を出迎える。
「ただいまー!」
 結花はスーツ姿の悠真に抱きつく。
 これで他所の女の匂いがないかさり気なくチェックする。
 よし、何もない。大丈夫。
「ゆ、ゆいか、先にお風呂入りたいんだけど……」
「えーっ」
 唇を尖らせて不満アピールをする。
 今家に帰ってきたばかりなのに! お風呂なんて入れてるわけないよ!
 せっかくコーヒー飲んでゆっくりしようかという時に、こんな早く帰ってくるのよ!
「……わ、わかった。飯は?」
「今用意するから待って」
 結花はタッパーにはいったおかずを深い丸皿にうつしてレンチンする。ついでにレトルトの白ごはんも一緒にする。
 呉松家の冷蔵庫はお手伝いさん達が交代で作ったおかずが入ったタッパーでいっぱいだ。それを日替わりで毎日出す。つまり結花はレンチンして出すだけ。
「はい、どうぞ」
「ありがとーね」
 悠真はナスと豚肉の味噌いためを口にする。
 美味しい。頑張ったら自分でも作れそうと思う。
 結花自身で作ったものではないと知って以来、お手伝いさん達に負担をかけてなんとなく申し訳ないと思う。
「チャンネル変えていい?」
 悠真はリモコンで4チャンネルに変える。
 いつも楽しみにしているクイズ番組だ。
 仕事をしてからは中々リアタイ視聴が出来ず、ネット配信ばかりだ。
 久しぶりに家に帰って見れる。
 出演ドラマ対抗で、医療ドラマ、警察ドラマ、恋愛ドラマのチームで戦う。1チーム5人だ。
『では問題! 花札の10月の札で鹿がそっぽを……』
 司会者が問題を読み終える前に悠真は「シカト」とボソっと答える。
「えーっ、本当なの?」
「うん。割と有名な問題だからね。あとこの問題のパターンで、鹿と一緒に描かれている花の名前は何でしょうがある。答えはもみじ」
 得意げに話す悠真に対して、結花は「ふーん」とつまらなさそうに聞く。
 問題を読み上げると解答者の一人が「たぬき?」と元気よく答える。
 彼は、現在放送している医療ドラマの主人公役の人だ。天然ボケな所が少しあるので、ファンの間で可愛いと人気がある。
『うーんちがいます!』
 司会者が顔を歪ませて不正解を伝えると、彼はそっかーと全く落ち込んでいない様子。
 また解答者の1人がボタンを押した。
 こちらは警察ドラマの主人公の上司役の男性が「シカト」と答えた。
 有名大学出身で、40代なのに若々しく見えることで女性に人気がある。
 司会者から正解ですと言われ、男性は後ろの列に戻る。
『世界三大宗教といえば、キリスト教、仏教……』
「イスラム教!」
『牡丹肉の別名……』
「いのしし!」
 悠真は司会者が全部読み切る前で答えて、全て正解している。
 一方結花は不満げに楽しそうな悠真が気に入らない。
 まるで私を馬鹿にしてるみたい。
 全然分からないし。見てて全然つまらない。
 こういうのって何が楽しいかちっとも分からない。
 ただの知識のマウントとりね。
 まじで問題集や解答ボタンを売るか捨ててやりたい。 
 夫の趣味なんて全く理解するつもりない。私に尽くしてもらうためには邪魔なものだ。
 でも私に関しては全て理解してほしい。
 あー、クイズ番組に夢中になってむかつく!
 世界一可愛い私を見なさいよ!
 結花は楽しそうな悠真を無視してSNSに投稿する。
『夫がクイズ番組に夢中で私の話聞いてくれない』
『問題集捨ててやろうかなw』
 悠真はつまらなさそうにしている結花に気づき、気を遣ってテレビを消す。
「さっきからすごい機嫌悪そうだけどどうした?」
「……別に」
 悠真が穏やかな口調で尋ねるがつっけんどんに返す結花。
 悠真はまた始まったと呆れのようなため息をつく。
 いわゆる「察してちゃん」だ。
 機嫌悪くなると返事が塩対応どころか突き放すような口調になる。
 諸悪の根源は結花の母やお手伝いさん達だ。
 結花のご機嫌取りが当たり前になっている。
 そうじゃないと家の空気は険悪になるからだろう。
 実家から悠真に変わっただけだ。
「あのな、もう20代でしょ? もうそうやって不機嫌アピールするのやめてくれないか?」
 悠真の注意にぷいとそっぽを向く結花。
「何が気に入らないんだ? 俺のお母さんの通院か? 俺が家に帰ろうがいなくてもいつも嫌そうな顔してるよな? 一体なんなんだ?」
 悠真の口調が段々ヒートアップしていく。
 結花は立ち上がって仁王立ちしながら
「あーうるさいわね! そうよ? いきなりあんたのお義母さんが転んで通院来いって言われてさー、そんなの喜んで行く嫁なんてどこにいるの?! 私の時間返して! 付き添ってあげたんだから」
 まくしたてるように悠真を追い詰める。
 大好きな母とのアフタヌーンティーを中断させられたんだから、その分の代金払うのは当然。
「あのな、昼の時も言ったけど、その『あげる』とか『してやった』とか上から目線の言い方やめてよ。結花、一体何様なんだよ?」
「私は世界一可愛いのよ。上から目線なんて当たり前でしょ。あんたは世界一可愛い私と結婚したんだから、ありがたく思いなさいよ。私の言うことを聞くのは当然でしょ! ほら私の方に向かって跪きなさい。今日の通院付き添ってありがとうございますって」
 結花はつばを飲み込みながら、さらにまくしたてる。
 今日幼馴染にも上から目線すぎると言われた。同じことを夫にも言われた。
 1日に2回も言われると腹が立って仕方ない。
「俺は奴隷じゃない。いい加減身勝手な言動や行動をするのやめてくれ。なんのための夫婦だ? 結花にとって俺はなんなの?」
「……大切な人よ」
 一瞬間を置いて答える。
 大切な人であることは嘘ついてない。ただ、いっつも家にいないし、忙しいから、それが不満。
 だから母と一緒に散財してストレス発散している。
 私の言う通りにすれば、こんな上から目線な言葉なんて言われなくて済むのに。
「ねぇ、もうお説教はたくさんなの。いい?」
「だめだ。大事な話がある」
 やっと本題に入れそうだと悠真は息をつく。
「お義母さんが転んで、しばらく働けなくなっただろ?」
「またお義母さんの話? あんたマザコン?」
 結花は悠真の話を遮ろうとするが無視をしてそのまま続ける。
「最後まで聞いて」
 ピシャリと言い放つ悠真に結花はビクつく。
 何なのよ。いきなり突き放すような言い方。
 モラハラよっ! モラハラ! あとでSNSに愚痴ってやる!
「これからクリスマスや年末年始で忙しくなって、人が足りなくなるから……」
 結花の体全身がざわつく。
 これって働けってこと? そうだよね?
「――お義母さんの代わりに働いてほしいんだ」
「嫌だ」
 結花は短く切り捨てた。

 働くなんてまっぴらよ。せっかくの専業主婦ライフが台無しになるわ。
 同級生が一生懸命働いている中で、私は朝からランチや買い物やエステに行く。
 家事はお手伝いさんに丸投げ。それをあたかも自分でやった体で生きてきた。
 その優越感がたまらない。SNSでみんな羨ましそうにしているコメントがついてくる。
 シャレオツな料理を作った人間がお手伝いさんなんてつゆ知らず、すごーいとか美味しそうとかコメントが来ると、騙されてやんのと舌を出して笑っていた。
 自分が世間より裕福な生活を送っていることを実感していた。
 働いたらみーんな全然できなくなる。
 
 ――今の生活を崩したくない!

「私が働くなんて誓約書違反よ! 専業主婦にさせるのが結婚の条件でしょ!」
「じゃぁ離婚か? 正直俺は結花の日頃の生活態度にうんざりしているからね」
「り、離婚?!」
 そんなことしたら生活できないじゃない!
 呉松家のお嬢様のワタシが離婚したなんて広まったら……世間に顔向けできないし、周りに自慢できないじゃない!

「嫌だ。どっちも嫌。あんたが中々帰ってこないから、浮気してるんじゃないかと思ってた。私を心配させた罰としてお小遣い千円引くから!」
 悠真は結花の話を聞いて開いた口が塞がらない。
 どこまでこの人はわがままなんだろうか。
「それはないだろ! 心配させたってなに?」
「あんたが帰り遅いから、浮気してるんじゃないかって心配になったから……」
 結花は語尾をうやむやにして、上目遣いアピールでごまかす。

 やばい、このままだと母に頼んで探偵つけたことがばれてしまう。
 母のメッセージアプリに探偵から夫の様子と身辺が逐一送られる。それを私宛てに母から送られてくるが、何もなかった。
 職場のスタッフに指導したり、レジ対応、棚卸し、商品の陳列をしている様子だった。
 家にはまっすぐ帰っていた。

 悠真が勤務しているローカルスーパーよだの西南店の周りは娯楽が少ない。
 あのあたりは駅前にビルやライバル会社のスーパーと、チェーン店のカフェしかない。
 元々西南エリアは新興住宅地でそれなりにしっかりしたファミリー層が多い。
 なので大人のお店はもちろん、居酒屋やカラオケ屋などもほとんどない。その代わり、駅ビルの中や周辺に塾が多い。教育熱心なエリアだ。
 隣の西南中央エリアは、駅周辺に大きなショッピングモール、病院や駅ビルやホテルがある。
 西南エリア同様飲み屋さんや大人のお店は全くなく、塾やピアノ教室や病院が並んでいる。
 そのため西南中央エリアと西南エリアは教育レベルが高いことで人気がある。
 もちろんホームレスや酔っぱらいなんていない。もっというと路上ライブをする人間もほとんどいない。
 それらを考えれば、悠真が夜遊びに行く元気なんてない。余裕がない。

 考えれば分かることなのにも関わらず、結花は帰りが遅いという理由で悠真の浮気を疑っている。
「帰りが遅いのは、これから年末年始のセールの準備があるからだよ。季節ごとにお客を呼び込むことをしないといけないからね。うちのスーパーの営業時間知ってる?」
「……えーっと……」
「そうだよな。結花、うちの家業見下してるのよく分かった。お義母さんと一緒だ」
「あ、いや、それは……」
 結花は口ごもって目をそらす。
 日頃から母と一緒に夫の家業を馬鹿にしていたのを否定したら嘘になる。
 本当は呉松家が経営する会社で働いてほしかった。そうしたら、多少は勤務時間優遇してくれるというのに。でも、家業が大事と蹴ったから。
 結婚のために多少譲歩してやっただけでも感謝しなさいよ! 代わりにゆいちゃんに尽くしなさいよ!

「朝の7時から夜の10時までだ。みんな交代で働いているんだ。結花がいつもいくような所と違って、うちは夜遅くまで塾通ってる子や会社が終わるのが遅い人、たくさんいるんだ。そういうのを考えての上だ」
「スーパーの開店時間に合わせてスタッフも早くこないといけない。早い勤務の人は六時半に既に来ているんだ。俺は現場にでなくていいとはいえ、いつも人がいないからスタッフと一緒に働いている」
「そんなの開店時間遅くすればいいじゃん」
「それも1つの方法かな。考えてみる」
 子どもを諭すような口調で浮気をしていないことを弁明する悠真。
 実際浮気もなにも、そんな暇ない。
 遅番だったら少しゆったりと出勤できるが、そんなに多いわけでもない。
 不規則勤務だから、仕事終わってから家に帰って休みたい。
 月1回だけクイズサークルに顔だすのも、結花のことを考えてだ。
 でも家にいるより、働いていたほうがまだ気持ちが紛れる。
 家に帰って休まるどころか、結花の親が待ち構えているんだから。
「分かったわ。浮気はしてないってことね。じゃぁ、私を心配させたから、お小遣い減らすわ」
 結花の発言に悠真は肩を落とす。
 この人何1つ分かっていない。
 一方的な要求ばかりして、相手に与えるということをしない。
「これ以上俺を苦しめるつもりかい? お小遣い減らすって何様だよ? 俺は結花の要求に応えてきた。お義母さんがうちに来てもだまってた。でもな、もう勘弁してよ……せめて1回は俺の話聞いてくれ……」
 悠真の声が弱々しくなる。

 一体この人は俺が働いている間何をしているのだろう。
 すくなくとも家のことは何もしていない。
 家事は全てお手伝いさんに丸投げ。
 毎月来るクレジットカードの請求書を見るたびに青ざめる。10万以上来る。
 ブランド物やランチやエステでお金がかかっている。
 お金の支払いは自分がするとは言ったものの、何でここまで自分が払わないといけないんだろう。
 こんなことをされるために結婚したわけじゃないのに。

「私は働かない! その代わり家のこと頑張るから!」
 結花は悠真の顔に近づけて、上目遣いで訴る。「あー、わ、わかったから……」と白旗をあげた。
 悠真は結花の上目遣いに勝てない。
「さぁ、もう早くねよ。つかれたー」 
「そうだね」
 二人は手を繋いで寝室に向かった。
 やった! やっぱりゆいちゃんの上目遣いには勝てないのよ。あれをやればイチコロよ。
 多分これでひとまず離婚は免れたわ。
 心の中で舌をだして優越感に浸る結花だった。

 その日のSNSに結花は
『夫から働くか家のことするかそうじゃないと離婚するって言われたけど、泣き落とししたら勝ったw』
『私絶対働かないもん!』
 悲劇のヒロインになって同情を買ってもらっていた。
 家族に義理の母が風に煽られて転倒したこと、人がいなくなるので、代わりに出てほしいと言われたことをメッセージアプリに送った。
 母の周子は「うちの可愛い結花ちゃんを働かせるなんて! 明日とっちめて言ってあげる!」と憤慨していた。一方父の明博は「働いたほうがいいと思う。社会のことを知らなさすぎる」と悠真の味方よりであるメッセージが来た。同じく、姉と兄も「働かないのはまずい」と返ってきた。
 やっぱり味方は母だけ。
 一緒に憤慨してくれるし、なんでも言うことを聞いてくれる。
 周りが働けと言っても、夫諦めてくれたから外野はとやかくうるさい。
 私は子どもの頃の夢がようやく叶ったんだから。
 それを満喫するのはどこが悪い?
 専業主婦に妬み。
 私に嫉妬しているバカな人たちね。
 そんなに羨ましい? ねぇ? 夫のお金散財して、好き勝手しているのが?
 母も私を働かせるのは可哀そうと言ってくれる。
 
 ――私、外で働いたら絶対いじめられるもん!

 私が世界一可愛いから、嫉妬で同性に嫌がらせされるのが目に見えている。そんなリスク背負ってまで働きたくない。
 私は自分が気に入った人以外嫌いなの。
 自分勝手や自己中って言われるのは慣れている。
 嫌いなものを徹底的に排除して、全部自分の好きなものに囲まれて生きていくのが当たり前。
 自分以外の可愛い人間がちやほやされるのは見るのに耐えれない。
 ちょっと懲らしめてやりたい感情が走る。
 だって私は世界一可愛いんだから。
 何したって許されるの。
 みーんな私の言うことを聞いて当然なの。
 両親も夫も義理の両親もお手伝いさん達も。

 みんなたまに断る時があるけど、なんだかんだ私がゴネれば言うことを聞いてくれる。
 子どもの頃からそれが当たり前だった。
 異性にはぶりっ子モードでおねだり。
 あっさり聞いてくれるから、それが当たり前だった。
 なにかトラブルに発展しても、実家の名前を出せばあっさり引いてくれる。
 夫もそうだ。少し強く出たりぶりっ子でなーんでも言うことを聞いてくれる。
 惚れた弱みもあるだろう。
 地味そうな夫が世界一可愛い私と結婚なんてそもそも不釣り合いだ。ありがたく思わなきゃ。


 ――私は周りの人の優しさに甘え続ける。

 ――それがいずれ通用しなくなる時が来るかもしれない。その足音が聞こえてくる。
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