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終章

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 妹は呉松家くれまつけの身内でぶっちぎりのトラブルメーカーだ。
 子供の頃から、甘やかされ、自分で何にもやらない。やってもらって当たり前。
 こいつのせいで何回トラブルになったことか。
 昔っから、家におちおち友達を連れて行くのが出来なかった。
 来て貰うのは妹と母がいない日。
 理由は妹が話に割り込んで、友達にからだ。スキンシップと称して、ベタベタ触って、甘やかしてもらおうとトラブルになるリスクが高いからだ。
 実際1回なってしまった。

 高校時代の春休み、実家から通っていた私。
 友人3人つれて、遊びに来て貰った。
 たしか、ゲームやろーぜみたいな感じ。
 妹と母が不在の日を狙って、私の部屋で遊んでいたが、2人が予定より早く帰ってきてしまった。
 妹は靴をみたのか、すぐに私の部屋に来て、邪魔をしにきた。
 友達は呆気あっけにとられるし、私は怒りで邪魔するなと言ったが、無視して、絡みはじめた。

 当時小6の妹は、男子にモテるようになり、同性に威張りくさっていた。
 嫌味を込めて陰で”女王様”や”ゆいが独尊”と呼ばれていた。
 妹の言うことを聞かなかったら、後々嫌がらせを受けるからだ。
 よく気の強い女子や真面目な子とかと喧嘩していた。
 妹の遊び相手は、同級生の男子か近所のお兄ちゃん、同性で唯一の友達が従姉妹の望海のぞみちゃん。あとは、気が弱そうな女子。
 中には、私の中学の後輩や同級生も入っていた。
 共通しているのは、妹の可愛さで甘やかしているタイプ、気が弱いタイプ。
 ただ、大半は、妹がねたら面倒くさいから嫌々言うこと聞いているだけだった。

 あの年頃になれば異性と遊んでいたら、冷やかしやからかいのターゲットになるだけだ。
 まして兄妹きょうだいの友達とすすんで遊ぼうなんて、よっぽどじゃない限り出来ないことだ。
 陰で要注意人物扱いされる。
 妹はそういうのは気にしてないが、自分の兄の友人にちょっかいかけて遊ぼうという考えに至る理由が理解できない。
 そもそも私と遊ぶのが目的なのに、馬鹿妹の”子守”をしにきた訳ではない。

 妹はお構いなく、彼女いるのか、いないのか聞いて、いる子に不満はないのか聞き出して、聞き上手の演技をする。
 さりげなく触りながら、連絡先を探ろうとしていた。
 友人の1人は彼女がいる。その子をターゲットにしていた。
 私は妹を何度も部屋から追い出そうとしたが、無理だった。彼は気にしてないからと言っていたから。
 どのみち無理矢理追やったところで、母に泣きつかれて、こっちが折れるはめになる。
 
 1週間後、妹のターゲットになった友人の彼女から「彼氏がりょうちゃんとこの妹と頻繁にやりとりしていて怪しい」と私に連絡がきた。
 すぐさま妹に問いただしたら、そのときも友人と妹が通話していた。
 夜遅くまで誰かと大きい声でしゃべってる。
 あの甲高い声やしゃべり口調が耳障りで、話の内容なんて覚えてない。いや、覚えたくない。

 当時妹は小学生で母の意向で携帯を持たせていた。
 変な人に襲われたら困るからと。
 子供用ではなくそこらの高校生や大人が持っているのと同じタイプだ。
 色々な人の名前が載っているのだろう。
 妹の電話の相手はだいたい男子か気の弱い女子が付き合わされているだけ。

 誰と電話してるんだと声かけたら、案の定友人だった。
 私が代わると「ゆいちゃんかわいーじゃん。学校でいじめられてるんだって? 兄貴が守ってやれよ。今度気晴らしに遊園地行こうと思うんだけど?」とヘラヘラした口調で返した。
 私は彼女が怪しんでいること、うちの妹と付き合うとからやめとけと釘をさして、問答無用で通話を終了させた。

 妹には、友人には彼女がいること、小学生と高校生が遊園地に遊びに行こうものなら、誤解されかねないからやめろと。

『クソ兄のわりには、いい男がいるから、ついつい連絡先もらっちゃった。学校の悩み聞いて貰ってたら、向こうから電話かけてきたから、ゆいちゃんはそれの相手してやってるだけ。口出すな』

 獣のような目で威嚇していたが、妹の軽率な行動で、せっかく推薦で入れた第一志望の大学に行けなくなるかもしれない、友人の人生をパァにさせる気かと説得したら、泣き出して、母を呼んできた。

『ゆいちゃんの”美しい恋心”を邪魔するのはよしなさい。お兄ちゃんだからそれぐらい許しなさい。いざとなれば、呉松家の名前出せば、相手も頭下げてくれるし、お金もらえるからいいでしょ』

 私が母にあさっての方向の説教をされている姿に、妹はニヤニヤ笑っていた。
 母も世間知らず過ぎて、軽蔑したくなった。あの穏やかな口調が毒々しく、全身に嫌悪が走る。
 毎日、小学生や中学生が、悪い大人に捕まって、色恋沙汰のトラブルがニュースになっているのにも関わらず、この調子だ。
 母としては、娘が変なトラブルに巻き込まれる心配より、”純愛”の言葉で現実から逃げているだけだった。
 家の名前だせば相手も引き下がって、お金を払ってくれるとか訳わからん考えも、気味が悪かった。

 この件で、友人関係に亀裂きれつが入り、友人と彼女は別れてしまった。
 友人には恨まれ、彼女の方からは、こんな妹をあっさり部屋に入れるりょうちゃんが悪いと双方から責められた。
 そして人間関係を壊した妹は友人に飽きて、別の男子と付き合うようになった。

 私が大学進学してから、用事がない限り実家に帰らなくなった。
 帰るとしても母と妹がいない日。
 地元に帰ったって、妹の”悪行”が嫌でも耳に入る。

 同級生が大事にしている杖を壊しただ、彼女いる男子にちょっかいかけた、挙げ句の果てには、婚約者がいる男性教師と関係を持ったなど。いい話を全然聞かない。
 小学校の頃はまだ可愛いねとか、元気だねとポジティブな言葉をちょくちょく聞いた。しかし家では偉そうに威張るし、わがままだからとまだ目をつぶれた。

 小学校高学年以降、同性の女子は妹に対してシビアになる年頃で、いい感情を持っていない子が少なくなかった。
 私の同級生で兄妹が妹と同学年という子達から、ちらほら聞く度にため息しかなかった。
 家に帰って妹と母がいないと安堵している自分がいた。だから基本寝泊まりせず日帰りだ。
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