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第三 覚醒
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真山は奇跡的に一命を取りとめた。生霊になった数だけ魂が削られる。もちろん魂が尽きると、待つのは死あるのみ。
――恐らく後一回、生霊を使えば死ぬかも知れない。
しかし……真山の意思とは関係なく、勝手に飛ぶ生霊を止める術が無かった。
自分が消えてゆく夢で魘され、目が覚めると、そこには泣きすぎて目が真っ赤になった浜家が真山の手を握りしめていた。
「良かった、目が覚めて……」
――そうか俺は、あれから一週間、意識が戻らなかったのか。
「心配かけて、すまなかったな……茉子」
彼女は、しゃがみ込み真山の手を両手で優しく包み『もう無茶しないで下さいね……』と囁き、気が付くと彼女の微かな寝息が真山の心を癒やしていた。
――俺の事が、心配で眠れなかったのだろう……ありがとうな。
目を覚ました真山は上体を起こし、彼女の頭を撫でる。
そこに、扉をノックする音が病室に響いた。
「入りますけどいいっすか……」
その扉を開け病室に入ってきたのは……あの男であった。
「こんにちは真山君、オレは君らと同じ高校、美術科一年の風間一心。……リアルタイムでは、初めてだな」
眠っていた浜家を起こす真山は、彼の用件を聞くように頼む。
「ごめんなさい……瞬は体調が悪く、話す事が厳しいので私が、代わりに用件をお聞きします」
「じゃあ……単刀直入に言うが、これ以上、生霊を使うと真山君は……間違いなく死ぬと伝えてくれないか」
「良くわかりませんが、彼に伝えておきます」
「確か……浜家さんでしたね。後で後悔しない様にきちんと伝えて下さい」
風間の言い方が癪にさわった浜家は、風間に背を向ける。
「別に誇張して言っている訳じゃない。オレの見立てでは、生霊の縛りと回収をしなければ、いずれ確実に死ぬ……」
取りあえず、一心は手紙を浜家に渡し帰っていた。その手紙は元霊能者一心の祖父の連絡先が記されてあった。
それから一週間ほど経ち、何とか動けるまで回復した真山は病院を退院する。
「久々だな……外の空気が、こんなに気持ちが良いとは……」
「瞬……寒くない?」
「あぁ茉子と一緒にいるから温かい……」
「今日……何食べたい」
「そうだなアツアツのおでんが食べてえ……」
そうして二人は行きつけのスーパーに行き、おでんの具を買い帰途につくのであった。
家に着いた彼女は、手慣れた手つきで、おでんの用意をする。
「瞬……おでん、まだ出来ないから先にお風呂入って」
しばらくぶりの湯船は、こごち良く入院の疲れが、さっと消えていく。『あぁ……生き返る』
湯船に浸かりながら真山は、初めて浜家にあった時の事を思い出していた。
「瞬……おでん出来たわよ」
真山と浜家は肩を並べアツアツのおでんを頬張りながら久々の二人での食事を楽しむのであった。
「ありがとな……茉子、お陰で忘れていた家族の温もりを思い出した。本当にありがとな……」
「私こそ、瞬に助けられなければ……もうこの世にいなかった。ありがとう」
真山は……ずっと彼女を見つめながら囁く。
「茉子……お前を一生離したくない」
「ずっと見つめられると照れちゃうよ……」
肩を寄せ合い二人は朝まで、アツアツに過ごしたのであった。
それから数日が経ち、真山は気持ちが落ち着いているのか、処方された安定剤が効いているのか、しばらく生霊になる様な予兆は、無かった。
しかし……怒り、苦しみ、悲しみが交錯する、とある出来事が彼の力をまた発動させるのであった。
――恐らく後一回、生霊を使えば死ぬかも知れない。
しかし……真山の意思とは関係なく、勝手に飛ぶ生霊を止める術が無かった。
自分が消えてゆく夢で魘され、目が覚めると、そこには泣きすぎて目が真っ赤になった浜家が真山の手を握りしめていた。
「良かった、目が覚めて……」
――そうか俺は、あれから一週間、意識が戻らなかったのか。
「心配かけて、すまなかったな……茉子」
彼女は、しゃがみ込み真山の手を両手で優しく包み『もう無茶しないで下さいね……』と囁き、気が付くと彼女の微かな寝息が真山の心を癒やしていた。
――俺の事が、心配で眠れなかったのだろう……ありがとうな。
目を覚ました真山は上体を起こし、彼女の頭を撫でる。
そこに、扉をノックする音が病室に響いた。
「入りますけどいいっすか……」
その扉を開け病室に入ってきたのは……あの男であった。
「こんにちは真山君、オレは君らと同じ高校、美術科一年の風間一心。……リアルタイムでは、初めてだな」
眠っていた浜家を起こす真山は、彼の用件を聞くように頼む。
「ごめんなさい……瞬は体調が悪く、話す事が厳しいので私が、代わりに用件をお聞きします」
「じゃあ……単刀直入に言うが、これ以上、生霊を使うと真山君は……間違いなく死ぬと伝えてくれないか」
「良くわかりませんが、彼に伝えておきます」
「確か……浜家さんでしたね。後で後悔しない様にきちんと伝えて下さい」
風間の言い方が癪にさわった浜家は、風間に背を向ける。
「別に誇張して言っている訳じゃない。オレの見立てでは、生霊の縛りと回収をしなければ、いずれ確実に死ぬ……」
取りあえず、一心は手紙を浜家に渡し帰っていた。その手紙は元霊能者一心の祖父の連絡先が記されてあった。
それから一週間ほど経ち、何とか動けるまで回復した真山は病院を退院する。
「久々だな……外の空気が、こんなに気持ちが良いとは……」
「瞬……寒くない?」
「あぁ茉子と一緒にいるから温かい……」
「今日……何食べたい」
「そうだなアツアツのおでんが食べてえ……」
そうして二人は行きつけのスーパーに行き、おでんの具を買い帰途につくのであった。
家に着いた彼女は、手慣れた手つきで、おでんの用意をする。
「瞬……おでん、まだ出来ないから先にお風呂入って」
しばらくぶりの湯船は、こごち良く入院の疲れが、さっと消えていく。『あぁ……生き返る』
湯船に浸かりながら真山は、初めて浜家にあった時の事を思い出していた。
「瞬……おでん出来たわよ」
真山と浜家は肩を並べアツアツのおでんを頬張りながら久々の二人での食事を楽しむのであった。
「ありがとな……茉子、お陰で忘れていた家族の温もりを思い出した。本当にありがとな……」
「私こそ、瞬に助けられなければ……もうこの世にいなかった。ありがとう」
真山は……ずっと彼女を見つめながら囁く。
「茉子……お前を一生離したくない」
「ずっと見つめられると照れちゃうよ……」
肩を寄せ合い二人は朝まで、アツアツに過ごしたのであった。
それから数日が経ち、真山は気持ちが落ち着いているのか、処方された安定剤が効いているのか、しばらく生霊になる様な予兆は、無かった。
しかし……怒り、苦しみ、悲しみが交錯する、とある出来事が彼の力をまた発動させるのであった。
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