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第一章
四十四話
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クライシスとロゼリアの姿が消えたと知り、すぐに魔力の痕跡を辿るが、残念なことに魔力の痕跡は途中で途切れてしまっていた。まるで神隠しにでもあったみたいだ。これでは追跡が不可能だと判断し、まずはイトナとノアにかかっている魔法を解くことにした。
ベルが魔法を解いている間、ロセウスやアーテル、アルブスには散らかってしまった備品や、椅子や机などを戻してもらっていた。
クライシスが予め魔法を張っていたのか、戦闘中はあれだけ騒音を出していたのに誰も駆けつけてこなかったことをふと思い出す。邪魔をされたくなかっただけなのかもしれないが、ベルからしてみれば先程までの戦闘に巻き込まれる者がいなかったので、その点に関しては良かったと思った。
ノアやイトナの意識が戻ると、ベルはどこまでの記憶があるのかを細かく確認していった。幸い抜けている記憶はどこもなく、魔法は綺麗に解けたようだ。ほっと胸を撫でおろし、ノアとイトナには今日のことを誰かに話すことを固く禁じ、早く休むようにと寮へ帰ることを促した。
陽が沈み、教室内が薄暗くなってくる。下校時刻をすでに過ぎていることもあって、校内は静まり返っていた。
「さて、と」
教室内を見渡せば、三人のおかげで粗方元通りにはなっているが、そうでないもの多々ある。明日も授業があるので、事が大きくならないうちに知らせた方がいいだろう。
「セスはラシード殿とエド殿に、アーテはルークへこのことを知らせてきてほしい。アルは私と細かな掃除ね」
それぞれに指示を出して、知らせに向かったロセウスとアーテルの背を見送ると、アルブスと再び掃除に専念した。
ルークの方は元々仕事で学院内に残っていたようで、数十分ほど経った頃に教室に慌ててソフィとともに駆けつけてきてくれた。
「簡単な説明は聞きましたが、ここまでとは……」
片づけたとはいえ、まだ戦いの跡は残っている。その惨状を目のあたりにして、言葉も出ないようだった。
「ごめんね、ルーク」
不可抗力でロセウスの結界を頼ることができない戦闘となった。仕方がなかったにしても確かに酷い惨状だ。クライシスが放った火によって、教室の扉は焼失し、床や壁、机などにも焦げ跡がついていた。それに最後の竜巻によって、様々な備品が巻き込まれ、一部の物は再使用が不可能なほど壊れている。
素直にベルが頭を下げて謝れば、ルークは慌てて両手を振った。
「頭を上げてください。ベル様のせいではないと聞きましたから。それに私の生徒であるイトナやノアを助けてくださって、本当に感謝をしているんです」
ルークも記憶改ざん魔法『メモリーズテンパー』をかけられた一人だ。『メモリーズテンパー』をかけられたことを知ったのは、ロセウスがロゼリアの契約獣として偽りのパートナーとなる少し前。そのため、ロセウスがロゼリアのパートナーであるという、記憶改ざん魔法を受けることはなかった。しかしその前にかかっていたイトナとロゼリアが入れ替わった件については魔法を解いていなかったので、入れ替わりが真実だと調べているうちに判明しても、実感は沸かなかったはずだ。
しかしルークの言葉を聞く限り、その魔法は解けているようだった。ルーク以外の生徒や教師にかけられた魔法が解けたかどうかについては、明日以降に調べるしかないだろう。
精神攻撃魔法は、魔法を使用した本人の意志で解くか、死亡したりしない限り、解けることはない。ベルのような膨大な魔力を持っていない限り、他者でも解くことは難しいはずだ。考えられることとすれば、クライシスがロゼリアを亡き者にしたという事だが、わざわざロゼリアを連れ去っていったのだ。亡き者にしたという考えは、まず除外していいだろう。
ロゼリアの件は置いておくことにして、後から遅れてやってきたラシードとも話をし、生徒の契約獣の魔法が失敗して、教室が一時的に使用不可能となったとすることとした。その際にラシードにイトナの事を尋ねてみたのだが、やはり記憶が戻っているようだった。けれど記憶が戻ってはいても、ルークの記憶の戻り方に違いがあった。
ルークはロゼリアとイトナが入れ替わっていた時の記憶があり、同時に魔法にかかっていたのだと自覚もあった。ラシードはロゼリアとイトナが入れ替わっていた時の記憶はなく、ずっとノアのパートナーはイトナだったという謎の記憶改ざんが行われていた。また改ざん魔法がかかっているのかと、魔力を流してみたが記憶の変化は起こらなかった。結果、これは記憶の改ざんではなく、負担がかからないように脳が記憶の辻褄合わせをしたのではないかという推測が生まれる。しかし推測は推測でしかないので、何人かの話を聞く必要があるだろう。
ラシードにあとは任せるようにと言われたが、その検証のためにもまた明日来ると告げ帰宅することにした。
ベルが魔法を解いている間、ロセウスやアーテル、アルブスには散らかってしまった備品や、椅子や机などを戻してもらっていた。
クライシスが予め魔法を張っていたのか、戦闘中はあれだけ騒音を出していたのに誰も駆けつけてこなかったことをふと思い出す。邪魔をされたくなかっただけなのかもしれないが、ベルからしてみれば先程までの戦闘に巻き込まれる者がいなかったので、その点に関しては良かったと思った。
ノアやイトナの意識が戻ると、ベルはどこまでの記憶があるのかを細かく確認していった。幸い抜けている記憶はどこもなく、魔法は綺麗に解けたようだ。ほっと胸を撫でおろし、ノアとイトナには今日のことを誰かに話すことを固く禁じ、早く休むようにと寮へ帰ることを促した。
陽が沈み、教室内が薄暗くなってくる。下校時刻をすでに過ぎていることもあって、校内は静まり返っていた。
「さて、と」
教室内を見渡せば、三人のおかげで粗方元通りにはなっているが、そうでないもの多々ある。明日も授業があるので、事が大きくならないうちに知らせた方がいいだろう。
「セスはラシード殿とエド殿に、アーテはルークへこのことを知らせてきてほしい。アルは私と細かな掃除ね」
それぞれに指示を出して、知らせに向かったロセウスとアーテルの背を見送ると、アルブスと再び掃除に専念した。
ルークの方は元々仕事で学院内に残っていたようで、数十分ほど経った頃に教室に慌ててソフィとともに駆けつけてきてくれた。
「簡単な説明は聞きましたが、ここまでとは……」
片づけたとはいえ、まだ戦いの跡は残っている。その惨状を目のあたりにして、言葉も出ないようだった。
「ごめんね、ルーク」
不可抗力でロセウスの結界を頼ることができない戦闘となった。仕方がなかったにしても確かに酷い惨状だ。クライシスが放った火によって、教室の扉は焼失し、床や壁、机などにも焦げ跡がついていた。それに最後の竜巻によって、様々な備品が巻き込まれ、一部の物は再使用が不可能なほど壊れている。
素直にベルが頭を下げて謝れば、ルークは慌てて両手を振った。
「頭を上げてください。ベル様のせいではないと聞きましたから。それに私の生徒であるイトナやノアを助けてくださって、本当に感謝をしているんです」
ルークも記憶改ざん魔法『メモリーズテンパー』をかけられた一人だ。『メモリーズテンパー』をかけられたことを知ったのは、ロセウスがロゼリアの契約獣として偽りのパートナーとなる少し前。そのため、ロセウスがロゼリアのパートナーであるという、記憶改ざん魔法を受けることはなかった。しかしその前にかかっていたイトナとロゼリアが入れ替わった件については魔法を解いていなかったので、入れ替わりが真実だと調べているうちに判明しても、実感は沸かなかったはずだ。
しかしルークの言葉を聞く限り、その魔法は解けているようだった。ルーク以外の生徒や教師にかけられた魔法が解けたかどうかについては、明日以降に調べるしかないだろう。
精神攻撃魔法は、魔法を使用した本人の意志で解くか、死亡したりしない限り、解けることはない。ベルのような膨大な魔力を持っていない限り、他者でも解くことは難しいはずだ。考えられることとすれば、クライシスがロゼリアを亡き者にしたという事だが、わざわざロゼリアを連れ去っていったのだ。亡き者にしたという考えは、まず除外していいだろう。
ロゼリアの件は置いておくことにして、後から遅れてやってきたラシードとも話をし、生徒の契約獣の魔法が失敗して、教室が一時的に使用不可能となったとすることとした。その際にラシードにイトナの事を尋ねてみたのだが、やはり記憶が戻っているようだった。けれど記憶が戻ってはいても、ルークの記憶の戻り方に違いがあった。
ルークはロゼリアとイトナが入れ替わっていた時の記憶があり、同時に魔法にかかっていたのだと自覚もあった。ラシードはロゼリアとイトナが入れ替わっていた時の記憶はなく、ずっとノアのパートナーはイトナだったという謎の記憶改ざんが行われていた。また改ざん魔法がかかっているのかと、魔力を流してみたが記憶の変化は起こらなかった。結果、これは記憶の改ざんではなく、負担がかからないように脳が記憶の辻褄合わせをしたのではないかという推測が生まれる。しかし推測は推測でしかないので、何人かの話を聞く必要があるだろう。
ラシードにあとは任せるようにと言われたが、その検証のためにもまた明日来ると告げ帰宅することにした。
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