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第二章

三十話 

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 深夜零時に眠りにつくとアクアと約束した。一見それは意味があるかもよく分からない約束だが、ニードやアクアがヴァイオレットの召喚獣、ムース・ベェールの夢見の魔法を知っていることを前提にすれば、それは深い意味を持つ。

 ベルたちは水鏡でアクアと会話をしたあと、バーベキューの片付けをして早々に解散した。ただこれから四人で交わるのだと、公言されてしまったベルは片付けの間、恥ずかしくて仕方がなかった。コーディリアが睨みを効かせてくれたおかげでラヴィックからの冷やかしこそなかったが、トトーやエリオットから同情の視線が送られてくるのだけはいただけない。

 全員が帰ったあとに、ロセウスたちに文句を言えば、笑顔で躱されてしまった。

「皆が帰ったあとにこれを出すと約束しただろう?」

 そう言ってロセウスが指さしたのは、自身の頭上。そこにはベルが大好きな獣の耳が鎮座していた。耳と同時に尻尾も出現しており、そのもふもふを触りたくて堪らなくなる。

「で、でも、出してくれるのと、夜のことに何が関係あるの?」

「関係大ありだぜ、お嬢」

「お嬢は存分に俺たちの耳や尻尾を触れる。俺たちはお嬢と気持ちよくなれる。一石二鳥な話だろう?」

 そう来たか、とベルは心の中で突っ込まずにはいられなくなった。

「てこでお嬢、早く風呂に入らなくていいのか? 話しているうちに時間が無くなるぞ?」

「うー……、あーもう、わかったよ! お風呂、入ってきます!!」

 ロセウスたちに今日はやらないという選択肢はなさそうな上に、このままお風呂に入らず抗議していても、無駄に時間を消費するだけだ。風呂に入らずベッドに潜り込むのは嫌だし、何より行為をするせいで約束した時間に遅れるのだけは避けたい。そうなるとベルの選択肢は一つしかなかった。

 三人に笑顔で見送られながら、リビングを後にして、すでに湯を張ってあった浴槽につかる。湯の中に半分顔を浸からせ、ぶくぶくと息を吐く。

(ケモ耳、好きだけども! 大好物だけども!!)

 欲に負けてしまう自分が情けない。それになんだかんだ、ベルも三人と体を合わせることが好きだった。三人の愛を直に感じ取れるからだ。だからそれを否定することを、ベルができるはずもなかった。

(あーもう、開き直ろう!!)

 ラヴィックたちにこれから体を合わせることはばれている。しかも体を合わせたあとに夢見で会う約束までしている。もう、逃げ道などはないのだ。こうなれば開き直るしか方法はない。ベルは浴槽から出ると、体や髪をさっと洗っていつもの寝間着に着替えた。

 ベルがリビングへと顔を出せば、濡れたままの髪をロセウスが丁寧な触り方で髪を乾かしてくれた。その間にアーテル、アルブスの順で風呂に入ったようで、乾かし終えたロセウスが最後に入るようだ。

 すでに耳と尻尾を出してくれているアーテルとアルブスに大きいベッドのある寝室へと連れていかれる。

「ベルの体力を、ちゃんと残しておいておくれよ」

「それはお嬢次第だな」

「早くロセウスも参戦しにこいよ」

 その際に三人が言葉を交わしていたが、果たしてベルの体力は持つのかと若干不安に思えてくる。昼間にトトーの魔法で体を癒してもらったが、これでは逆戻りしそうだ。

 寝室に入って、ベッドにベルを座らせるなり我慢できないとでもいうように、アルブスが噛みつくような乱暴なキスをしてきた。それを受け止めるように、アルブスの頭に手を回す。回したときに、アルブスの耳に手が触れ、ピクンと動くのが伝わってきた。それが面白くてキスの最中に何度か耳の付け根をくすぐる。

 耳がピクンと動くたびに、なぜかキスが不思議と深くなっていくから不思議だ。そう感じていると、ようやく唇を離したアルブスが頬を赤らめながら、忠告をしてきた。

「お嬢、耳の付け根を触るのはいいが、ほどほどにな。我を忘れても責任はとらないぞ?」

「え? なんで?」

 耳を触ることと我を忘れること、何が関係あるのだろうか。

「あーそういうことか」

 後ろを振り返ると、自身の耳と尻尾の付け根を触り、納得した表情のアーテルがいた。

「昼間、お嬢はロセウスの耳の付け根を触ったりしたか?」

「ううん。ただ単に抱きついただけ。獣化してもらってるときは触ったりしてたけど」

「だからロセウスも気づいてなかったんだな。お嬢、この姿を保ってるときは五感が鋭くなるって話はしただろ?」

「うん」

「実は五感だけじゃなかったんだ。この姿の時だけなぜか耳と尻尾の付け根を触られると」

「触られると?」

「ここを触られてるみたいに、気持ちよくなる」

 そういって、ベルの手をアーテルは自身の下半身に触れさす。そこはまだ柔らかい状態の陰茎がある場所だった。
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