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ケース3 山奥の事故物件【プロローグ】
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「簡素な鍵――ですか。でも、一概に簡素って言っても色々ありますよね?」
一里之が問うと、やや面倒そうに鯖洲は答える。
「俺が持ってる資料を見れば一発なんだかな。あれだよ。閂だよ。閂。受け皿が内側にあって、そこに閂を通して鍵をかけるわけだ」
閂などという鍵の形状は、もう見なくなって久しい。一里之も小さい頃、家の庭にあった蔵に閂の錠があったのを見たことがある。しかしながら、後にも先にも閂の錠を見たのはそれ一度きりだ。
「……ちょっと待ってください。閂ってことは――どちらか一方からしか施錠できませんよね? もちろん解錠もできませんけど」
閂が使われていたとすると、施錠が可能だったのは内側か外側かのいずれしかない。今のように、鍵さえあれば、内側でも外側でも開けることができるわけではない。
「あぁ、当然だが閂は内側からしかかけることができなかったらしい。大体、外から閂をかけることができるなら、密室にはならねぇしな」
確かに鯖洲の言う通りだ。外側に閂があるのならば、外から施錠をして立ち去ってしまえばいい。密室として成立するのは、内側からしか施錠ができなかった場合に限られる。
「今回の事件は警察も他殺だと断定している。それなのに、事件はいまだに解決できておらず、迷宮入り一直線だ。まぁ、事件解決だなんてめでたいことはニュースで報道しても、事件の迷宮入りはわざわざ報道しねぇからな。世の中が知らないだけで、案外こういう未解決事件は多いんだろうな」
ナビに従って車を走らせていると、どうやら高速に乗るようだ。
「心配すんな。この車にETCなんて面倒なもんはつけてねぇよ。お前の会社の経費持ちで高速に乗れるように配慮してやってんだよ」
今時、ETCは標準装備のようなものであるが、鯖洲の車にはついていないらしい。確かに、ここは会社の経費持ちにすべきだが、配慮をしてもらっているような感じがしないのは、なぜなのだろうか。
高速道路は平日ということもあって空いている。空いてはいるが、慣れない高級車に乗っているということもあり、そこまでスピードは出せない。左車線で、前の車の後ろを走るのが精一杯だった。それなのに、助手席の鯖洲は「前の車がとろい」とか「いっそ追い越せ」など、困った要求を並べ立てる。ぶつけたり事故を起こしても構わないならやるが、しかし一里之は苦笑いでごまかしつつ、前の車の後ろを、ゆっくりと追いかけた。
一里之が問うと、やや面倒そうに鯖洲は答える。
「俺が持ってる資料を見れば一発なんだかな。あれだよ。閂だよ。閂。受け皿が内側にあって、そこに閂を通して鍵をかけるわけだ」
閂などという鍵の形状は、もう見なくなって久しい。一里之も小さい頃、家の庭にあった蔵に閂の錠があったのを見たことがある。しかしながら、後にも先にも閂の錠を見たのはそれ一度きりだ。
「……ちょっと待ってください。閂ってことは――どちらか一方からしか施錠できませんよね? もちろん解錠もできませんけど」
閂が使われていたとすると、施錠が可能だったのは内側か外側かのいずれしかない。今のように、鍵さえあれば、内側でも外側でも開けることができるわけではない。
「あぁ、当然だが閂は内側からしかかけることができなかったらしい。大体、外から閂をかけることができるなら、密室にはならねぇしな」
確かに鯖洲の言う通りだ。外側に閂があるのならば、外から施錠をして立ち去ってしまえばいい。密室として成立するのは、内側からしか施錠ができなかった場合に限られる。
「今回の事件は警察も他殺だと断定している。それなのに、事件はいまだに解決できておらず、迷宮入り一直線だ。まぁ、事件解決だなんてめでたいことはニュースで報道しても、事件の迷宮入りはわざわざ報道しねぇからな。世の中が知らないだけで、案外こういう未解決事件は多いんだろうな」
ナビに従って車を走らせていると、どうやら高速に乗るようだ。
「心配すんな。この車にETCなんて面倒なもんはつけてねぇよ。お前の会社の経費持ちで高速に乗れるように配慮してやってんだよ」
今時、ETCは標準装備のようなものであるが、鯖洲の車にはついていないらしい。確かに、ここは会社の経費持ちにすべきだが、配慮をしてもらっているような感じがしないのは、なぜなのだろうか。
高速道路は平日ということもあって空いている。空いてはいるが、慣れない高級車に乗っているということもあり、そこまでスピードは出せない。左車線で、前の車の後ろを走るのが精一杯だった。それなのに、助手席の鯖洲は「前の車がとろい」とか「いっそ追い越せ」など、困った要求を並べ立てる。ぶつけたり事故を起こしても構わないならやるが、しかし一里之は苦笑いでごまかしつつ、前の車の後ろを、ゆっくりと追いかけた。
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