ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース3 山奥の事故物件【出題編】

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「なぁ――俺はもうお嬢に付き合って数年になるんだが、いつまでこの仕事ができるんだろうなぁ。金はかなりの額をもらってるんでね。細く長く続いて欲しいんだが」

 喫煙者同士というのは、妙な親近感が生まれるものだ。特に肩身が狭くなった最近ならばなおさらだ。鯖洲がぽつりと本音を漏らしたのも、一里之に対する親近感が湧いたからなのかもしれない。

「それは分かりませんけど……俺、ちょっと調べてみたんです。お嬢様の近辺で起きた事件について」

 コトリは姉を亡くしている。そして、その姉が発見されたところが事故物件だったがゆえに、彼女は事故物件に固執するようになってしまった――と一里之は思っている。

「あんまり、お嬢の前でその話には触れんなよ。もちろん、本人に問い質そうなんてもってのほかだ。世の中、知らなくていいことは山ほどあって、お嬢が事故物件に固執する理由も、その知らなくていいことの一角にすぎない。お嬢のお世話係を続けたいなら、そのことには触れるなよ。実際、お前の2人前のやつは……」

 そこで見計らったかのごとく鯖洲がむせた。煙草の煙がおかしなところに入ってしまったのだろうか。それにしても唐突というか、あまりにもわざとらしいように見えた。

「玄界灘。そろそろいいか? さすがにもう着替えも終わってるだろうよ」

 玄関先をがっちりガードしている冥のほうに視線をやる鯖洲。冥は「確認して参ります」とだけ残すと、山荘の中へと姿を消した。

 コトリの姉の事件。図書館で調べられることには限度があり、どこかのタイミングで鯖洲か冥に詳しく話を聞こうと思っていたのだが、しかし今日は難しいらしい。何よりも、少し離れたところで一里之達のやり取りに耳を傾けていた寺山の顔が怖かった。コトリの運転手として近くにいるだけに、何か知っているのかもしれない。もちろん、だからといって本人に聞くような真似はできないが。

「もう大丈夫です。どうぞ、中に」

 コトリの姿を確認してきたのであろう。ようやく山荘に入る権利が男性陣に与えられた。とりあえず荷物をどこかに置いて、シャワーが無理ならば体を拭く程度のことはしたい。

 玄関から中に入ると、まずその空間は談話室だったに違いない。暖炉のある広間が一里之達を出迎えた。階段の下にカウンターらしきものがあり、おそらくそこが受付カウンターになるのだろう。錆びついた呼び鈴がカウンターに寂しそうに佇んでいた。
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