ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作

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ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】

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【3】

 斑目も面会に来てくれたし、きっといずれはここから解放されるはずだ。自らを奮い立たせながら、決して外へは出ることのできない窓から月を眺める。普段の習慣があるせいか、ここの就寝時間はいささか早すぎる。もっとも、規則正しい生活をするのであれば、これくらいの時間に寝るのがベストなのであろうが。

 慣れるものだと思っていたが、やはり見ず知らずの――しかも、少なからずとも犯罪を犯したであろう人間と布団を並べるというのは、どうにも慣れはしない。特別、何かをされるというわけではないのだが、一里之の神経は時間が経つにつれて摩耗し、そして消耗されていた。

 あとどれくらい待てばいいのか。斑目まで駆けつけてくれたのだから、時間の問題だとは思いたい。

 周囲の人間はすっかりと寝静まっている。ただ、一里之の隣に布団を敷く男がだけは違ったらしい。この男、それこそ今朝になって留置場に入ってきたばかりの男だった。

「お兄さん、眠れないみたいですねぇ」

 正直、これが男の放った第一声だった。今朝から誰とも口を利かずにいたはずなのに。こちらが話しかけようにも無視をするものだから、喧嘩っ早い同室の人間と喧嘩になりかけた。仲裁する身にもなって欲しい。

「まぁ、慣れないんで」

 相手の声量に合わせて、こちらも声量を絞る。

「そういえばお兄さん、窓辺野不動産の方なんですってね」

 そんなことを、この男に話した覚えはなかった。いいや、他の人と会話をする際に、相手側が会社の名前を出していたから、それを聞いていたのだろう。

「まぁ、そうですけど――ご存じです?」

 目を閉じたところで、どうやらしばらく眠れそうにない。ならば、少しくらい会話に付き合ってやってもいいだろう。そんな軽い気持ちで一里之はかえす。すると、とんでもない事実が男の口から飛び出した。

「知ってるもなにも。いやね、今はこんなに落ちぶれちゃいましたがね、過去にそちらの社長さんの屋敷に雇ってもらっていたんですよ」

 こちらのリアクションも待たずに喋り続ける男。本当ならば、驚きの声の一つくらい上げてやるべきなのかもしれないが、そんな余裕はなかった。

「あ、本当ですか?」

 結局、取ることができたリアクションは、ごくごく当たり障りのないものになってしまった。いやいや、こんなところで窓辺の家と縁のある人間と会えたのだ。周囲が寝静まっていなければ、それなりにオーバーなリアクションを見せたのかもしれない。
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