352 / 391
ケース5 誕生秘話は惨劇へ【解決編】
69
しおりを挟む
冥が鯖洲に付き添う形で院内へと入っていく。さすがに緊急搬送口から大所帯で中に入るわけにはいかない。
「ここだと危険かもしれません。どこか建物の中が好ましいのですが――あ、あそこにしましょうか」
病院の斜向かいに、こぢんまりとした喫茶店のようなものがあった。看板は出ているが、ぱっと見た感じ営業しているか否かも怪しいような喫茶店。隠れ家として使うには、もしかすると下手に人が多いファミレスよりもいいのかもしれない。
斑目が先導をし、喫茶店のほうへと向かう。道路を渡るだけなのに、随分と斑目は周囲を警戒していた。
道路を渡ると、なかば小走りで喫茶店へと向かった斑目。扉を開け、営業しているかを確認したのであろう。こちらに向かってオッケーサインを出してきた。コトリと千早も喫茶店へと向かう。
喫茶店の中は外界から遮断されていた。カーテンの隙間から外の光は入るものの、随分と店内は薄暗い。ただ、小さくジャズミュージックらしき音楽が流れており、それらを含めると雰囲気は悪くない。
「とりあえずコーヒーでもいただきましょうか」
斑目がテーブルに座り、千早とコトリが対面になる形で着席する。お冷やを出してくれた、癖のありそうなマスターにコーヒーを頼む斑目。
「それで、さっきの話の続きは?」
やや落ち着いた空間に入ったものの、コトリの心中は穏やかではなかった。なぜゆえに自分が狙われてしまうのか。なぜ、こんなことになっているのか。分からないことが多すぎる。
「えぇ、どこまで話しましたっけ? あ、とにかく過去の事件を引っ張り出してしまったからこそ、あなたは命を狙われているのです」
なかなか本質的な部分に触れてくれない。まるで、わざとそこに触れることを避けているようにも感じられた。それは、きっと事情を知っているであろう千早も感じたのか、小さく咳払いをした千早が代わりに口を開いた。
「窓辺野さん。あなたはこれまで、会社を通じて事故物件を確保し、そこで起きた未解決事件を解決するということを繰り返してきました。しかも、社員である一里之君まで動員してです。くわえて、玄界灘さんと鯖洲さんまで、給与を出して雇っている。これを、なぜ会社が――いえ、あなたのお父様がお許しになっていたのでしょうか」
それは、昔からわがままをなんでも聞いてくれた父だから。ぱっと思いつくのはそれくらいだったのであるが、しかし千早の口からは意外な言葉が飛び出した。
「それは、あなたが過去の事件に触れると困るからです。だから、あなたのわがままは聞き入れられたし、会社を私的な理由で使っていても、許されていたのです」
「ここだと危険かもしれません。どこか建物の中が好ましいのですが――あ、あそこにしましょうか」
病院の斜向かいに、こぢんまりとした喫茶店のようなものがあった。看板は出ているが、ぱっと見た感じ営業しているか否かも怪しいような喫茶店。隠れ家として使うには、もしかすると下手に人が多いファミレスよりもいいのかもしれない。
斑目が先導をし、喫茶店のほうへと向かう。道路を渡るだけなのに、随分と斑目は周囲を警戒していた。
道路を渡ると、なかば小走りで喫茶店へと向かった斑目。扉を開け、営業しているかを確認したのであろう。こちらに向かってオッケーサインを出してきた。コトリと千早も喫茶店へと向かう。
喫茶店の中は外界から遮断されていた。カーテンの隙間から外の光は入るものの、随分と店内は薄暗い。ただ、小さくジャズミュージックらしき音楽が流れており、それらを含めると雰囲気は悪くない。
「とりあえずコーヒーでもいただきましょうか」
斑目がテーブルに座り、千早とコトリが対面になる形で着席する。お冷やを出してくれた、癖のありそうなマスターにコーヒーを頼む斑目。
「それで、さっきの話の続きは?」
やや落ち着いた空間に入ったものの、コトリの心中は穏やかではなかった。なぜゆえに自分が狙われてしまうのか。なぜ、こんなことになっているのか。分からないことが多すぎる。
「えぇ、どこまで話しましたっけ? あ、とにかく過去の事件を引っ張り出してしまったからこそ、あなたは命を狙われているのです」
なかなか本質的な部分に触れてくれない。まるで、わざとそこに触れることを避けているようにも感じられた。それは、きっと事情を知っているであろう千早も感じたのか、小さく咳払いをした千早が代わりに口を開いた。
「窓辺野さん。あなたはこれまで、会社を通じて事故物件を確保し、そこで起きた未解決事件を解決するということを繰り返してきました。しかも、社員である一里之君まで動員してです。くわえて、玄界灘さんと鯖洲さんまで、給与を出して雇っている。これを、なぜ会社が――いえ、あなたのお父様がお許しになっていたのでしょうか」
それは、昔からわがままをなんでも聞いてくれた父だから。ぱっと思いつくのはそれくらいだったのであるが、しかし千早の口からは意外な言葉が飛び出した。
「それは、あなたが過去の事件に触れると困るからです。だから、あなたのわがままは聞き入れられたし、会社を私的な理由で使っていても、許されていたのです」
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ボクとセンセイの秘密
七町 優
恋愛
高校2年のボクと24歳のセンセイの秘密を描いたストーリーです。
タイトルで分かるとは思うのですが、恋愛ストーリーです。
一応登場人物たちのいる学校は関西という設定です。
なので関西弁での会話が多くなります。
ボクとセンセイの濃いような淡いような恋愛ストーリーをお楽しみください。
呪われた少女の秘された寵愛婚―盈月―
くろのあずさ
キャラ文芸
異常存在(マレビト)と呼ばれる人にあらざる者たちが境界が曖昧な世界。甚大な被害を被る人々の平和と安寧を守るため、軍は組織されたのだと噂されていた。
「無駄とはなんだ。お前があまりにも妻としての自覚が足らないから、思い出させてやっているのだろう」
「それは……しょうがありません」
だって私は――
「どんな姿でも関係ない。私の妻はお前だけだ」
相応しくない。私は彼のそばにいるべきではないのに――。
「私も……あなた様の、旦那様のそばにいたいです」
この身で願ってもかまわないの?
呪われた少女の孤独は秘された寵愛婚の中で溶かされる
2025.12.6
盈月(えいげつ)……新月から満月に向かって次第に円くなっていく間の月
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる