BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

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宮垣という名の街【開始〜午後1時】

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 大気が燃え上がり、辺りに熱風が放たれる。春日は慌てて右腕で顔をかばい、呆然とショルダーバッグが燃え尽きるさまを眺めることしかできなかった。玄関先に設置されていた【トラッペ君】は、炎に巻き込まれて燃えてしまったようだ。

 ショルダーバッグが燃え尽きる頃になって、春日はようやく我を取り戻した。まだ心のどこかで冗談だと思っていたのかもしれない。何かの間違いだと思っていたのかもしれない。明らかに記憶の欠如があり、恐らくは拉致されてここにやって来たであろうに、まだどこかで信じていなかったのだ。だから、あっさりと罠が作動したことに驚くと共に、もし自分がそこにいたらと考えてゾッとした。

 恐らくであるが、罠は物体が一定の地面に触れた際に作動するようになっていたのであろう。噴霧された何かしらは、恐らく可燃性の液体。小さく走った雷光は、きっと静電気が発生したのだと考えられる。可燃性の液体が何であるかまでは春日にも分からないが、簡単に例えるのであればライターと同じような原理で、ショルダーバッグは燃えてしまったようだ。

 春日は膝が震えていることに気づいて苦笑いを浮かべた。これは、もはや本能レベルでの反応だ。この街は簡単に罠が作動して、簡単に人が死ぬ。日常から隣り合わせだったはずの死が、さらに身近に感じられた。認めたくはなかったが、春日は恐れていることを認めざるを得なかった。ふと、その時のことである。

「おーい、無事か!」

 通りの向こうから男の声がした。春日は体がすっかり硬直してしまっているのを隠すかのように、首だけを声のしたほうへと向ける。視線の先には春日のほうへと向かってくる男の姿があった。遠目ながらも、金色に染めた髪が目立つ。その背格好からしてチャラチャラとした大学生くらいの男だろう。普段ならば決して関わることのないようなタイプだが、春日は不覚にも安堵の溜め息を漏らした。

 春日は基本的に人間という存在が嫌いである。それは自分自身という存在を含めてだ。他人は何を考えているか分からない。平気で心にも思っていないことを口するし、本当に言いたいことは心の奥底にしまい込んで言わない。決定的なのは、きっと心の中を把握するすべが存在しないからなのだろう。そんな春日でさえ、この時の他人の接触ばかりは嬉しく思えた。

「良かったぁ。ここまで誰とも会わなかったからさ」

 金髪の男は春日のそばにやってくると、両膝に手を置いて大きく息を吐き出した。春日と同じく安堵の溜め息というやつだろう。
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