BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

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わがまま姫とそれが不愉快な仲間達【午後1時〜午後2時】

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 比嘉に支給された物資――それこそが折りたたみ式のバタフライナイフだった。それを取り出して刃を出すと苗場兄弟のほうへと突きつける。比嘉と苗場兄弟との間には距離があったものの、苗場兄弟は明らかにひるみ、おののいていた。もしかすると、バタフライナイフの刃ではなく、うっかり本音を漏らしてしまった比嘉に畏怖いふの念を抱いているのかもしれない。

 比嘉からすれば当たり前のことを言ったまでのこと。指標となる【トラッペ君】よりも人間の死体のほうが遥かに大きいし目印になる。でもきっと、周りから見れば残酷なことを言っているのだろう。

 祖父が他界した時、比嘉は特に悪気もなく、息を引き取った祖父のことをタンパク質の塊と呼んだ。本人は死んでしまっているわけだし、そんなことを言われていることさえ認識することはできない。それに、機能を失ってしまった人間の殻は、数日もすれば腐ってしまうタンパク質の塊であることも間違ってはいない。けれども、父親にはこっぴどく殴られたし、母は心配して比嘉を病院に連れて行こうとする始末。結局、病院行きは回避できたが、どこか考え方が他人とは違うということは、幼い頃から比嘉自身が自覚していたことだった。

 比嘉には分からない。事実を口にすることの何がいけないのか。どうして自分が残酷だと言われるのか。他人との共感性を決定的に欠いている自覚のない比嘉には――きっと死ぬまで理解できないのだろう。いや死んでも理解できない。頭では理屈が分かっているから、日常生活では、それなりに演じることはできる。だが、苗場兄弟に対してその必要はない。だからこそ遠慮なくバタフライナイフを突きつけたわけだが。

「はっきり言ってやるよ。お前ら臭ぇんだよ。喋る度に下水みたいな臭いを撒き散らしやがってよ。同じ空気を吸いたくねぇんだよ。こいつでぶっ刺されたくなかったら、今すぐに俺の視界から消えろよ。一応【固有ヒント】は共有できたし、もうお前らに用はない」

 完全に比嘉に頼るつもりでいたであろう苗場兄弟だって、こうも手の平をいきなり返されてしまったら、さすがに頼ろうとは思わないであろう。なんせ、頼るべき存在から危害を加えかねない危険人物へと、彼らの中では姿を変えたのだろうから。

 苗場兄弟はお互いに顔を見合わせると、ショルダーバッグを抱え込むようにして拾い上げる。そして、比嘉の様子を伺うかのようにして後退った。動きが見事なまでにピッタリなのは、やはり双子だからなのか。
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