BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

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頑固親父と全く笑えない冗談【午後2時〜午後3時】

頑固親父と全く笑えない冗談【午後2時〜午後3時】1

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【午後2時15分 瀬戸晴美 地下道】

 もう一歩も歩きたくなかった。先ほど告げられた犠牲者のアナウンスと、地下という状況下であるのに、しっかりと転送されていた【固有ヒント】は、死者の断末魔なのだろうか。ルールに従って行われたアナウンスは、しかし彼女の神経を逆なでるには充分だった。

 そこそこの大学を出て、小学校の教師になった。後は経済力のある男でも捕まえて、最終的には周囲から羨まれるセレブになる――これが彼女の人生計画であって、罠が張り巡らされているという街の、しかも地下道らしきところを散策するなんてプランは微塵も組み込まれてはいなかった。

「さて、嬢ちゃん。落ち込んでる暇はない。出発するぞ」

 アナウンスが流れたおかげで歩みを止めていた西宮が、晴美から習って操作を覚えたSGTを片手に言う。

 疲れた。歩きたくない。面倒くさい。どうして自分ばかりがこんな目に遭わなければならないのか。様々な不満が収束して向かう先は――残念ながら同じ境遇に身を置いている西宮だった。八つ当たりなのは晴美自身が知っていた。苛立ちをどこかにぶつけるかのごとく、思う存分叫んでやった。

「喉乾いた! お腹空いた! お風呂入りたい! お化粧も直したい!」

 西宮は決して悪い人ではない。山男のようにたくわえた髭と熊のような風体はしているが、なんだかんだと晴美のことを気遣ってくれていた。そして、なによりも西宮が【ブービートラップ】ではないと確信できていたことが、西宮を信用する指針になったのだろう。その信用の裏返しが、めちゃくちゃなわがままのつもりだ。信頼できない人間には、さすがの晴美もここまでのわがままは言わない。

 ――西宮は【ブービートラップ】ではない。根拠は彼の【固有ヒント】である。彼のヒントは【ブービートラップ】の【固有ヒント】が偽物であるというもの。ここで仮に西宮のカードが本物だと仮定する。つまり【ブービートラップ】の【固有ヒント】が偽物であると定義する。そうすると、本物の【固有ヒント】を有している西宮は【ブービートラップ】ではないという方程式ができあがるのだ。

 逆に西宮の【固有ヒント】が偽物だったとする。西宮の【固有ヒント】は晴美の【固有ヒント】とは違い、どちらか一方を否定すると、どちらか一方が肯定されるという性質を持つ。つまり【ブービートラップ】の【固有ヒント】は、本物か偽物かの二択しか存在せず、西宮の【固有ヒント】が偽物であれば、自動的に【ブービートラップ】の【固有ヒント】は本物だということになってしまう。
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