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狂気には凶器を【午後4時〜午後5時】

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『クッキーノ入ッタ袋ガ5ツアル。クッキーハ1枚ニツキ10グラムトイウ決マリがアッタノダガ、ウッカリシテ1枚ニツキ9グラムノクッキーヲ作ッテシマイ、袋詰メシテシマッタ。ソノ結果、5ツノ袋ノ内、1ツノ袋ノ中ノクッキーガ、10グラムデハナク9グラムトイウ形ニナッテシマッタ。チナミニ、袋ニ入ッテイルクッキーノ枚数ハ袋ゴトニ異ナリ、ソレゾレ何枚入ッテイルカハ分カラナイ。サテ、9グラムノクッキーノ入ッタ袋ヲ、計量器ニ乗セテ調ベタイ。最小デ計量器ヲ何度使エバイイダロウカ? ナオ、運ノ要素ナドハ含マナイモノトスル』

 思わずメモが必要になりそうなほどの長文問題。クイズ――というよりも、実にロジカルチックな印象を受けたのは、きっと水落の気のせいではないだろう。

『目の前ノタグニ番号ガ振ッテアル。計量器ヲ最小デ何度使エバイイノカ。正シイト思ウモノヲ切レ。正シイ答エヲ導キ出シタ時、ソノ拘束カラモ解放サレルダロウ』

 人間がリアルタイムで喋っているような滑らかさで、けれどもどこか機械音的な雰囲気を残す【トラッペ君】は、ケタケタと笑い出した。

「もうそれは何度も聞いたよぉ。もう勘弁してくれよぉぉぉ」

 頭を抱える太った男。察するに、定期的に同じクイズが出題されているのだろう。男の目の前にあるタグ付きのピアノ線、そして男が握っているハサミから察するに、正解だと思う数字のついたタグ――つまり、最小で計量器を何回使う必要があるのか、正しい回数を導き出し、それに対応したピアノ線を切ることができれば助かるということなのであろう。ちなみに、タグ付きのピアノ線を目で追っても、あまりにもピアノ線の数が多いため、その先を見失ってしまう。彼を助けるために、そしてピアノ線の向こうにある棚を調べるためにも、目の前に突きつけられた難題を解かねばならない。

 状況から考えて、彼のスタート地点はここなのであろう。目が覚めたら壁が迫ってきた水落と、目が覚めたらピアノ線に囲まれていた男。それぞれの差はあれど、同じ状況下からのスタートだからなのか、変に同情してしまう。

「ふむ――正解を導き出せばいいというだけの話だな。君、とにかく落ち着いてくれ、そんなに落胆する必要もない。とりあえず名前を聞かせてくれないか?」

 この理不尽なものが始まってから数時間。ずっとピアノ線に囲まれ、また緊張しっぱなしだったであろう彼は、すっかりと疲弊して怯えてしまっているようだった。春日の言葉に男は少しだけ顔を上げる。
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