BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

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暴走するモラルと同調圧力【午後5時〜午後6時】

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「私の考えが正しければ、もう少しのはずなんだ。もう少しの――」

 まるで考えなしに、ただひたすらに思いついた方向へと進んでいるとしか思えない磯部が呟く。しかも、罠の件以来、辺りを必要以上にキョロキョロと見回す小心者を発揮。――やっていることは身を守るための大事な手段なのであろうが、磯部がやると保身に走っているように見えてしまう。恐らく、根本的な部分で村山と合わないのであろう。

「何があと少しなんだ――」

 喉元で止めておくはずだった一言がぽろりと漏れた。それだけ磯部に対してのヘイトが溜まっていたのかもしれない。まさか村山から反論されるとは思っていなかったのであろう。振り返った磯部は驚いたような表情を浮かべていた。泣いていた真子が黙るくらいだ。村山の発言は、現状においては確実によろしくなかったのであろう。

「子どもは黙って大人の言うことを聞いておけばいいんだ――」

 低いトーンで、やや高圧的な口調をみせる磯部。その言い分が気に入らなかった村山は、とうとう我慢の限界を迎えた。

「その結果、大して休みもせずにただ歩き続けているだけになっているんだろ? 吉良さんが罠に巻き込まれた時に知らんぷりする大人の言うことなんて聞く意味あるのか?」

 これまで胸のうちにしまっていたものを一気に吐き出す。磯部が大人であり、積極的にリーダーシップを取っていたから従ってきたが、正直それ相応の結果が得られるとは思えない。今時、駄目な大人なんていくらでもいるだろうし。

「――誰に向かってものを言っている? 私は会社を経営する立場の人間だぞ」

「それも本当かどうか分からないよな? それに、もし本当だとしたら、平気で人を見捨てる経営者ってどうなんだよ?」

 たたみかけるかのごとく、磯部の言葉に間髪入れずに反論する。それが面白くないのか、磯部は青筋を立てて声を荒げた。

「世の中のことを知らない子どもがなにを言う? あれは緊急避難だ。一人を助けるため全員がリスクを背負う必要はない。私だって見捨てたくて見捨てたわけじゃないんだ! ちゃんと考えているんだ!」

「口ではなんとでも言えるさ! ちゃんと考えているって言うなら、これからどうするつもりなのか答えてみろよ! これ以上、あてもなく引っ張り回すつもりじゃないだろうな!」

 真子はどうしていいのか分からないようで、おろおろと村山と磯部の間に視線を往復させるだけ。売り言葉に買い言葉とばかりに、磯部がとんでもないことを口にしたのは、次の瞬間のことだった。
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