BOOBY TRAP 〜僕らが生きる理由〜

鬼霧宗作

文字の大きさ
130 / 231
闇の中からの強行突破【午後6時〜午後7時】

5

しおりを挟む
 一体誰が、何の目的でこんなことをしたのか分からない。実は誰かに恨まれていて、その報復として、こんな恐ろしいことをさせられているのか。それとも、運悪く巻き込まれてしまっただけなのか。その辺りのことはさっぱり分からないが、思っている以上に自分達の置かれている状況はよろしくない。罠がいたるところに仕掛けられているだけでも充分なのに、同じ立場の人間が敵にも味方にもなり得るというのが恐ろしい。

 浜野の発言をきっかけにして、これまで見ないようにしていた部分が露見してしまった。平和的な手段を用いて参加者同士で手を組むか、それとも手段を選ばずに自分だけでも生き延びるか。それを選択することができてしまう。そして――参加者全員が平和的な手段で事態を収束させようとするとは限らない。

 ふと、沈黙した春日の横顔が明るくなった。それは比喩とか表現などではない。文字通りに明るくなったのだ。学校のほうへと視線をやると、さっきまで暗闇に包まれていた学校に明かりが灯っていた。たった一部屋であるが、その明かりが春日の横顔をほのかに照らしたのだ。

「やはり人がいたか――」

 前触れもなく点いた明かり。一同が明かりのほうへと視線を移すと同時に、まるで身を隠すかのごとく部屋の明かりが消える。そしてまた、すぐに部屋の明かりが点き、そしてまた消える。

「――なんや? 何がしたいんや? っていうか、電気が点くなら堂々と点ければいいやん」

 深田が呟き、春日はあごに手をやる。

「点けたくとも点けられない状況下にある――という可能性も考えられる」

 やり取りの間も部屋……恐らく教室の明かりは明滅を繰り返す。時に長く点灯したかと思えば、消えては点いてを繰り返したりと、なんだか気味が悪い。単純に電灯が切れかけているというような明滅の仕方ではなかった。

「どうやら、助けを求めている状況にあるみたいだな。あまり考えたくはないが、良くないことが起きているのかもしれない」

 何度も電気が点いたり消えたりする教室を眺めつつ、陸士長がやや確信めいたことを口にする。

「助けを求めている――って、どうして分かるんだ?」

 水落の問いかけに対して、陸士長は静かに教室のほうを指差した。

「あの電気の明滅。多分だが、モールス信号になっている」

 水落からすれば、それは単なる明かりの明滅にすぎない。しかし陸士長からすれば、れっきとしたメッセージになっているようだった。モールス信号のことは知っていても、普通はそれを解読することなどできない。さすがは自衛隊陸士長といったところか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【短編】記憶を失っていても

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。  そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。  これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。 ※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...