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1.絶海の孤島へ
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安楽はいまだに船酔いの気持ち悪さが残っているのか、意外にも大人しかった。ただ、地下に降りなかったのに理由があるらしい。なんでも、地下などの暗いところは当然ながら犯人に狙われることが多いらしい。これは、顔を見られる可能性が低く、また恐怖心を適度に煽ることができるためとのこと。もう、犯人がいること前提で動いている辺り、連れてきた張本人である蘭でさえ、若干ひいていた。
暗闇で菱田達が襲われることなどなく、また電気の線が切断とかされていることもなく、ややすると低いエンジン音とともに電気が点いた。
「おーい、適当に食べ物と飲み物を運び出すから、手伝ってくれ!」
地下へと続く階段にも明かりが灯る。こうしてみると、何の変哲もない石階段だ。細川が先に地下へと降りようとして、ちょっとだけ引っかかりかけたのを見逃さなかった。地下がどれくらいの広さなのかは分からないが、全員が降りても余裕はあるのだろうか。
「イッ君。あなた、男でしょ? 先に行ってよ」
細川が下に降りたあと、ごく当然とばかりに蘭が降りるのを待っていた安楽に対し、先に降りるように促す蘭。それに合わせて外では雷鳴が鳴り響く。屋根を雨が叩く音は、さらに大きくなったように思える。
「いや、下手をしたら犯人の手によって鉄扉が閉じられ、上から何かで固定されてしまうかもしれない。そうなったら俺達は全滅だ。ここで見張っているよ。しかもほら、外は嵐っぽいし」
「いや、どう考えたって、そんな展開にはならなくない? 万が一にも、そんなことになったとしても、掃除している誰かが気づいてくれれば、それで助かるわけだし」
安楽の警戒しすぎるところは、本当に良くないと思うし、嵐は関係ない。確かに、蘭と安楽でどこかに行こうとすると、その先々で何かが起きてしまうわけだが、それは単なる偶然にすぎない。いいや、良く考えてみると、どこかに出掛けなくとも、それなりに何かが起きていた気がする。いつしか、テスト勉強かなんかで蘭の家に安楽がやってきた時は、蘭が楽しみにしていたプリンを何者かが食べてしまうという、実に凄惨な事件が起きた。まさか、プリンだと思って買ったものが杏仁豆腐だった――という驚愕の大どんでん返しには、当事者の蘭も驚いたものだ。ちなみに、この事件を解決したのも安楽だ。なんせ、自ら解決に導かねば、安楽が疑われてしまうような状況にあった事件なのだから。そのような星のもとに生まれたのかもしれない。
「あのな、そういう展開にならないと思ってたら大間違いだぞ。蘭だって何度も経験してるだろ?」
「いや、だとしたら一度に数人閉じ込められて、その全員が死ぬってことはないでしょ?」
「た、確かに……ミステリとしては1人ずつじっくりと殺されていくのが主流ではあるが」
こちらが揉めている声が聞こえたのか、それともなかなか降りてこないことに業を煮やしたのか。菱田の声が飛んできた。
「おーい、早く降りてきて手伝ってくれ!」
暗闇で菱田達が襲われることなどなく、また電気の線が切断とかされていることもなく、ややすると低いエンジン音とともに電気が点いた。
「おーい、適当に食べ物と飲み物を運び出すから、手伝ってくれ!」
地下へと続く階段にも明かりが灯る。こうしてみると、何の変哲もない石階段だ。細川が先に地下へと降りようとして、ちょっとだけ引っかかりかけたのを見逃さなかった。地下がどれくらいの広さなのかは分からないが、全員が降りても余裕はあるのだろうか。
「イッ君。あなた、男でしょ? 先に行ってよ」
細川が下に降りたあと、ごく当然とばかりに蘭が降りるのを待っていた安楽に対し、先に降りるように促す蘭。それに合わせて外では雷鳴が鳴り響く。屋根を雨が叩く音は、さらに大きくなったように思える。
「いや、下手をしたら犯人の手によって鉄扉が閉じられ、上から何かで固定されてしまうかもしれない。そうなったら俺達は全滅だ。ここで見張っているよ。しかもほら、外は嵐っぽいし」
「いや、どう考えたって、そんな展開にはならなくない? 万が一にも、そんなことになったとしても、掃除している誰かが気づいてくれれば、それで助かるわけだし」
安楽の警戒しすぎるところは、本当に良くないと思うし、嵐は関係ない。確かに、蘭と安楽でどこかに行こうとすると、その先々で何かが起きてしまうわけだが、それは単なる偶然にすぎない。いいや、良く考えてみると、どこかに出掛けなくとも、それなりに何かが起きていた気がする。いつしか、テスト勉強かなんかで蘭の家に安楽がやってきた時は、蘭が楽しみにしていたプリンを何者かが食べてしまうという、実に凄惨な事件が起きた。まさか、プリンだと思って買ったものが杏仁豆腐だった――という驚愕の大どんでん返しには、当事者の蘭も驚いたものだ。ちなみに、この事件を解決したのも安楽だ。なんせ、自ら解決に導かねば、安楽が疑われてしまうような状況にあった事件なのだから。そのような星のもとに生まれたのかもしれない。
「あのな、そういう展開にならないと思ってたら大間違いだぞ。蘭だって何度も経験してるだろ?」
「いや、だとしたら一度に数人閉じ込められて、その全員が死ぬってことはないでしょ?」
「た、確かに……ミステリとしては1人ずつじっくりと殺されていくのが主流ではあるが」
こちらが揉めている声が聞こえたのか、それともなかなか降りてこないことに業を煮やしたのか。菱田の声が飛んできた。
「おーい、早く降りてきて手伝ってくれ!」
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