探偵残念 ―安楽樹は渋々推理する―

鬼霧宗作

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3.深まる謎と疑惑

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 先頭はあくまでも菱田。それに榎本が続き、少し離れて蘭と英梨の2人。さすがに4人一度に螺旋階段をのぼると壊れてしまいそうだから、自然と分散したのであろう。実際、踏むと軋むような音が響くから、そこまでの重さには耐えられないだろう。

 螺旋階段が崩落することもなく、無事に2階へとやってきた一同。2階にのぼるのは初めてだったが、景色は1階の廊下とさほど変わらなかった。造り自体は同じだろうから当然なのであるが。

 自分の部屋以外、他人の部屋割りなどに全く興味のない蘭。当然ながら男性陣の部屋割りなど分かるわけもない。それを基準に考えると、細川の部屋へと一直線に向かえる菱田には、なんだか違和感を覚えた。ただ単純に蘭が他人の部屋を覚えないだけなのかもしれないが。

 おそらく細川の部屋であろう扉の前で立ち止まる菱田。先ほど、菱田はここを訪れているし、細川がいまだにヘソを曲げている可能性も考え、菱田が声をかけるのはリスクがあると考えたのであろう。榎本が無言で手を挙げ、菱田の前に割り込む扉をノックした。

「細川、僕だ。食事を持ってきたんだ。開けて欲しい」

 ドアをノックしながら声をかける。しかし、榎本が話したあとに続いたのは沈黙。ただただ沈黙のみ。合いの手を入れるかのごとく、外で風がいっそう強くうねった。今度は菱田が榎本の場所を奪う。

「菱田だ。さっきは本当に申し訳なかった。君にどう思われても仕方がないと思うが、一度面と向かって謝罪させて欲しいんだ」

 これまで、菱田という人間を見てきたが、ここまでへりくだっている――下手に出ている彼を見たことはない。けれども、天照の岩戸は開かない。

 今度は改めて自分の番とばかりに、榎本が菱田の前に出ようとする。その際、意図せずにドアノブに触れてしまったらしい。カチャリ……と心もとない音を発しながら、ゆっくりと扉が開いた。

「鍵がかかっていない――。ほ、細川。開けるぞ!」

 扉が開いてから中に声をかけた榎本。へそ曲がりがさらにへそを曲げたら面倒だから、あえての気遣いなのだと思ったのであるが、その気遣いは無駄となる。

「細川、おい細川。いるなら返事をしてくれ!」

 榎本の呼びかけに対しても反応はなし。菱田と榎本が互いにアイコンタクトを交わし、榎本が「細川、入るぞ」と、断りを入れて2人は中に入る。

「僕は部屋を調べる。君はトイレと風呂のほうを頼んだ」

 榎本と菱田で手分けをして部屋を探索する。ベッドの布団をめくっても細川は出てこない。ベッドの下を除いた榎本は、溜め息混じりで首を横に振る。
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