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5.安楽樹は渋々推理する
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事件に巻き込まれてしまったわけだし、このまま警察に何も話さずに解放なんてことはないだろう。もしかすると、少し滞在する期間を伸ばして警察の捜査に協力しなければいけないのかもしれない。正直、これ以上の拘束は勘弁願いたいが、起きてしまったことが起きてしまったことだけに、仕方のないことかもしれない。
「やれやれ、これはまだまだ帰れそうにないな――」
安楽は割りかし本気なのであろう。大きな溜め息をひとつ。蘭からすれば親しかった人間が死んでいるのだから、もう少し気を遣って欲しいものだ。もっとも、蘭もまた亜純がこの世にいないという実感が薄いのであるが。
「僕達も日本に帰る前に、それぞれ自分を見つめ直したほうがいいのかもしれないな。そんなことが起きてたなんて、全く気づいてやれなかったし」
誰が彼女のいじめに加担していたのかは分からないし、犯人探しをするつもりもなさそうな榎本。彼の言葉に尽きると蘭は思った。
「とにかく、事件も解決したし、こうして五体満足でいられるわけだ。ミステリにおいて、事件が解決してから間もなくして、他の事件が起きるなんてことはないし、俺はもう一生蘭とは旅行しない――」
安楽の言葉を遮るかのごとく、厨房のほうから皿が割れたような音が響いた。続いて、血相を変えた先ほどの店員が出てくる。ひどく慌てた様子で、まだ店内に残っていた警察官のところに駆け寄った。
そして、蘭は聞いてしまった。現地の言葉でやり取りされてはいるが、店員と警察の間に飛び交う不気味なワードを。
――死んでる。
――誰かに殺されたに違いない。
「おいおい、今度は何だってんだよ……」
安楽のぼやきは、真っ青なエーゲ海の向こう側へと吸い込まれて消えたのだった。どうやら、まだ帰れそうにない。
―完―
「やれやれ、これはまだまだ帰れそうにないな――」
安楽は割りかし本気なのであろう。大きな溜め息をひとつ。蘭からすれば親しかった人間が死んでいるのだから、もう少し気を遣って欲しいものだ。もっとも、蘭もまた亜純がこの世にいないという実感が薄いのであるが。
「僕達も日本に帰る前に、それぞれ自分を見つめ直したほうがいいのかもしれないな。そんなことが起きてたなんて、全く気づいてやれなかったし」
誰が彼女のいじめに加担していたのかは分からないし、犯人探しをするつもりもなさそうな榎本。彼の言葉に尽きると蘭は思った。
「とにかく、事件も解決したし、こうして五体満足でいられるわけだ。ミステリにおいて、事件が解決してから間もなくして、他の事件が起きるなんてことはないし、俺はもう一生蘭とは旅行しない――」
安楽の言葉を遮るかのごとく、厨房のほうから皿が割れたような音が響いた。続いて、血相を変えた先ほどの店員が出てくる。ひどく慌てた様子で、まだ店内に残っていた警察官のところに駆け寄った。
そして、蘭は聞いてしまった。現地の言葉でやり取りされてはいるが、店員と警察の間に飛び交う不気味なワードを。
――死んでる。
――誰かに殺されたに違いない。
「おいおい、今度は何だってんだよ……」
安楽のぼやきは、真っ青なエーゲ海の向こう側へと吸い込まれて消えたのだった。どうやら、まだ帰れそうにない。
―完―
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