ワガママ女王としもべ達

角井まる子

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きっかけ

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「あーやばいムラムラする~。もうだめだ。風俗行きたい」




「・・・は? 何をいきなり。お前女だろ」

「煩いなぁ。女性だって性欲あるんだよ。
お金払って、しっかりと満足出来るサービス受けて、気分はスッキリ後腐れも無し!
合理的で素晴らしい選択肢でしょうが。うん、風俗行こう」



この1年は仕事に全身全霊をかけてきた。
もうそろそろ少し羽を伸ばしてもいいんじゃないのだろうか。
ようやく仕事も落ち着いてきたし、何よりムラムラする余裕が出来て来たのがその証拠だ。

よし、女性向け性感マッサージを受けよう。
そうしよう!!


一時の快感のため、誰かを誘うのはリスクがあるしね。
例え快楽の為だけでも、行為自体は生殖行為となるのだから、無責任は良くない。

だから、自己管理をしっかり出来てるプロの人にお金を払ってお願いした方が、上手いし気兼ねなく楽しめるに違いない。



さっそくネットで予約を入れようと探し始めたら、裕貴に思いっきり肩を引かれた。




「ちょっと待て。何でそう言う思考回路になったのか説明しろ」

「えーさっき言ったじゃん。ムラムラするからだよ。風俗を楽しむ世の男性と同じだよ」

「その前に、彼氏作ろうとか思わないのか?知らない奴に触られる事に嫌悪感は無いのか?」

「相手はプロだよ?これはサービス業の一種だよ?エッチの為だけに彼氏作るとかめんどくさいでしょ。セフレなんてリスク有りすぎ。それにやるなら上手な人に気持ちよくしてもらいたいし。もう1年ぐらいご無沙汰だから、これ以上我慢してたら更年期障害が出そう。身体に悪いわ精神病むわ」

「・・・」



む、なんだその間抜け面は。
まるで乙女の様に拒絶反応を起こしている裕貴に驚いた。
自分だって色々いろいろ遊んでた癖に、人の性活に文句付けるなんて何様だこら。
まるで女性が風俗行くのが悪いみたいな言い方だなこら。
これこそ男尊女卑だぞこら。

と頭の中で愚痴りながら、さっさとパソコンに視線を戻して検索開始。

Google先生に教えて貰おうと検索ワードを入れてエンターキーを押そうとした瞬間、今度は椅子を後ろに引かれ、身体ごと裕貴に向けられた。




「待て、分かった。俺が気持ち良くしてやる。風俗なんかより俺に任せろ」




真剣な顔付きで、じっと私の目を見つめながら、そう言ってくる。




「やだ。」



即答。




「だって裕貴、私の事好きなんでしょ?そんなの裕貴が辛くなるだけだよ。悪いけど、裕貴とは生涯関係切るつもりないから。そんな事しない方が良いよ」




そう、私達は幼なじみであり、戦友であり、ビジネスパートナーだ。
「親友」なんて言葉じゃ足りない。「家族」よりも長く一緒の時間を過ごしてきた。大事な大事な仲間だと思っている。

裕貴が私に恋心を抱いて、身体の関係も含めてより深く求めているとしても、同じ気持ちで応じる事は出来ない。

でも手放す事も出来ない。
一生、私の側にいて私に惚れてたら良い。

まぁ、世間的には悪いヤツだよね、私。


それでも、側に居たいと思って貰えるよう、私は私なりの努力をしている。
裕貴が去るときは、私の魅力が無くなった時かなぁ。

なんて考えながら、パソコンに向き直ろうと身体をひねるが、押さえられた両肩に力を込められ少しも動けなかった。




「俺は、由佳以外は必要ない。12年間ずっと、由佳の側で由佳だけ見てきた。由佳が俺の希望に応えられないのも知ってる。でも、、、それでいい。由佳の側で今まで通り居れるだけいい。どんな関係になろうと、俺の生涯は由佳にやる。だから、信用してくれ。」




・・・あれ、真面目に告白されてる? 

むしろこれは熱烈なプロポーズ?
一生を捧げるってなんか何処かの少女漫画の騎士みたいだな。カッコいいじゃないか。

ただ性欲発散したかっただけなのに、何か変な話の流れになってないか?

いやいや、相手は真剣だ。
真剣に色々考えてくれての言葉なんだろう。

そりゃ裕貴の言葉は嬉しいけど、一生捧げますってまるで忠誠を誓うみたいな事まで言って大丈夫?私、本気にしちゃうわよ?




「本気?てか、いきなりどうしたの? ただエッチするだけの為にそこまで言っちゃうの?」

「抱きたいからだけで言ってるんじゃない。でもこれ以上他の男に触られているのは我慢出来ねぇ。しかも金払ってやるなんて、相手が許せない。性欲発散するなら、俺を使え。
頼む、風俗行くなんてそんな事しないでくれ。俺からは何も求めないから」

「・・・付き合わないよ?最後までさせないし、キスも許さない。そんな都合良く使われていいの?でも裕貴を離さないよ?そんなんでいいの?」

「望むところだ。今までだって散々使ってきただろうが」




確かに。それもそうか。



ま、今までも色々あったけど、二人で乗り越えて来れたし、裕貴ならいいかな。
ーーーーー本人がここまで言ってるなら。


少し考えた後、結論を出した私は、目をそらさない裕貴にニヤリと笑いかけた。




「じゃあ、満足させてね?」








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