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シャロリンの本質
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「いやー食った食った!」
あれからフェリックたちは頼みに頼んで、食いきれないほど頼んでしまった。しかし、その分は全てエリアンが食べてしまった。かなりの量があったはずだが、一体どこにその食料が入るというのか。もしや本当に⋯⋯。
「お、シャロリン、ようやく帰ってきたか」
と、そんなことを考えていると、カレンが後方を振り向き声をかける。
「おう! おかえりシャロリン、飯ならもう食べちゃったぞ⋯⋯って! どうしたんだ!?」
手を振りながら元気よく声をかけていたかと思ったフェリックだが、その声はすぐさま心配の声に変わる。それも無理からぬことである。今のシャロリンの顔色は顔面蒼白に等しいほど青白かった。それに目の下にはなぜか隈があり、顔つきも遠くを見据えていて目が合わず、口もポカーンと空いている。
そう。そこにいたのは先程のような元気の良い活発なシャロリンではなく、暗い気を纏ったシャロリンだったのだ。明らかに別人である。
シャロリンはようやくフェリックの慌て様に気づいたようで、不気味な笑身を浮かべ言った。
「⋯⋯ああ、フェリックね。ご飯はちゃんと食べた? そう。良かったね。うん。良かったよ。私なんて⋯⋯私なんて⋯⋯」
そう言って震え出すシャロリン。明らかに様子がおかしい。
そう思ったフェリックは慌てた様子でカレンに問う。
「カレン! シャロリンのあの様子! 何があったんだ!?」
しかし、カレンは慌てる様子もなく。
「ああ。シャロリンは昼間は溌剌とした少女でいられるが、夜になると鬱状態になるんだ。今は夜、つまり鬱状態のシャロリンということだ」
「なんだそりゃ!」
思わずつっこむフェリック。
昼間は元気で夜は鬱。まるで聞いたことがない。何か原因があってこうなっているのだろうか。
「まぁ慣れてしまえばなんてことはない。明日の昼間になればまた元通りになるのだからな」
「い、いいのかなぁ⋯⋯」
確かにフェリック以外の者はあまり気にしている様子はなかった。フェリックも気にしないように努めなければならない。
「⋯⋯気にしなくてもいいんだよフェリック。私なんて⋯⋯この星の塵なんだから⋯⋯ははっ⋯⋯ははっ」
「そんなこと言われて気にせずにいられるほど悪いやつじゃねぇぇぇぇ!」
「はっはっはっ! 実に愉快! フェリック殿をパーティーに入れて正解だったな!」
「えぇ⋯⋯多分最初は誰でもこうなるぞ?」
「でもいいんだ。⋯⋯パーティーは騒がしいくらいがちょうどいい」
そう言うカレンの目は実に楽しそうだった。そんなカレンを見ているだけで、フェリックも楽しい思いになれた。
「さて、そろそろお開きとしようか。とりあえず今日は宿も借りねばならん。――皆の者、ついてくるがよい」
「⋯⋯それ、決まり文句みたいな感じなのか?」
「まぁそうだな。はっはっはっはっ!」
そうしてフェリックたちは酒場を出、宿を借りるべく宿屋へと向かった。
△▼△
「この時間でも宿を借りられてよかったですね!」
嬉しそうにローレインがそう言う。
酒場を出てからフェリックたちはギルテリッジ内の適当な宿を見つけ、そこに代金を前払いし、腰を落ち着かせていた。エリアンは嬉しいのかベッドの上でぴょんぴょんと跳ねていて、シャロリンは何やらぶつぶつと言いながらベッドにうつ伏せに倒れている。
「⋯⋯なぁカレン」
「ん? なんだフェリック殿」
フェリックが何かに気づいたような様子でカレンに言う。
「⋯⋯俺、どこで寝ればいいんだ?」
「どこで寝ればいい? ああ、そういうことか」
そう。今のこの状況、フェリック男1人に対し、カレン、ローレイン、シャロリン、エリアンの女4人。ベッドは2つ。どう考えてもフェリックはこの状況で気安く寝れないのである。それこそこの状況はハーレムであり、男の憧れでもあるが、実際になってみると案外寝にくかったりする。
カレンはそう言った後、突然フェリックに歩み寄ってきて、次の瞬間、フェリックの体を優しく抱き寄せた。大きな胸がフェリックの顔を押しつぶし、息がしにくい。
「大丈夫だぞフェリック殿。私は案外母親の気があってな。甘えてくれれば、それ相応の対応は約束する。どうだ? それで寝れるだろう?」
「んー!!んー!!(寝れるかぁぁぁ!!)」
フェリックがじたばたとしていると、息が出来ないことにやっと気づいたのかカレンが自分の身体からフェリックを遠ざける。
フェリックは肩で息をしながら口を開いた。
「⋯⋯とにかく、ベッドはお前らが使ってくれ。俺は床で寝る」
「フェリック殿、そうはいかないぞ? 仲間1人をそんな床で寝せるなんてことはしない」
「でも⋯⋯」
「大丈夫。私とローレインで挟んで寝るのでな」
「わ、私もですか!?」
「全然大丈夫じゃないんだけど!?」
結局そんなやり取りはしばらく続き、その後それぞれが風呂に入り終わった。
あれからフェリックたちは頼みに頼んで、食いきれないほど頼んでしまった。しかし、その分は全てエリアンが食べてしまった。かなりの量があったはずだが、一体どこにその食料が入るというのか。もしや本当に⋯⋯。
「お、シャロリン、ようやく帰ってきたか」
と、そんなことを考えていると、カレンが後方を振り向き声をかける。
「おう! おかえりシャロリン、飯ならもう食べちゃったぞ⋯⋯って! どうしたんだ!?」
手を振りながら元気よく声をかけていたかと思ったフェリックだが、その声はすぐさま心配の声に変わる。それも無理からぬことである。今のシャロリンの顔色は顔面蒼白に等しいほど青白かった。それに目の下にはなぜか隈があり、顔つきも遠くを見据えていて目が合わず、口もポカーンと空いている。
そう。そこにいたのは先程のような元気の良い活発なシャロリンではなく、暗い気を纏ったシャロリンだったのだ。明らかに別人である。
シャロリンはようやくフェリックの慌て様に気づいたようで、不気味な笑身を浮かべ言った。
「⋯⋯ああ、フェリックね。ご飯はちゃんと食べた? そう。良かったね。うん。良かったよ。私なんて⋯⋯私なんて⋯⋯」
そう言って震え出すシャロリン。明らかに様子がおかしい。
そう思ったフェリックは慌てた様子でカレンに問う。
「カレン! シャロリンのあの様子! 何があったんだ!?」
しかし、カレンは慌てる様子もなく。
「ああ。シャロリンは昼間は溌剌とした少女でいられるが、夜になると鬱状態になるんだ。今は夜、つまり鬱状態のシャロリンということだ」
「なんだそりゃ!」
思わずつっこむフェリック。
昼間は元気で夜は鬱。まるで聞いたことがない。何か原因があってこうなっているのだろうか。
「まぁ慣れてしまえばなんてことはない。明日の昼間になればまた元通りになるのだからな」
「い、いいのかなぁ⋯⋯」
確かにフェリック以外の者はあまり気にしている様子はなかった。フェリックも気にしないように努めなければならない。
「⋯⋯気にしなくてもいいんだよフェリック。私なんて⋯⋯この星の塵なんだから⋯⋯ははっ⋯⋯ははっ」
「そんなこと言われて気にせずにいられるほど悪いやつじゃねぇぇぇぇ!」
「はっはっはっ! 実に愉快! フェリック殿をパーティーに入れて正解だったな!」
「えぇ⋯⋯多分最初は誰でもこうなるぞ?」
「でもいいんだ。⋯⋯パーティーは騒がしいくらいがちょうどいい」
そう言うカレンの目は実に楽しそうだった。そんなカレンを見ているだけで、フェリックも楽しい思いになれた。
「さて、そろそろお開きとしようか。とりあえず今日は宿も借りねばならん。――皆の者、ついてくるがよい」
「⋯⋯それ、決まり文句みたいな感じなのか?」
「まぁそうだな。はっはっはっはっ!」
そうしてフェリックたちは酒場を出、宿を借りるべく宿屋へと向かった。
△▼△
「この時間でも宿を借りられてよかったですね!」
嬉しそうにローレインがそう言う。
酒場を出てからフェリックたちはギルテリッジ内の適当な宿を見つけ、そこに代金を前払いし、腰を落ち着かせていた。エリアンは嬉しいのかベッドの上でぴょんぴょんと跳ねていて、シャロリンは何やらぶつぶつと言いながらベッドにうつ伏せに倒れている。
「⋯⋯なぁカレン」
「ん? なんだフェリック殿」
フェリックが何かに気づいたような様子でカレンに言う。
「⋯⋯俺、どこで寝ればいいんだ?」
「どこで寝ればいい? ああ、そういうことか」
そう。今のこの状況、フェリック男1人に対し、カレン、ローレイン、シャロリン、エリアンの女4人。ベッドは2つ。どう考えてもフェリックはこの状況で気安く寝れないのである。それこそこの状況はハーレムであり、男の憧れでもあるが、実際になってみると案外寝にくかったりする。
カレンはそう言った後、突然フェリックに歩み寄ってきて、次の瞬間、フェリックの体を優しく抱き寄せた。大きな胸がフェリックの顔を押しつぶし、息がしにくい。
「大丈夫だぞフェリック殿。私は案外母親の気があってな。甘えてくれれば、それ相応の対応は約束する。どうだ? それで寝れるだろう?」
「んー!!んー!!(寝れるかぁぁぁ!!)」
フェリックがじたばたとしていると、息が出来ないことにやっと気づいたのかカレンが自分の身体からフェリックを遠ざける。
フェリックは肩で息をしながら口を開いた。
「⋯⋯とにかく、ベッドはお前らが使ってくれ。俺は床で寝る」
「フェリック殿、そうはいかないぞ? 仲間1人をそんな床で寝せるなんてことはしない」
「でも⋯⋯」
「大丈夫。私とローレインで挟んで寝るのでな」
「わ、私もですか!?」
「全然大丈夫じゃないんだけど!?」
結局そんなやり取りはしばらく続き、その後それぞれが風呂に入り終わった。
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