怪物コルロルの一生

秋月 みろく

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■笑顔

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 ガルパスおじさんの乗る馬には、いくつもの鞄や箱が括り付けられている。それを見て、ライアンはすぐに察したらしい。

「それで、あんたは財産の運び出しか?」

「うちにまで火が回ったらかなわん。多少めんどうだが、この先に停めてある飛行船まで、何度か往復して運び移すよ。まだまだあるんでね」

 おじさんは財産のありかを示すように、街の方向へ片腕を広げた。

「おい、コルロルは? コルロルはどうなった? ちゃんと生きてるんだろうな?」

「ああ、あのバケモノなら、君たちが走り去ってまもなく、倒れたよ」

「なに? 死んだっていうのか?」

「さあ、死んだんじゃないか? 燃えてただろう? まあ死んどらんにせよ、どのみち動ける状態ではないだろうな。それにしても、あの怪物は言葉を話すだけではなく、感情があるのか? 君たちを追うものから順番に襲いかかり、まるで君たちの逃げる時間を稼いでいるようだった」

 ライアンは驚いたように目を見開いたあとで、悲しそうに呟いた。「本当か? コルロルが……くそ、コルロルのやつめ」

「そう見えたってだけだ。偶然かもしれん。それじゃあ、失礼するよ。やることが山ほどある」

 話を切り上げ、おじさんはスピードを上げた。おじさんは軍とは無関係で、単独で動いているらしい。彼と距離が離れないうちに、ライアンは小声であたしに言った。

「レーニス、腰の剣を取れ。そして立ち上がるんだ。俺の肩につかまって……そう、ゆっくりでいい」

 ライアンの腰に刺さっている剣を抜き取り、立ち上がる。ライアンはおじさんへ馬を近づけ、次の指示を叫んだ。

「今だ! ガルパスの馬に飛び移れ!」

 短い距離を飛ぶ。馬の腰あたりに、箱が乗せてある。あたしはその上にすとんと座り、着地した。

「ひいっ」、おじさんの混乱が馬に伝わり、馬が暴れる。体を左右に振り、自分に乗るものを落とそうとする。「な、なんだレーニス! なにをする気だ!」

「よーしレーニス、そのままそのまま。いや、ガルパスの首に剣を当てるともっといい」

「こう?」

「ひっ」

 馬はその場に停止し、ちょうどそのころ追いついた兵の騎馬たちも、少し距離を置いて止まる。騎馬たちはこちらのやりとりに注目し、あたしはおじさんの首に剣を回したまま、ライアンを見た。

「ライアン、なにする気?」

「そうよ、おじさんになんてことするの? レーニス、はやく放して」

 リーススはライアンとあたしを咎める。彼女はテディになっていたから、未だにガルパスおじさんのことを、ただの声のでかいおじさんと思っているらしい。

「いや、放すなレーニス。ガルパスには人質になってもらう」

「人質? おじさんを? そんなのひどい、人のいいおじさんに剣を向けるなんて……!」


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