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■死ぬとき
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しおりを挟む「ひき殺されるかと思ったよ」
開けっ放しの昇降口に捕まるコルロルは、生きた心地がしない、というように長く息を吐きだした。腕だけでは不安なのか、座席や飛行船の尾翼にまで、黒い髪の毛みたいな触覚を巻き付けてバランスをとっている。
「ははっ、生きててよかったじゃないか。それにしても、こっぴどくやられたな。翼もボロボロだ」
操縦席で、ライアンは顔だけ振り返り、コルロルのぼろぼろの姿を手で示す。
「やつら無遠慮に撃ってくるんだ。あんな大人数に撃たれるものの気持ちが、まったくわかってない。少しは回復したけど、しばらくは動けそうにないよ」
一安心したのか、コルロルは伏目がちに一呼吸を置いた。が、すぐにはっとしてあたしを見た。
「レーニス大丈夫? 軍のやつらにやられなかった? 街の連中は最悪だったよね。あんな火のついた棒で殴るなんて、心あるものの所業とは思えない。火傷は? ひどくなかったの?」
「……大丈夫。服は焦げたけど、火傷は軽傷だった。さっきの兵士たちには、銃を向けられただけだったし」
自分の目の前にコルロルがいて、生きて動いていることが、なんだか奇妙に感じられた。もう死んだんじゃないかと思っていたから。コルロルは本当に不死身なのかもしれない。
「そっか……よかった。本当によかった。君になにかあったら、僕はどうしようかと……」
あたしはコルロルを見つめた。やつの金の目は細まり、うるうると瞳が光っている。心の底から心配しているように見えて、思わずあっけにとられる。
こんな目を、見たことがある。迷子になったあとのあたしを、父さんが、リーススが、見つめる目だ。
「あなたの方こそ、大丈夫なの? あんなに撃たれたのに」
コルロルはきょとんとしてこちらを見返した。「……レーニス、心配してくれるの?」
「心配なんかしてない」
やつの横腹あたりに目がいく。家の外壁がはがれ落ちたみたいに、横腹の辺りの外皮が、広い範囲で損なわれている。そこからワイン色の血がどくどくと流れ、いったん足元まで落ちると、飛行船の後方へと散っていく。飛行船が残す、道しるべみたいに。
体が大きいから、致死量となる出血量も多そうだけど、こんなに血を流していて大丈夫なのか。
「そっか……心配なんてしないか……。なんかちょっと、クールになったね、レーニス。もっと怒りっぽかったのに」
なにか気づいたように、コルロルの目が動く。やつはあたしの姿を上から下まで眺め、「え、なんでそんな可愛いかっこうしてるの」と、三角の耳をピンと立てた。
「ああ、この服」、心持ちスカートをもちあげる。「おじさんの荷物にあったの」
「そ、そうなんだ。そっか……スカートなんだ……へえ」
「……なぜそんなに見るの?」
「え、ごめん。そんなに見てた? なんだか、目が離せなくなったんだ」
「コルロル、素直すぎるぞ」、前を向いたまま、ライアンが笑う。「そういう時は褒めるもんだ。すごく似合ってる、とか、世界一可愛い、とか、天使が舞い降りたかと思ったよ! てのもいいな」
「君に言われなくても、思ってるよ。でもそんな褒め言葉は陳腐だ」
「それよりコルロル、リーススとは初めてなんじゃないか?」
言われて、コルロルはあたしの隣へ目を向ける。やつと目が合うと、リーススは「はい」と小さく手を振った。
「レーニスのお姉さんだよね? ごめんね、気づいてなかったわけじゃないんだけど、ひとまずレーニスの無事を確認したくて。レーニスの言っていたとおり、本当にそっくりなんだね」
「よく言われるわ」
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