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「駄犬の求める女王様像は」
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しおりを挟む少女を犠牲にしないために、まだしばらくは主任と交際を続けていこう。そう心に決めたその日、主任からまた長ったらしいメールが届いた。
そういえば、頭に投げ入れた米粒には、もう気づいただろうか。
『無事に家へ帰りつけたようですね。詩絵子様が突然出ていかれてしまい、この駄犬は心躍るような絶望にしばし身を浸してから後を追いました。こっそり詩絵子様のあとをつけるのは、こちらもなかなか刺激があり楽しむことが出来ました。詩絵子様が道に迷われた時は楽しい尾行をやめて出て行くべきか迷いましたが、なんとか自力で帰り着くことができ、家に灯りがついたので深く安堵しております。さて、今日も詩絵子様にいつかは例の赤いピンヒールで血が流れるまで踏んでいただけるよう、腐敗寸前の脳みそで考える時間がやってまいりました。詩絵子様は確かに『そこまで言うなら踏んでやるよ』とおっしゃいました。オフィス中の人間が聞いておりましたので、目撃情報を得るのは容易いことでしょう。しかしながらそこは徳の高い詩絵子様。駄犬と交わした約束などあっさり破ってしまわれます。待ち望んだ瞬間がいとも簡単に消え去ってしまう。駄犬にこのような快感を与えてくださったことを深く感謝しております。しかしあくまで、目標は踏んでいただくことでございますゆえ、今日も腐る一歩手前の臭い頭で今後について試行錯誤していかねばなりません。そうそう、頭といえば、今日はなんと詩絵子様から予期せぬプレゼントを頂くことが出来ました。まだ手にとっておりませんので、確かなことではございませんが、おそらくこの感触は米粒ではないかと、駄犬の思考は目星をつけております。そしてこの米粒は駄犬と同じく潤いを失い、からからに乾いている。おそらく詩絵子様が二日前に明太子を乗せて食された時のものではないでしょうか。当たらずも遠からずだと駄犬は自負しております。初めて詩絵子様から頂いた贈り物を、出過ぎた真似だとは重々承知していますが、頭の中で大切に育んでいこうと思っております。駄犬にこのような素敵なプレゼントを頂いたことに深く感謝すると同時に、これからもよりいっそう詩絵子様に踏んでいただくための努力を怠らないよう全身全霊をつくそうと、強く決心する今日この頃です。ときに、話しは大きく変わりますが……」
私……本当にやっていけるのか……?
つづく♪
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