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「最強のライバル?」
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しおりを挟む「はあ~~~すっかりクリスマスだな」
その日、彼は根無し草でぶらりと出かけただけなのですが、行き着いた先は、奇しくもイルミネーションに装飾された、おしゃれな夜のショッピングモールでした。
そう、詩絵子たちのいる場所です。
「そういえば、前買ったプレゼンやってねーなあ」
最近、清水詩絵子とはやや疎遠でした。ドエム彼氏の奥さん騒動を受け、これを機に彼は『押してダメなら引いてみろ』作戦を実行中でした。
「そういえばどうなったんだろ。あいつ傷心中のはずだよな?」
しかしながら、待てども待てども彼女からの連絡はありません。
そろそろもどかしさが喉の奥を突き、デートにでも誘おうという考えが頭をもたげ始めた今日この頃。
「お」
人の行き交うショッピングモールの片隅、一人でベンチに腰掛ける人物を見つけました。赤いダッフルコートを着たその人物は、足をぶらぶらさせて俯いています。
「よお、清水ー」
軽く手を上げ、雑踏の合間を縫って近づきます。彼女は気づかないようで、下を向いています。
お?やっぱ傷心中か?チャーーーンス!
「なになになに。こんなとこに一人でどうしたんだよ。ていうかお前、あれどうだった?あいつに奥さんがいるとかどうとかの問題は。解決したかよ?」
隣に腰を下ろしながら、朔は矢継ぎ早に問いかけました。しかし彼女は顔を上げません。
その様子で、確信する。
これは間違いなく破局したな。
今落ち込んでいるということは、問題がちょっと長引いて、紆余曲折のドラマの末にドエム彼氏と決別した。
しかし晴れて独り身になって辺りを見回すと、街はクリスマス一色。華やかな電飾の陰で、一人ぽっちの寂しい彼女。人肌恋しくなる冬のマジック。
舞台は揃ったという手応えがあった。ここで偶然会ったのも好ポイントだ。
「にしても毎年スゲーな、クリスマスは」
そう言って、イルミネーションを仰ぎ見る。そこでしかるべき間を置いて、朔は神妙に呟きました。
「なあ、清水。お前が本当にあいつを好きだったのか、よく分かんねーけどさ。そんなことは関係なく、あんなことがあれば誰だってショックだよ。辛いのを、一人で抱えることないんだぜ……」
真剣な眼差しを、その横顔に向けます。
シリアスな雰囲気で押し通そうと思いましたが、彼女がその目に涙を浮かべていたので、朔はどうにか笑ってほしくなりました。
「とまあ、そういうわけだからさ!」
わざとハリのある明るい声で言って、朔は彼女の肩に手を回しました。
「俺が辛いのは半分受け取っちゃるからさ、今夜はベッドの中で寄り添うぜ。あはは」
シーーーーン。
いつもなら殴られるところなので身構えていましたが、彼女は一向に殴りかかってきません。
「あれ?清水……?冗談だよ、いつものギャグだよギャグ!お前そこはツッコめよなあ、俺がバカみたいじゃんか」
笑いながら慌ててまくし立てると、彼女はようやくこちらに顔を向けました。
「お兄ちゃん、だれ?」
「へ……?」
とたんに違和感に気づきました。もう一度肩に手を回してみる。いつもより、位置が低い気がします。
違和感に従って改めて見ると、その人物は清水詩絵子より全体的にコンパクトでした。
「え、え?えええーーーー!?」
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