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「メガネデビュー!」
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しおりを挟む「あ~あ~せっかくクリスマスなのに、なんも予定ないな~美里はなんか予定あるの?」
会社の帰り、美里はスマホを見ながら「ん~?」と生返事をよこす。
「街が綺麗だよ~それなのに私は仕事だけして直帰なんて……サンタさん来てくんないかなあ。そうだ!今日は一緒にパーティーしようよ!ケーキ買ってさ!ホールでね!それいいね!」
「パス。今日は彼氏と過ごす約束だから」
美里は冬の風よりも冷たく切り捨てた。
「か~れ~し~!?まだ彼氏がいるの!?」
「この間とは違う人だよ」
「!!あ、あんた……!いつからそんな尻軽女にッ!」
「うるさいなぁ。私は二十代の内に結婚したいのよ」
「~~~くっそぉ……美里!」
私は速やかにメガネを着用し、美里に壁ドンした。スマホを見て無防備だった美里は、ごちん、としたたかに頭を打ち付ける。
「この聖夜……どうしても守り抜きたいと言うならば、私を倒し……」
美里は私の肩を掴んだ。そのままぐるんと回り、私たちの立ち位置は逆転する。
「バカ言ってんじゃないよ!ったく、痛かったじゃないの」
美里は壁に手をついて、こちらを睨んだ。そしてちょうど彼氏からメールが着たのか、壁ドンの体制のまま、スマホを扱いだす。
「……」
ちょっとぞんざいな感じだけど……やだキュンとしちゃう!壁ドンっていいもんだわ!
「んじゃ、帰るね」
あっさり踵を返し、美里は後ろ手を振る。
「ま、待ってよ美里!私とのクリスマスパーティーは!?」
「するなんて言ってない」
「さっき決まったばかりだからね」
「決まってもないでしょうが」
「それじゃあ私もそっちのクリスマスに参加する!」
美里はぴたりと止まり、呆れた顔で振り返った。
「はあ?」
私は胸を張った。
「絶対に行く!参加させてくれなきゃ、彼氏との仲を邪魔する!別れるまでする!」
「うざっ」
美里は歩きだす。私はその腰にしがみついた。
「本当に暇なんだよ、お願いだからちょっぴり仲間に入れてよ~!そしたら邪魔しないから!ご馳走とケーキ食べてたっぷり寝たら、朝には帰るからさあ~!」
「あんたはロウソク持って会社の予定でしょうが!」
「友達じゃんよ~~~」
「それが私の唯一の汚点よ!」
美里がそう言い放つ目の前で、黒塗りの長い車が静かに停まった。私たちは目をぱちくりさせる。
「なっが~……これリムジンってやつじゃん」
「本当だ……。ダックスフンドみたい」
スーツ姿のお兄さん(たぶん執事のような役割)が、後部座席を開く。
「詩絵子さん、お久しぶりです」
中から出てきたのは、なんとなんと美雪さんだった。
「なぜ連絡を下さらなかったんですか?私、ずっと待ってたんですよ」
コツ、コツ、控えめなヒールの音を立て、彼女は近寄ってくる。私は後ろへのけぞった。
「あ、あの、それは、その……」
「ううん、気にしないでください。今日こうして一緒に過ごせるんだもの。私、友達と遊ぶのって初めてかもしれません。詩絵子さん、楽しいクリスマスにしましょうね。ふふふ」
隣で、すすす……と美里がフェードアウトしようとするのを感じた。私はすぐに美里の腕を掴んだ。
「ど、どこ行く気よ……?」
「どこって……ははは、クリスマスの予定決まって良かったじゃない私はいいと思うな~友達同士でクリスマスパーティーって」
美里……思い切り目ぇ泳いでんじゃん……。
「さあ、詩絵子さん、乗ってください」
「!」
美雪さんが一歩、近づく。私は後ろから美里の身柄を確保した。
「ちょ、なにすんのよ!?」
「美雪さん!この人私の友達なんです!ご一緒してもいいですよね!?美雪と美里で奇跡てなくらい名前も似てるし、ご一緒していいですよね!?」
「なに言ってんのよ!急に私が行っていいわけないじゃん!非常識よ!」
暴れる美里を開放し、私はメガネを装着した。
「ふっ……美里。私たちは一心同体、一蓮托生、運命共同体の仲……そうだろ……?」
私はリムジンの中に蹴り入れられた。
「くっそお!美里めえ!」
続いて美雪さんも乗り込み、車はすみやかに発進する。
「ど、どこに行くんですか!?」
「ふふ。秘密ですよ」
「…………」
も、もしかして……、これって誘拐なんじゃ……!?
つづく☆彡
応援ありがとうございます!
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