ドМ彼氏。

秋月 みろく

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「変態VS変態VS変態」

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「い、今のはたまたま……ぁ、青色でござる」

『青ね』

「うむ」

『……』

「……」

『……ところで、青色はどういう意味かしら?』

「……」


 ザ・無意味!無意味・オブ・ザ・無意味!!

 こいつすごいやつかと思ったけど、ただのろし上げたかっただけのヤツじゃん!無線持ってんのにやっちゃう駄々っ子じゃん!こんな無駄行動みたことねーぞ!

 …………ぅうっっ。不憫すぎるッ……。

 朔はいたたまれなくなって、思わず顔を背けました。お侍さんの寂しい背中を、もう見ていられなかったのです。不憫には思ったのですが、朔も我慢できなくなり問いかけてみました。


「なあなあ、のろし上げるより無線で通信した方が早いじゃん?なんで煙で伝えようとすんの」


 通信を切った侍の背中に投げかけると、明らかな動揺を見せました。お侍さんは、こちらを見ないまま小さく答えます。


「……せ、拙者、のろしなら素早く上げられるでござる。こんな複雑な機械で通信するよりよっぽど早い」

「そうか?ボタンひとつじゃねーの?」

「……そ、そうとも言うかもしれんが……」

「ボタンひとつ。そんですぐ終わるのに、なんでわざわざのろしなんて使っちゃうんだよ。で、その格好はなんなの。ていうか、なんで俺の名前知ってんだよ?あんた誰」

「あ、あう……この格好は、その、なんじゃ、忍者の」

「ええーー!忍者なんだ?侍じゃなくて?なんでなんで、袴じゃ忍者っぽくねーよ。侍だよサムライ!てゆーかあんた、よく見たら外人さんじゃん。日本語うまいんだね。口調はサムライってよりトノだけど」

「きょ、今日はたまたま、こういう格好で……忍者用の衣服もちゃんと……」

「ねえねえ、ところであのヘリって何?あんたの友達が乗ってるわけ?」

「み、美雪殿は友達ではなく……」

「てかヘリ持ってるってなに?超ブルジョワじゃん。今度店きてよ。いい男そろってるからさ。もちろんナンバーワンは俺ね」

「……」

「なんならあんたもいいけど。歓迎するよ。はいこれ、俺の名刺」

「――――カーーーーッツ!!」


 お侍さんは唐突に叫び、笑顔で差し出した名刺を百人一首の名手のごとき素早さで弾き飛ばしました。


「あ!俺のめい」

「喝!!いっぺんに質問をするな!貴様のようないかがわしい下半身男に、美雪殿を会わせるわけなかろう!」

「ひっでー。偏見だ偏見」

「知らん!そうじゃ、思い出したわッ!拙者は詩絵子殿を探しておるのじゃ!貴様に構っとる暇はない!」

「構ってる暇はないって、あんたが引き止めたんだろ。俺の足元にブスッとナイフを刺してさ」

「さっさと詩絵子殿のところへ案内せんか!この山の辺りで詩絵子殿の位置が確認できなくなってから、美雪殿はたいそう心配しておるのだ!」


 お侍さんは、その薄青い目を鋭くさせて息を巻きました。朔はげんなりとして大きな溜息をつきます。


「はあ~なんなのあいつの周りは……いったい何人に監視されてんだよ、あのお子様は。じゃ、行く?たぶんあっちの方だし」

「なに!?誠か!?それを早くいえ!」

「いいから行こうぜー。あいつ足短いから、たぶん追いつけるよ」


 そう言って歩き始めてから、朔はあることに気がつきました。

 森……、ヘビ……。ランドセルみたいなのを背負った、ちっちゃい清水とちっちゃい俺……。たしか俺たちは、ボノレルっていう樹から出る万能な蜜を取るために森に入って……ヘビと遭遇して……。

 あれ?ヘビと遭遇して、どうなるんだっけ―――…?




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