助けたご令嬢に惚れられた〜非モテ親父の何処がいいんだ?〜

水河忍

文字の大きさ
31 / 61

おっさん、堪忍袋の緒が切れる

しおりを挟む
 白菊女学園の敷地はマンモス大学の敷地くらいはある。
 外周を散歩で歩いて巡るのに1時間はかかるとの噂だ。
 そんな敷地を都会の一等地

駐車場に着くと、既にお迎え用であろう高級車が並んでいた。

 高級車の前には姿勢を正したスーツ姿の人たちが立っている。
 一目で高級品と分かる身なりで、いかにもお金持ちのお抱え運転手という姿。
 それに対して俺の姿はTシャツにジーンズにスニーカー。

 ……外で待たないと綾華は俺を見つけられないよな。
 本当なら車内でタバコを吸いながら待ちたいが借り物の車じゃそれもまずい。
 止むえず、俺も車を出て待つことにした。

 途端に周りの視線が俺に突き刺さってきた。
 明らかに俺を訝しむ視線ばかりだが、無視するに限る。
 昔みたいなガンの飛ばしあいは、上流階級の方々には無意味だろう。
 物理的な暴力より権力的な暴力で負けるにきまってる。

 何事もなくやり過ごそうと思い、遠くの景色を眺めていると足音が近づいてきた。

「失礼、貴方はどこの家の運転手かな?」

 声をかけられた方を見ると長身の黒髪の若いイケメンがスーツ姿で立っていた。
 他の運転手はそれなりに年を取っているが、こいつはせいぜい20代後半ってところかな。
 運転手特有の白い手袋をしていなければ、俳優かモデルでも納得だ。
 多少の面倒臭さを感じながらも、俺は正直に答えた。

「四条家ですけど?」
「ふ、嘘を言ってはいけません。四条家の運転手はもっと品のある方だ」

 何こいつ喧嘩売ってる?
 しかも、今さりげなく俺には品がないって言ったよな。
 確かに上流階級の品の良さなんてみじんも持ち合わせちゃいなけどよ。

「いつもの運転手が病欠なんで俺が代わりに迎える様に頼まれたんですけど?」
「ふ、仮に代理だと四条家であればもっと違う人物を迎えに行かせるはずです」
「いや、違う人って言われてもな」
「ハッキリ言いましょう。貴方の様に太っていて服装も品性の欠片もない人が、名誉ある白菊女学園に通うお嬢様方の運転手と務めるなどあってはならないのです!」

 うわ、めんどくさ!?
 こいつはアレだ、絡んだらトコトン絡んでくる面倒くさい奴だ。
 なんか良く分からない理屈で絡んでくるウザ絡みだ。

 学生時代の頃なら、こういう上等ケンカは良く買ったんだけどなぁ。
 こいつは喧嘩を売っている自覚もないんだろうけど、面倒くさいから無視だな無視。
 そうと決め込んだら俺には何を言っても馬耳東風。
 おうおう、こちらが言い返さない事を良いことに何か言ってますな。
 だが、前職で鍛えたパワハラ上司の小言スルースキルを舐めるなよ。
 小言中に他の事を考えてりゃストレスなんて溜まらない。

「もし、貴方の言う事が本当なら四条家の品位も陰りが見え始めたということですね」

 あ? お前いまなんつった?

「かつては経済界の絶対的地位にいた四条家が貴方みたいな人を雇うこと自体、凋落の証拠……」

 その瞬間、俺の中で何かが切れた。
 気づけば、イケメンの胸倉を掴み、股に膝を割り込ませ車に押し付けていた。

「おい、お前、言っていい事と悪いことがあるんじゃねえか? 俺のことはいくら何を言われてもスルー出来るが、世話になっている四条さんのことまで悪く言われてちゃ、流石にスルー出来ねえわ。今の発言取り消せよ?」

 イケメンは突然のことに目を白黒させうろたえている。
 周りの他の運転手たちの中には割って入ってこようとする人もいたが、一睨みで黙らせらた。
 更にイケメンの襟元を締め付け、押し付ける力を強めた。

「もう一度言うぜ? さっきの発言取り消せよ、なあ?」
「わ、わたひは何も間違ったこと言ってにゃい。あ、貴方の様な人は」
「そこはどうでもいい。その後だ」
「し、四条家のこともおにゃず。長男が死んで以来、後継ぎがいにゃ※△□」

 腹に一発ぶち当てた。イケメンはたまらず地面にうずくまる。
 流石になぁ、四条家の亡くなった人のことまで引き合いに出すとかなぁ。
 ないわぁ、流石にこいつ無いわぁ。

「何をしているんですの!!!」

 イケメンをどうしてくれようかと思っていたところに、柔らかだが人をひきつける場違いなソプラノ声が割り込んできた。
 声の方を振り向くと小柄だが大人びた童顔の美少女が制服姿で立っていた。

「貴方、確か綾華さんと一緒にいた方ですわね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...