ETDの雑用係

とりい とうか

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二章 シェムハザ

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「……とまぁ、このような経緯で出逢ったのですが」
「取り敢えず手を離してくれないかなぁ……」
「何故?」
「何故と来たもんだぁ……」

 エロトラップダンジョン最上階、研究室。ダンジョンの主人は研究のため中階層へ、必然ここにいるのはノーイとシェムハザの二人である。
 本日のノーイは昔取り込んだ女冒険者の姿、黒髪碧眼の褐色肌。元々の装備は踊子(舞い踊る四肢の動きで魔力を操り、自他を強化する技能を持つ職業である)の、露出度の高いそれだったが、シェムハザが来ると感知した瞬間全身鎧に変更した。
 対してシェムハザはいつも通りの平神官姿。大神官としての正装は動きにくいと言って憚らないが、ノーイからすれば動きにくい方が助かるのでそちらを着てほしいと常に願っている。叶ったことはない。

「友人とは手と手を繋いで遊びに行ったりするものでしょう?」
「知らねぇよぉ……でも少なくとも今嘘つかれてるってのはわかるぅ……」
「神官は」
「嘘はつけないけど、当人が心から信じてることは嘘って判定されないんだろぉ……」

 合掌した(ノーイ視点で語るならばさせられた)ノーイの手を包み込むように握り、にこ……と柔らかく微笑んでいるシェムハザ。そう、シェムハザの視点では全く嘘をついていない。友人とは手と手を繋ぐものである。

「それで、体力回復用ポーションの瓶から貴女の居場所を探ろうとしたんですができなくて」
「それ聞いてあの時ギルドの薬渡しててよかったなって思ったよ、既製品だからなあれは」
「仕方がないのでヴォジャノーイという名前で塔の名簿を調べたり……」
「何で見れるの? あれ、塔の偉い人が三人同意してないと見れない仕組みとかじゃなかった?」
「三人同意したら見れるんですよ」
「あっはい」
「そうこうする内に、魔王の右腕の噂を耳にして」
「あぁ~」
「以降、魔王の右腕を倒すという名目で色々と調べられたので楽でしたね」
「やっぱ最悪じゃんあの称号~!!」
「そして大神官として貴女の居場所が判ればまぁ率先して行かなきゃなと」
「それで何か遭遇率高かったの? え? 勇者っつーかアンタからはちゃめちゃに狙われてるなとは思ってたけど」
「でもいざ顔を見ると……素直に話せなくなって……」
「頬染めるな、何も頬染める要素なかったからな、毎回初手で光の鎖放ってきてたのってもしかしてそういう?」
「落ち着いて話そうと思うと、どうしてもこう……うまくいかなくて……」
「最悪の化身か?」

 えいや、と合掌させられていた手を離し、シェムハザの手をも振り払うノーイ。すると、あまりにも自然な動きで――万歳のような姿勢になっていたノーイの脇の下に手を添え、持ち上げるシェムハザ。

「なになになにオレはいまなにされてんの」
「猫みたいで可愛いですね」
「何も可愛くはないが!?」
「とろんと両足が伸びてる所とか」
「それはお前の背が高いからだな!?」
「惜しむらくは顔があまり見えないことですけど……」
「見せないために着込んでますからなぁ!!」
「『崩れろ要塞』」
「おまっ……!!」

 ばちこーん、と留め具という留め具が弾けて落ちた全身鎧。中級聖魔法の効果で防具を吹き飛ばされ、己の影で作った下着のみの姿にされたノーイが暴れる。
 シェムハザは、それこそ猫や犬を愛でるような優しい笑みのままノーイの蹴りを受けていた。平神官の服とはいえ、魔法でがちがちに強化している。多少蹴られようがびくともしない。

「こんなことで中級魔法を使う馬鹿がいるか!!」
「顔が見たかったので」
「顔っつーかお前、オレが影で隠してなかったら全部丸出しになってたよ!!」
「貴女を構成する全てにおいて見苦しい所などありませんが?」
「お前がどうじゃなくてオレの気持ちとか考えない感じ!?」
「……たくさん騒いで喉が渇いたんじゃないかなと。インベントリに冷やした果実水を入れてきたんですけど飲みますか?」
「……何の果物が入ってる?」
「この時期ですので葡萄が主ですね。葡萄酒と違って苦味もなく、すっきりと甘くて美味しいですよ」
「……飲む」
「わかりました」

 うまく誤魔化された気がしているノーイ(うまくというか、食い気に負けている)。にこにこと微笑むシェムハザから葡萄水を受け取り、その冷たさと甘さに相好を崩している。それを見ながら、シェムハザも葡萄水を口にした。甘い、甘い味がした。
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