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三章 ペイン
六
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シェムハザが丁寧に説明を繰り返して、ようやくノーイの誤解が一部分解けた次第である。シェムハザ曰く、筋肉痛には充分な休養と、可能ならばマッサージによる緊張の緩和や血流の促進が必要となるとのこと。ノーイは渋りに渋ったものの、この後の仕事に思いを馳せ――シェムハザによるマッサージを受けることにした。
なお、筋肉痛とは肉体を持つ者、人間や人型のモンスターに起こりうる現象であり、ノーイに関しては一度変化を解けば大幅に緩和されるものである。ダンジョンの主人はそれを知っていたのでノーイに何も言わなかったし、シェムハザも薄々気づいてはいたが、ノーイのためにできることが減ってしまうため意図的に口をつぐんでいた。神官は嘘をつけないが、黙っていることはできるのだ。
「では失礼します」
「おう」
研究室の隣、生活空間、ノーイの自室。一応程度に人間らしい生活を送るためのあれこれを置いてある場所で、勿論ベッドもある。その寝台の上で俯せになったノーイは、よいしょ、と己の背中に乗ったシェムハザの重みを感じ、
「えっ……嘘、何か体重増やす魔法とか使ってる……?」
「あ、苦しかったですか? ちょっと待ってください」
「や、苦しくはないけど思ってたより重くて驚いた」
「あぁ、長年鍛えていたら見目は細くなるんですけど、全体の重さは変わらない……いえ、むしろ増えるんですよね」
ずし、と、ちょっとやそっとじゃ抜け出せそうにない感覚に目を丸くしていた。あれ体が痛いのを治してくれるっていうから許可したけどこれはかなりやっちまったってヤツなのでは? とノーイは今更ながらに後悔した。いつだって後から悔やむからこそ後悔と呼ぶのだ。ノーイはまたひとつかしこくなった。
「はー……人間の体って不思議……」
しみじみとそう呟き、頭を抱える代わりと枕に頭を沈めた。そんなノーイの上で、シェムハザは腕まくりをする。
「では始めます、痛かったり違和感があったりしたら言ってくださいね」
「はぁい……」
最初は肩の辺り。ぐい、ぐい、と、揉まれるというよりは引き伸ばされているような感触。ノーイは料理人の手によって捏ねられるパン生地の気持ちってこんなのかもしれない、などと思っていた。
時折、ごりごりと固い部分を強めに刺激される。じわりと広がる温かみに、なるほど血流がどうこう……とノーイはついさっき教えられたことを思い返した。何というか、こう、ほっこりした気分になってくる。
「んぁ~……そこ……」
「痛かったですか?」
「や、もっとやっていい……じんわりきもちいい……」
対してシェムハザは、あれだけ拒否していたマッサージを受け入れてくれたことに感動し、次いで――劣情を催していた。今のノーイの姿はいつもの中年冒険者のそれだが、シェムハザにとって見目はあまり関係ない。
寄せられた信頼と、本来ならシェムハザのことなどどうとでもできるのにそうしないことと。それこそ、ノーイから破級死魔法の一つでも向けられればシェムハザは呆気なく死ぬ。だというのに、ノーイは何だかんだシェムハザを友人のように扱ってくれる。
そう、友人だ。シェムハザはノーイに対して重量級の愛情だの執着だのいった感情を抱いているが、ノーイはそうではない。だから、劣情を催したからといって欲のままに動けば、その関係は容易く壊れてしまう。
シェムハザは考える。このまま事に及ぶことはできない、が、我慢もできそうにない。だったらどうすればいいのか、天啓はすぐに降りてきた。
「あの」
「んぁ? なに?」
「劣情を催したので、性行為に至っても良いでしょうか?」
「素直に全部言えば許されると思ったの? 何で?」
なお、筋肉痛とは肉体を持つ者、人間や人型のモンスターに起こりうる現象であり、ノーイに関しては一度変化を解けば大幅に緩和されるものである。ダンジョンの主人はそれを知っていたのでノーイに何も言わなかったし、シェムハザも薄々気づいてはいたが、ノーイのためにできることが減ってしまうため意図的に口をつぐんでいた。神官は嘘をつけないが、黙っていることはできるのだ。
「では失礼します」
「おう」
研究室の隣、生活空間、ノーイの自室。一応程度に人間らしい生活を送るためのあれこれを置いてある場所で、勿論ベッドもある。その寝台の上で俯せになったノーイは、よいしょ、と己の背中に乗ったシェムハザの重みを感じ、
「えっ……嘘、何か体重増やす魔法とか使ってる……?」
「あ、苦しかったですか? ちょっと待ってください」
「や、苦しくはないけど思ってたより重くて驚いた」
「あぁ、長年鍛えていたら見目は細くなるんですけど、全体の重さは変わらない……いえ、むしろ増えるんですよね」
ずし、と、ちょっとやそっとじゃ抜け出せそうにない感覚に目を丸くしていた。あれ体が痛いのを治してくれるっていうから許可したけどこれはかなりやっちまったってヤツなのでは? とノーイは今更ながらに後悔した。いつだって後から悔やむからこそ後悔と呼ぶのだ。ノーイはまたひとつかしこくなった。
「はー……人間の体って不思議……」
しみじみとそう呟き、頭を抱える代わりと枕に頭を沈めた。そんなノーイの上で、シェムハザは腕まくりをする。
「では始めます、痛かったり違和感があったりしたら言ってくださいね」
「はぁい……」
最初は肩の辺り。ぐい、ぐい、と、揉まれるというよりは引き伸ばされているような感触。ノーイは料理人の手によって捏ねられるパン生地の気持ちってこんなのかもしれない、などと思っていた。
時折、ごりごりと固い部分を強めに刺激される。じわりと広がる温かみに、なるほど血流がどうこう……とノーイはついさっき教えられたことを思い返した。何というか、こう、ほっこりした気分になってくる。
「んぁ~……そこ……」
「痛かったですか?」
「や、もっとやっていい……じんわりきもちいい……」
対してシェムハザは、あれだけ拒否していたマッサージを受け入れてくれたことに感動し、次いで――劣情を催していた。今のノーイの姿はいつもの中年冒険者のそれだが、シェムハザにとって見目はあまり関係ない。
寄せられた信頼と、本来ならシェムハザのことなどどうとでもできるのにそうしないことと。それこそ、ノーイから破級死魔法の一つでも向けられればシェムハザは呆気なく死ぬ。だというのに、ノーイは何だかんだシェムハザを友人のように扱ってくれる。
そう、友人だ。シェムハザはノーイに対して重量級の愛情だの執着だのいった感情を抱いているが、ノーイはそうではない。だから、劣情を催したからといって欲のままに動けば、その関係は容易く壊れてしまう。
シェムハザは考える。このまま事に及ぶことはできない、が、我慢もできそうにない。だったらどうすればいいのか、天啓はすぐに降りてきた。
「あの」
「んぁ? なに?」
「劣情を催したので、性行為に至っても良いでしょうか?」
「素直に全部言えば許されると思ったの? 何で?」
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