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十一章 ランスロット
二
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「巫女三姉妹の」
「出番だと」
「聞いて!!」
「帰って!! あ、やっぱいてごめん」
ノーイの掌はくるくる回る。
さて、シェムハザが鉛入りの葡萄酒がどこからきたのかを調べに戻っている間のエロトラップダンジョン、中層の秘匿区域である。ここではノーイが拾ってきた巫女三姉妹、先読みの巫女アルカディア、星詠みの巫女アリーシャ、神降しの巫女アークが暮らしている。
あまりにもきな臭い状況故に、ダンジョンの主から命じられたノーイもまた、あの鉛入りの葡萄酒について調べていた。シェムハザは、ノーイから見ればとうに様子のおかしくなっている人間でしかないのだが、教会内にてかなりの権力を有する大神官である。更に、魔王討伐を果たした勇者のパーティーメンバーとして、高位貴族並みの発言力まで持っている。
正直、厄介な人間ではあるのだ。教会内部から見れば、教皇の地位を脅かしかねない存在。王国からすれば、いくら国教とはいえ宗教絡みのルーツを持つ準貴族。これを魔王軍になぞらえて考えるなら、まぁ殺しておきたいよなぁとノーイは頷いた。
「教会についてはこちらに」
「先読みって便利過ぎない?」
「これから先の教会の動きはこんな感じ」
「星詠みってそういうこともできるんだ?」
「……可愛さで神様を癒やします!!」
「無理しなくていいから、頭突き止めて」
巫女三姉妹も、敵だとしたら何をおいても殺しておきたい存在だが。ノーイは、教会の現状とそこから導き出される今後の動きについて、なんて流麗な字で書かれた紙束を流し読みしながら考えた。ついでに何故かノーイの脇腹に向かってどすどすと頭突きを繰り返しているアークの影を踏んで動きを止めておく。
動けないー!! と騒ぐアークをよそにアルカディアの文字を追う。教会は今、大神官派と教皇派に分かれて暗闘を続けているらしい。とはいえ、当の大神官であるシェムハザは無関係で、周りの人間が勝手に担ぎ上げているだけとのこと。
「いや、この情報どこから?」
「伝手から」
「星々から」
あまり深く聞かない方がいいらしい。特に伝手の方。ノーイはうごうごと抵抗するアークの影から足を離した。うぎゃ!? と潰れた蛙のような悲鳴とともにアークがすっ転ぶ。
その間に読み進めた内容は、これからの教会の動きについて。大神官派は教皇を引きずり下ろして大神官を教皇とし、王国に強く意見できる立場を確立したい。教皇派は大神官を追い出すなり何なりして、今の地位を堅守したい。故に、互いの陣営が互いの落ち度を探していて、なければ作れの勢いである。
「鉛入りの葡萄酒は、大神官派の愚か者が手配したようですね」
「教皇派じゃなくて?」
「大神官様はご自身で解毒できるから、大神官様が葡萄酒を飲んでも飲まなくても、最終的には教皇派が害意をもってやったのだと訴えるための策かと」
「アイツ気づいてなかったけど……いや、オレが先に色々やっちゃったからかぁ?」
あの時、ノーイが鉛に気づいてシェムハザを助、いや、ノーイを暗殺しようとしたんじゃないかと疑って取り敢えず生かして尋問したから、シェムハザ自身が鉛に気づけたかどうかは不明である。とはいえ、シェムハザは鉛の害を知っていた。うーん、とノーイは顔をしかめる。アルカディアはたおやかに微笑みながら問うた。
「潰しますか?」
「何を?」
「教会を」
「止めなね……危険な発言は本当に止めなね……!!」
笑みと言葉が一致していない。ノーイは冷や汗を垂らしながら、どこからともなく長鞭を取り出したアルカディアを必死で止めるなどした。
「出番だと」
「聞いて!!」
「帰って!! あ、やっぱいてごめん」
ノーイの掌はくるくる回る。
さて、シェムハザが鉛入りの葡萄酒がどこからきたのかを調べに戻っている間のエロトラップダンジョン、中層の秘匿区域である。ここではノーイが拾ってきた巫女三姉妹、先読みの巫女アルカディア、星詠みの巫女アリーシャ、神降しの巫女アークが暮らしている。
あまりにもきな臭い状況故に、ダンジョンの主から命じられたノーイもまた、あの鉛入りの葡萄酒について調べていた。シェムハザは、ノーイから見ればとうに様子のおかしくなっている人間でしかないのだが、教会内にてかなりの権力を有する大神官である。更に、魔王討伐を果たした勇者のパーティーメンバーとして、高位貴族並みの発言力まで持っている。
正直、厄介な人間ではあるのだ。教会内部から見れば、教皇の地位を脅かしかねない存在。王国からすれば、いくら国教とはいえ宗教絡みのルーツを持つ準貴族。これを魔王軍になぞらえて考えるなら、まぁ殺しておきたいよなぁとノーイは頷いた。
「教会についてはこちらに」
「先読みって便利過ぎない?」
「これから先の教会の動きはこんな感じ」
「星詠みってそういうこともできるんだ?」
「……可愛さで神様を癒やします!!」
「無理しなくていいから、頭突き止めて」
巫女三姉妹も、敵だとしたら何をおいても殺しておきたい存在だが。ノーイは、教会の現状とそこから導き出される今後の動きについて、なんて流麗な字で書かれた紙束を流し読みしながら考えた。ついでに何故かノーイの脇腹に向かってどすどすと頭突きを繰り返しているアークの影を踏んで動きを止めておく。
動けないー!! と騒ぐアークをよそにアルカディアの文字を追う。教会は今、大神官派と教皇派に分かれて暗闘を続けているらしい。とはいえ、当の大神官であるシェムハザは無関係で、周りの人間が勝手に担ぎ上げているだけとのこと。
「いや、この情報どこから?」
「伝手から」
「星々から」
あまり深く聞かない方がいいらしい。特に伝手の方。ノーイはうごうごと抵抗するアークの影から足を離した。うぎゃ!? と潰れた蛙のような悲鳴とともにアークがすっ転ぶ。
その間に読み進めた内容は、これからの教会の動きについて。大神官派は教皇を引きずり下ろして大神官を教皇とし、王国に強く意見できる立場を確立したい。教皇派は大神官を追い出すなり何なりして、今の地位を堅守したい。故に、互いの陣営が互いの落ち度を探していて、なければ作れの勢いである。
「鉛入りの葡萄酒は、大神官派の愚か者が手配したようですね」
「教皇派じゃなくて?」
「大神官様はご自身で解毒できるから、大神官様が葡萄酒を飲んでも飲まなくても、最終的には教皇派が害意をもってやったのだと訴えるための策かと」
「アイツ気づいてなかったけど……いや、オレが先に色々やっちゃったからかぁ?」
あの時、ノーイが鉛に気づいてシェムハザを助、いや、ノーイを暗殺しようとしたんじゃないかと疑って取り敢えず生かして尋問したから、シェムハザ自身が鉛に気づけたかどうかは不明である。とはいえ、シェムハザは鉛の害を知っていた。うーん、とノーイは顔をしかめる。アルカディアはたおやかに微笑みながら問うた。
「潰しますか?」
「何を?」
「教会を」
「止めなね……危険な発言は本当に止めなね……!!」
笑みと言葉が一致していない。ノーイは冷や汗を垂らしながら、どこからともなく長鞭を取り出したアルカディアを必死で止めるなどした。
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
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