ETDの雑用係

とりい とうか

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十二章 ヴォジャノーイ

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 ぴり、と空気が震えた。ヴェルシエルとランスロットが抜剣し、シェムハザとパリカーが唇を引き結ぶ。ショクは目を丸くし、ダンジョンの主が僅かに呻いた。そんな中、ペインの一部である小蜘蛛は笑う。

「皆殺しかの?」
「そんな面倒なことしねぇって……道を作ればいいだけだろ?」

 先と変わらぬ声に、しかし籠もる魔力は桁違いだ。低く、鬱々とした詠唱が響く。と、目の下に、首筋に、手の甲に、あらゆる箇所に開いた唇が蠢いた。

「終焉の最終句は知ってるだろ? 終わる直前に塔をしまえ」
「そういえば、死魔法を見たがってたな。隠すのも面倒だから、見たけりゃ見せてやる」
「星魔法を使えるなら、姿を隠す魔法、使えるだろ? 星詠みの巫女と一緒にオレ以外の姿を隠しとけ」

 それぞれ話しかけられた者が、驚きつつも従う。その間にも、詠唱は続いていた。上級魔法よりも長い、破級死魔法の呪文だ。そして、ぐちゃぐちゃに蠢いていた唇たちが、ぴたりと一言、唱和した。

「『終焉を、此処に』」

 刹那、ダンジョンの主はダンジョンを己が内へとしまった。ぱ、とその場にいた全員が外へと放り出される。続いて、パリカーとアリーシャが星魔法の一つ、姿隠しの魔法を発動させる。瞬間、ヴォジャノーイを中心に魔力の渦が生まれ、澱み、「終焉」が姿を現した。

「一体何が……ひっ!?」
「な、何でこんな所にリーパーが……!!」

 それは、泥々とした闇のようなぼろ布をかぶっていた。頭と思しき場所からは、茶色く乾いた色をした嘴が突き出している。だが、それらよりももっと目立つのは、干乾びた鋭い鉤爪が握り込んでいる、巨大な草刈鎌。否、それは草を刈るものではない。魂を、命を、狩り獲るためのものだ。
 リーパー、それは死体という媒体を必要とすることが多い死魔法の中で、数少ない媒体不要の召喚魔法によって呼び出される存在だ。死魔法は無論、魂、闇、夜魔法を行使できる、自律思考型の魔法生物。端的に言えば、遭遇すれば必ず死ぬ、死という概念が形を持った化物。
 故に、ダンジョンへ突入しようとしていた神官兵たちが、冒険者たちが、瞬時に壊走した。騎士たちも同じだ。誰もが生き残るために、生き残る確率を僅かでも上げるために、全力で逃げる。そんな人間たちの様子を眺めていたリーパーは、嘴を微かに開き、カカカッと音を立てた。嗤って、いる。その音を聞いた人間たちは全員がそう感じた。
 そんな人間たちを眺めていたリーパーが、握り締めていた鎌を掲げる。コッ、カカッ、と嘴が打ち合わされて響いた音は詠唱。リーパーの影が長く伸び、数名の人間の影を縛った。悲鳴を上げる自由さえ奪われた者たちは、その目に絶望を湛えて硬直している。
 振るわれた鎌が、物理的に彼等を斬り殺すことはない。黒い刃をその身に通され、影の拘束を外された人間たちは、顔を歪めて絶叫した。回復魔法ではどうにもできない、魂への加害。強烈な苦痛にのた打ち回る人間たちを見下ろしたリーパーは、カカカッ、と嗤った。
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