未発達love game

椎名玲

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ねぇ?好きとは?

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黒木 空(くろき そら)

最近、彼氏(?)が出来ました?

黒木(………………ワカラナイ…………。)

父上様………。
僕は、多分…………。

〈好き〉というものが理解出来ていません。

〈好き〉に関するマニュアル本を読んでも、
全く理解出来ない。

怜(れい)くんに、「好きだ」と言われたけれど、何が好きなのか、何処が好きなのか、どんな意味の好きなのか。

好きって…………………………………………







      なんですか?



☆★☆★☆★☆★☆★☆★

考え過ぎて、リビングで眠ってしまった僕に、優しくソッと毛布を掛けてくれたお父さん。

散らばった本や雑誌を見たお父さんは………。


黒漆「…………空に………彼氏………?」


ねぇ……。
お父さん………。

僕は、何もワカラナイです。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★

僕が、学校へ行ってる間に、お父さんは、友達(恋人)の深井(ふかい)さんに、相談していた。

深井さんは、凄く腕の良いお医者さん。

体調が悪い時は、いつも深井先生のいる病院に、連れて行ってもらってる。

お父さんと深井先生は、古くからの腐れ縁。
違う。腐れ切った縁。
違う。腐った関係。
………全部合ってるよ。

二人は、隠してるけどね。

お父さんと深井先生が男同士で好きなのは、別に否定しない。

僕も、その血が流れてるのかな………?




黒漆「……ねぇー。聞いてる?」

深井「……ああ……。」

深井先生は、有名なお医者さん。
色々忙しいのに、お父さんは、僕の事で悩むと必ず深井先生に、相談しにワザワザ病院に行く。

黒漆「空にぃ~彼氏が~…」

深井「……ああ……。」

―――ぶちっι(`ロ´)ノ―――

黒漆「…ぅ…グス……ぅぅ……グス……」

深井「な、何だ!?…どうした?…何で泣いてるんだ…?」

黒漆「…だ、…っ……てぇ"~…グス……ふ…ぅ……かいがぁ"~……」

深井「…悪い……。…どうしても気になる患者が居たから、カルテを確認して…」

黒漆「…………深井は僕よりも患者様を愛してるんだね―…………ヒドイ。」

グレるお父さん。
深井先生は、お父さんの機嫌が悪くなるのが怖いらしい。
特に、今の状態は。

深井「すまん!ちゃんと、聞いてたから!あのー…あれか!空が反抗期を克服したっていう…」

お父さんの目付きが鋭くなる。

―――ギロリ―――

黒漆「……え……?」

深井(…怖っ!!)

お父さんが立上がり、深井先生にジリジリと、黒~い闇の目付きで、近付く。

もう、こうなると止まらないお父さん。

黒漆「ふ~か~い~…!!」

バキバキと手の指を鳴らしながら深井先生に襲いかかったお父さん。

でも、安心してね。
襲いかかるの意味は…………



性的な意味です。(僕は、まだ解らない)


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

黒漆「でねぇ~、空が恋に悩んでるみたいなんだぁ~♪♪」

深井「……ぁぁ……。……もぅ………そんな……年……か……ぁぁ………。」

黒漆「……深井?」

深井「……………なんだよ……?」

黒漆「一発抜いたくらいで、バテるなんて深井も年だね~~!!!♪♪」

深井「お前がハードなんだよ!!どれだけ攻められるんだよ!!ふざけんな!!」

黒漆「えぇ~♪?攻めは、深井じゃ~ん♪♪体力的に言ったら、キツいの僕だよ~?」

深井「……お前の誘い受けが強引すぎなんだよ……。」

黒漆「……フフ…♪……好きなくせに~♪♪♪」

深井「……はぁ~……何でこんな抜けてるんだよ……。」


お父さんと深井先生の意見は、

〈経験と体験が大切〉

らしい。

経験って、付き合う経験かなぁ?

体験って………………………………



       何ですか?


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

放課後、一人で帰ろうと教室を出た瞬間、廊下から凄い勢いで走ってくる金髪男子が、僕目掛けて突進してきた。

怜 「黒木ー!!」

はい。君は、いつも通りだね。
「好きだ」と言っても、何も変わらないね。
相変わらず、騒がしいね。
そして…………………………


     暑苦しいです。


黒木「…ぐ……ぐる…じぃ…!!」

怜 「あー良かったー!クラス違うから、帰りに間に合うか心配だったけど。一緒に帰ろう!」

黒木「…ぐぐっ……!!」

はよー離れてー!!

……………………窒息する。


怜くんは、僕と違って明るくて、友達も沢山いる。
顔立ちだって悪くないし。

……その分僕は、明るくないし、友達もそんなに居ないし、顔立ちだって…………。

男なのに、身長ないし、幼いし。
怜くんは、身長あるし、大人っぽいし。


何一つ共感出来る所無いんだけどなぁ~。


大体さぁー。
何で僕が怜くんの好きな対象になってるのかが………。

「好きだ」の意味って……

友達?って、意味だよね?



黒木「…………………。」

怜 「黒木?どうしたの?」

黒木「………別に。」

怜 「……ねぇ、黒木。」

黒木「……ン―?」

怜 「……好きだよ……。」


少しはにかんで怜くんは、僕に言ってきた。

直ぐに顔を正面に戻して何事も無いように歩いていたけど…………。

怜くんの顔が…………………
  



赤くなってたのは、分かっちゃった…………。



何故か、僕まで………………






   恥ずかしくなった。




   ……………何で?



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


結局、マトモな会話が出来ず、ここで道が違うのでサヨナラだ。

黒木「…じゃあ……サヨナラ…。」

怜 「ああ……ちょっと……待って。」

グッと、僕の両肩を掴んできた。
じっと見つめられると……。

確か、この前読んだ好きに関する本には、こんな感じの時の対応方法が、載っていた。


 全く覚えていない僕。


これ、何するの?
マズイの?

………………………………って、




顔が近ーーーーい!!!!


怜 「…黒木……いい…?」

黒木「……さぁーー………。」

この「さぁーー」には、意味が二つある。

一、「いい?」に対しての「さぁ?どうかなぁ?」意味。

二、血の気が引いてる。意味。

二。が、正解だよ。

黒木「………な、ナナナナナナナナナナ……」

怜 「………………は?」

メカになる僕に、怜くんは、多分引いた。
もう嫌なので、逃げるように帰りました。



そのあと、怜くんからLINEとか来ていたけど………

もう頭をあちこちに打ち過ぎて、いつの間にか………




   死んで(寝て)た。



☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆


黒漆「空ー、朝だよ!もう~!いつも夜更かししてるから、朝起きれないんだよー!」

黒木「…………いたい……。」

黒漆「え……。空……、もしかして………生理…」

僕は、お父さんが大好きだよ。
でも、この時ばかりは、メタクソに枕を顔面に、投げつけました。

朝食を食べながら、お父さんが僕に、

黒漆「空、恋人が出来たのかなぁ?そんなにイライラしてるなんて、今まで無かったから~♪♪」

黒木「……………お父さん。」

黒漆「んー?なーに?♪」

黒木「…………好きって……何……?」

お父さんが箸でつまんでた玉子焼きをポロリと落として、箸まで落とした。

お父さんの顔は、今まで見たことながないくらい引いていた。……と思う。



気を取り直して。
お父さんは、僕に聞く。

黒漆「空は、その子の事好きなの?」

黒木「………解らない……。」

黒漆「名前は?」

黒木「………れい……くん…。」

黒漆「…ねぇ空。僕も空の事は、好きだよ。…でも、それは、息子として。その、怜くんって人が言ってる好きは……、空がモヤモヤしてる〈恋〉って、意味だよ?」

黒木「……じゃあ…〈恋〉…なんだぁぁぁぁ~……………。」

黒漆「もぅ~♪♪そんな悩む事じゃないよ~?♪」

黒木「………〈恋〉って……いわゆる、お父さんと深井先生みたいな…」

黒漆「ダァラァジュガザギブアマ―!!!!」

意味不明な言葉を発して、滅茶苦茶に暴れまわるお父さん。
いや、
僕が未だに気付いてないと思っていたのか……。
言わなかった方が、お父さんの為だったかも………。


僕は、面倒になったので、少し遅れて学校へ向かった。

クラスで、それなりに仲の良い亜木人(あぎと)くんが、話しかけてきた。

亜木人「…珍しいな。遅刻してくるなんてさぁ。」

黒木 「……まぁ、そういう時もあるよ。僕だって…。」

亜木人「……へー。…勉強出来てスゲー真面目なのになぁ。」

亜木人くん。
イヤミですか?
僕だって人間だよ。
悩みがあって体調悪くなることだって、あるよ。

亜木人「……てかさー、お前最近さぁ―………。」

黒木 「…ン―?」

亜木人「……いいや。」

………………………………はい?


★☆★☆★☆★★★☆★★★

昨日の今日だから、流石に前みたいには、声かけてこないよね…。

さぁー、帰ろ………ぅ………………?………ぁぁ…………この………足音…………
来る!!

怜  「黒木ー!!」

何でーーーー!?!?!?

昨日、引いたよねぇ!?
僕の今までに無いテンパり見てさぁーー!!!


黒木 「……ぐ…ぐるじぃ…!!!」

僕が小さいといっても、すんごくチビな訳じゃないからねー!!
一応、高校生の設定だからねーー!!
皆が、背が高すぎるだけだからねーー!!


怜くん、体格が良いから抱きつかれると、プロレス技掛けられてる感じ……。

もう、ギブアップです。

怜  「黒木、今日も一緒に帰ろう!」

……………………待って。   ………今日も一緒に帰ったら…
……昨日と……………………………
………………………同じ事に……

……………………………………………

   イヤだ――――!!!

黒木 「…き、ききぎょーーーーーー…」

怜  「……………は?」

黒木 「…ギョーハヨカデス…」

怜  「……良かってー、良いよって、事だよね?じゃあ、帰ろう!!」

黒木 「………………ハイ。」

僕と怜くんをプラス、マイナスで例えたら………

怜くん  プラス思考
僕    マイナス思考



   間違いありません!!


★☆★☆★☆★☆★☆☆☆★☆

……気まずい。
何にも話しかけて来ないし、何を話したら良いのかワカラナイ……。

怜 「…黒木……あのさぁ…」

黒木「…………うん……。」

怜 「今週末、どっか行かない?」

黒木「………うん。……ん?…え?」

怜 「せっかくだからさぁ、一緒に行こうよ!」

黒木「……何処ニ行クノデスカ?」

怜 「えーっとー……。一応、考えとくから、黒木もどっか行きたい所あったら、言って。」

黒木「…………解リマシタ。検索シテミマス。」

怜 「……黒木……何かおかしいよ…。」

普通に喋れない。
もう、僕は、今日から怜くんの前では、ロボになります!


黒木「…デハ、ココデ、サヨオナラ…」

怜 「待てって!!」

怜くんが、僕の腕を掴んで引き止める。
ロボは、プログラム通りにしか動けません!!
進行妨害しないでよ―!!

怜 「もしかして…。…昨日の事、怒ってるの?」

はぁぁぁぁ???

怒るって、何に対して怒るの?
いや、僕が怒ってるんじゃなくて、怜くんに、変な態度取ってしまった僕を君が怒ってるんじゃないの?

黒木「…お、怒ってない。……あの……えっとー……。」

どんな風に言えば良いんだろう。
怜くんの言う「好き」とお父さんの言う「好き」は、違う。
だからと言って、〈恋〉の「好き」とも違う気がするし……。

そうだ……。

友達として「好き」って、意味だよ!
絶対そうだよ!
お父さんと僕は、勘違いしてただけだよ!!

いけない。
危うく少ない友達を傷つけてしまう所だったー。

怜 「黒木。あのさぁ…」

黒木「ご、ごめん……ナサイ……。」

怜 「………え?」

黒木「…あの、ホントに……傷つけてしまう勘違いをして……た……から……。」

怜 「………そっか。…解った。」

黒木「………………。」

「解った」?
怜くんが僕の腕を掴む握力が、一瞬だけ凄く痛かった。
その時見た怜くんの顔は……




凄く傷ついた顔だった。



怜 「…今週末の話は、せっかくだから、行こうよ………。……良いかな?」

黒木「…………うん………。」


ワカラナイ。
何で?
僕まで…………




傷ついた感じがするの?



★☆★☆★☆★☆★☆★☆☆☆★

黒漆「高校生が行ける場所?んー……。学生だと金銭的に、映画館とかショッピングモールとか、ゲームセンターとか、友達の家に行ったりとかぁ?」

黒木「…………むーん……。」

黒漆「友達って……誰?」

黒木「…………怜くん……。」

黒漆「…空、それは友達じゃないよ。恋人でしょ?」

黒木「………違う。」

黒漆「……いや、違くない。それにさぁー。そのお誘いはねー……。……〈デート〉だよー!♪」

僕は、お父さんが大好きだよ。
でもね、たまーに変な事を言うから、今日は、お父さんの大好きなブラックコーヒーを投げつけました。(ホット)


気を取り直して。

黒漆「あのねー、空ー。〈恋〉って言うのは、本当にそこら辺に転がってる石ころと同じだよ。その石から突然、凄く貴重な天然石を見つける感じ。」

黒木「………僕は、一般的な川底に沈んだ小さい石ころだよ………。」

黒漆「いや、確実に天然石だよ。空ほどの天然見たことない。本当に僕の子どもか疑っちゃう……。」

黒木「…間違い無くアナタの子どもだよ。お父さんも天然だよ……。」

黒漆「とにかく!!僕は、怜くんが空を〈恋〉と言う石ころで見てると思うよ。」

黒木「……………ムムム……。」

僕は、そう思えない。
だって、だって……………。


こんな僕に〈恋〉なんて……





     するワケがない


★☆★☆☆☆★☆★★☆★☆★

学校…………。
行きたくない。
…………でも、勉強遅れたくない。



亜木人「オハヨー。」

黒木 「……おはよう……。」

亜木人「何時にも増して…暗いな。」

黒木 「……いつもの事だよ……。」

亜木人「あのさぁ、今週末。空いてる?」

黒木 「…今週末………。」

亜木人「勉強。教えて欲しいトコあんだけど。」

黒木 「…学校じゃ、駄目なの?」

亜木人「別に。学校でも良いんだけどさぁ―……。」

黒木 「……………?」

亜木人「お前、何でアイツと帰ってんの?」

黒木 「……友達だから…別に……。」

亜木人「あのさぁ。悪いんだけど、友達があんな勢いで、お前に抱きついてるって………おかしいだろ?」

黒木 「………………………。」

僕は、それが怜くんなりのスキンシップ的なものだと思ってた。
良く仲の良い友達とかに触ってる感じに受け止めてたから。
おかしいとか………………………




   思いもしなかった。



亜木人「まぁ、お前が友達だって言ってんなら、別に良いけどさぁ……。…俺、ああいうのスゲー嫌いなんだよねぇ……。」

黒木 「………………………。」

亜木人「俺は、お前しか見てないからな。あと、お前の事を好きだって言う奴以上に、俺は、お前の事好きだ。」

黒木 「…………………はいぃ??」

あれ?
ん?
今……
亜木人くん………
なんて…………言った?

亜木人「……何?」

黒木 「………何デモアリマセヌ。」

亜木人「……何でロボなんだよ……。」




ようやく…………
帰れるのに………
亜木人くんに、言われた事が頭から離れないのと、昨日の怜くんの顔を思い出すと…………


一昨日以上の気まずさが出てくる。


……教室から出たくない。
……出ないと帰れない。
……出たら見つかる。
……どうしよう。

怜  「黒木ー。」

………教室出なくても、入ってくれば同じだよね……。

怜  「一緒に帰ろう。」

いつものように言われる。
怜くんは、何も気にしてない。
昨日の顔だって、多分………

気のせいだったかな……?

黒木 「……………ぅん……」

立ち上がり、鞄を肩に掛けて教室を出ようとしたら、

亜木人「悪い。今日は、黒木に勉強教えてもらう約束したから。」

怜  「………え?」

驚いたのは、怜くんだけじゃない。
僕も驚いた。
あの時の話だと、確か来週だったはずだから。

怜  「…黒木、そうなの?」

黒木 「……………ぁ……ぅ……。」

言葉が………
声が…………
どうしよう………
泣きそう…………

亜木人「あー。悪いな。黒木には、週末っておねがいしたんだけどさぁ。なんか予定あるみたいだったから、来週に変更したんだよ。」

怜  「来週なら、今日じゃなくても、良いんじゃない?」

亜木人「勉強ってさぁ、少しでも遅れるとマズイんだよ。それに、今日に限って数学全然解んなかったから、今日のうちに教えてもらった方が、お互いに良いだろ?」

怜  「………………………。」

険悪なムードだ………。
何でこうなったんだっけ…?

なんか……もうワケわかんない―――!!

亜木人「黒木。悪いんだけど、ちょっと日誌職員室に置いてきて。」

黒木 「…………パシり…。」

言われた通りに僕は、職員室に向かった。
二人がこの間に僕の知らない会話をしてることなんて、全く知らずに………。




怜  「……嘘…なんだろ?」

亜木人「……さぁー。俺は、事実しか言わない。」

怜  「…亜木人、お前が何か言ったんじゃないのか?」

亜木人「……何も。たださぁー。……勘に触るから、忠告だけだよ。」 

怜  「……………。」

亜木人「そんな怖い顔すんなよ。黒木の前だと幸せそーな顔でにやけてるクセに。良いじゃん!今週末は、デートだろー?あぁー。そう思ってるのは、お前だけな。黒木は、お前の事は〈友達〉って、言ってたから、とんだ勘違いだなぁ!!」

怜  「俺は、本気だ!!そんな鈍感な所も好きなんだよ!お前みたいに〈友達〉を〈友達〉だと思ってない奴に邪魔されたくねぇ!」

亜木人「……ああ……。…友達じゃねぇよ……アイツは。……〈恋愛対象〉……だよ。……お前と、同じ。」

怜  「お前には、負けねぇ。」

亜木人「今週末のdate gameぶっ壊してやるよ。」



僕は、まだ知らなかった。
今週末の出来事なんて。



さぁて……………



何処に、行けば良いんだろう…………






       ワカラナイ


###############          

ねぇ好きとは?  完
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