女神様の使い5歳からやってます

めのめむし

文字の大きさ
14 / 159
第2章 辺境編

第14話 お風呂

「御使い様は今後はどういう予定なんでしょうか?」

 ジョディがかしこまって言う。
それに美羽が不満顔で答える。

「美羽でいいよ。御使い様って私の名前じゃない」
「それでは美羽様と」
「ジョディちゃんには様って言われたくない。後、喋り方もさっきと同じにして」
「それじゃあ、美羽ちゃん。これでいいかしら」
「うん!」

 美羽がそれを聞くと嬉しそうに笑った。
その笑顔があまりにも無邪気だったので、みんながほっこりした。

「おねえさま、かわいいですわ」

 レーチェルが勢いよく抱きついてくる。

「きゃあ。もう、レーチェルってば」

 美羽がレーチェルの顔を撫でまくる。
レーチェルの頭がぐしゃぐしゃになり、キャッキャッと2人で騒ぐ。
散々じゃれあって、我に帰った美羽がジョディに言う。

「ごめんねジョディちゃん。話してたんだった」
「いいのよ。レーチェルと仲良くしてくれてありがとうね」
「うん! レーチェルと仲良くなったんだ」
「うふふ。……それで、この後はどうするの?」
「うーん、決まってないの」
「何か御使い様としてのお仕事でもあるのかしら」
「普通の御使いはあるらしいけど、私の場合は楽しんでって言われてるだけ。あ、でも、たまにフィーナちゃんに祈ってほしいってだけは言われてる」
「直接言われている使命とかはないのね」
「うん、あとは早く神気を強くして神界に遊びにいけばいいみたい」
「え、神界に行けるの?」
「うん、今はまだ神気が強くないから、神界に行くと体が持たないんだって。
私もフィーナちゃんに早く会いたいから、できるだけ早く神気を強くしないと」

 美羽はそう言いながら、自分の手のひらを見て、桜色の神気を少し出す。
ジョディはそれを眺めながら続ける。

「どうすればその神気は強くなるの?」
「神気をたくさん使えばいいみたい。だから、たくさんの人を安く治癒するんだ」
「そうなのね。それなら、人が多いところがいいわね。
やっぱり、うちの領都にくればいいわよ。そうすれば治癒が必要な人もたくさんいるわ。
治す人が少なくなってきたら、帝都に行くのも手ね」
「帝都は人がいっぱいいるの?」
「すごいわよ。人だらけね」
「どのくらい?」
「そうね、大きな道が人で歩けなくなるくらいよ」

 そう聞くと、美羽が驚いた顔をする。

「東京みたいだなぁ。そっか、じゃあ、まずは領都に行ってみようかな」
「それじゃあ、一緒にいきましょうね。領都には、美味しいスイーツのお店もあるわよ」

 そう聞くと、美羽は目を見開いた。

「きゃー、いきたーい」

 すると、すかさずレーチェルは美羽の腕に抱きついてきた。

「わたしも、おねえさまといきたいですわ」
「じゃあ、一緒に行こうね。レーチェル」
「はい!」

 レーチェルと顔を見合わせて笑顔になる美羽。
それを見てジョディは微笑んだ。

(ふふ、御使い様と言っても、まだまだ子供なのね)
「決まりね。あなた、いつ頃ここを出れるかしら?」

 すっかり影が薄くなってしまったモーガンによると、元々はこの街にはもっとたくさんの兵士がいたらしい。
それはすぐ近くにある、漆黒の森には魔物が多いから備えられてのことだった。
しかし、ここ最近さらに増えていると言う報告を受けて、領主一家は視察に来ていた。
ちょうど、3日前から、兵士団が森に魔物を間引きに行っているところをゴブリンに襲われたということだった。

だから、兵士団が戻るまで、この街を離れることができないとのこと。

遅くとも明後日までには戻ってくるらしい。

「それでは3日後に出発にしましょう。それでいいかしら美羽ちゃん」
「いいよ」

 美羽はそれほど興味なさげに答えた。
レーチェルのほっぺをツンツンするのに夢中だ。

「いいわね、あなた」
「ああ、それでいい」

 本来舵取りをするはずのモーガンはついでに聞かれるだけになってしまった。
これ以降、ルッツ伯爵家では、モーガンの発言力は弱まり、ジョディとレーチェルの発言力が強まっていくことになる。
モーガンの自業自得ではあるが、使用人たちは哀れな目で見るのだった。

 執事が来て、ジョディに耳打ちした。
執事も誰を立てるべきか心得ている。
モーガンは苦笑いを浮かべる。

「それじゃあ、ディナーに行きましょう。美羽ちゃん、好き嫌いはないかしら」
「ないよ。あ、苦いのはだめ」
「苦いのはないわよね」

 ジョディが執事を見ると、執事はすぐに答えた。

「ないはずですが、念のため確認しておきます」

 その後、食べたディナーは欠食児童だった美羽にはとても美味しかった。
美羽の食べる勢いは凄まじく、細い体のどこに入るのかと、感心してみられた。

 その後、ジョディとレーチェルとともに風呂に入った美羽。
2週間放置されていたからガリガリである。
神界ではお腹は空かなかったが、太るための栄養もなかったので、餓死寸前だった状態のままだ。
顔だけは、かわいそうだと、フィーナが神気でふっくらとさせていたのだった。

 あまりもの姿にジョディが驚いていた。

「なんてことなの」
「ご飯ずっとなかったから。もうすぐで、死んでいたところをフィーナちゃんが助けてくれたから、その時のままみたい」

 ジョディが涙を流しながら、美羽を抱きしめる。

「ご飯いっぱい食べようね。いっぱいわがまま言ってね」
「うん、ありがとね。ジョディちゃん」
「おねえさま、わたしのぶんもたべてください」
「レーチェル、それはダメ。ちゃんと食べないと。レーチェルは小さいんだから」
「わかりましたわ。それじゃあ、たくさんよういしてもらいましょう」
「うん。それはお願い」

 美羽とレーチェルが顔を見合わせて笑う。

 久しぶりのお風呂は気持ちよかった。
体の芯から、じんわりと疲れがお湯に溶けていくようだった。
美羽とレーチェルはジョディに左右に抱えられた。

「ここの邸にお風呂があってよかったわ。美羽ちゃんが入れるんだから」
「え、ないウチもあるの?」
「ええ、あるわよ。と言うか、ほとんどのうちがないわね。体を拭くだけよ」
「そうなんだー」
「りょうとのおやしきにもおおきなおふろがありますわ」
「わぁ、それは楽しみ」
「またいっしょにはいりましょうね。おねえさま」
「うん、いいよ」

 お風呂を上がると、部屋を用意されたが、レーチェルがおねえさまといっしょがいいと甘えてきたので、美羽とレーチェルはいっしょに寝ることになった。
美奈と寝ているみたいで、美羽は嬉しかった。

(美奈ちゃんが死んでどのくらい経ったんだろう。神界にいたからわからないんだよね。
あ、フィーナちゃんにお祈りしてないな。お祈りするのに何か欲しいな。仏像みたいな。今度作ろうかな。神気で作れるよね。……ママに会いたいな。でもジョディちゃん、ちょっとママみたいだった。
モーガンは……やっぱり大人の男は嫌いだし、怖い。貴族だから余計になのかな。
そうだ……明日の朝起きたら……歩きながら……張れる結界の練習し……よ)

 美羽は取り止めもないことを考えているうちに寝てしまった。
寝ている美羽の体が淡く桜色に光り、美羽とレーチェルを包んでいた。
感想 10

あなたにおすすめの小説

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!

竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。 でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。 何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。 王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。 僕は邪魔なんだよね。分かってる。 先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。 そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。 だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。 僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。 従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。 だけど、みんな知らなかったんだ。 僕がいなくなったら困るってこと…。 帰ってきてくれって言われても、今更無理です。 2026.03.30 内容紹介一部修正

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。