女神様の使い5歳からやってます

めのめむし

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第5章 崩れた日常

第136話 2回目

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「天使よ! 待たせたな。先程は油断したが、今度はそうはいかぬぞ」

 復活した魔王ガルヴォートが立っていた。
魔王は固有能力『再生』で復活した。

 この固有能力は魔力がある限り復活する。

 魔王軍でも、幹部クラスしか知らないことで、過去にこの再生を使って、強敵を倒したことも数度ある。
大概が死んだはずの魔王による不意打ちに、敵は驚愕の表情で倒れていく。

 しかし、美羽は直感によって、魔王が生き返ると予測していたので、不意打ちは受けなかった。
 
 「うん、遅い。まだ、たくさん殺さないといけないんだから、早く生き返って」

 美羽は顔色ひとつ変えずに言った。
およそ5歳児の言うことではない。

「フハハハハ! その意気や良し! 素晴らしい怒りと恨みを秘めているではないか。
我と同じよ」

 魔王の言葉に美羽が無表情をさらに冷たくして応える。

「不快。一緒にするな。その口をすぐに閉じさせてあげる」
「来い! 天使よ。我の力を今度こそ見せてやろう」

 魔王は赤と黒の禍々しい大剣に、魔力を注ぎ込む。
大剣は脈動したかと錯覚するように魔力を膨れ上がらせる。

 魔王が嬉しそうに、自分の大剣を見る。
 
「魔剣ゼラハード。久しぶりに能力を解放する。天使よ、この剣は一筋縄ではいか」
「うるさい」

 美羽が、魔王の言葉が終わる前に神刀コザクラで斬りつける。

 魔王が大剣で美羽の刀を受け止める。
その瞬間、大剣から魔力の刃が飛び出して美羽に襲いかかった。

 美羽は身長差があるため、斬りつけるときには、跳び上がる。
そのため、斬ると同時に攻撃が返ってくると、避ける術がない。

 魔王がニヤリと笑う。

 しかし、美羽は空中に神気で足場を作り、後ろに跳び魔力の刃を避ける。
この足場は、美羽がこの世界にやってきてすぐ、樽の中に隠れようとした時に、偶然発動させたのだが、それを思い出して、最近工夫したものだった。

 ちなみに、きんちゃんは、魔力で作れるが美羽は魔力で作ろうとすると、強すぎる魔力が暴走してしまうためにできない。

「まさか、あのタイミングで避けるとはな。素晴らしいぞ、天使よ」

 魔王が驚き美羽を誉める。
魔王はあくまで、余裕を持っている。
 
 美羽はそれには答えずに、着地して刀を右手に力無く提げて、無防備に立つ。

 体が左右にゆらゆらと揺れている。弱法師の構えだ。

 絶牙魔将リュグナに治癒魔法で、ある程度回復させられた炎斬魔将ヴォルクが叫ぶ。

「魔王様! その構えにお気をつけなされ。その構えは弱々しく見えて、攻撃したものを一撃で切り伏せる必殺の構えです」

 魔王は、感心したようにゆらゆらゆれる美羽を見る。

「ほう、隙だらけにしか見えんな。いつでも斬れそうだ。誘われて斬りかかってしまうのだろうよ。
しかし、どんな反撃が待っているかわからぬのか。その反撃が本物だとしたら、死角などないのだろう」

 美羽は何も言わない。ただ揺れているだけだ。

「だが、」

 魔王がニヤリと笑う。

「斬りかかってみなければ何も得られん!」

 魔王が真っ直ぐに美羽に突っ込む。

「むん!」

 魔王の豪剣が大気を震わせながら美羽の頭上に襲いかかる。

 見ていたものたちは美羽が二人になったように見えた。

 その二人のうちの一人の美羽の体を魔王の豪剣が叩き斬り床にぶつかる。
美羽の防護の神気がかかっていなかったら、床も砕け散っていただろう勢いだった。

 しかし、その瞬間、もう一人の美羽が神刀コザクラをすっと振り、魔王の左腕を切断した。

 あまりにも自然な動きだったので、誰もが……当の斬られた魔王さえも何が起きたか理解できなかった。

 魔王の左腕の肩の辺りから大量の血が吹き出す。

「ぬうう」

 魔王が呻き声を上げながら、左腕に集中すると、血が止まる。

 しかし、美羽は待っていない。
すでに左足の膝を斬り落としていた。

 ドサッ

 魔王が床に倒れる。

「魔王様!」

 リュグナの悲痛の叫びが上がる。
 
 魔王は体を起こそうとして、上半身を持ち上げる。

 すると、そこで無機質な美羽の目と合う。

「2回目」

 ザシュ。

 魔王の頭部は体から離れ、数メートル離れた地面に転がった。

「魔王様! おのれ、天使!」

 リュグナが美羽に向かって魔法攻撃をしようとすると……、

 グサッ。

 「あああああああ」

 リュグナの右肩に、長く伸ばした神刀コザクラの刀尖が刺さっていた。

「どっちでもいい」
 
 美羽が口を開く。喋らない美羽は恐怖心を煽るが、感情もなく喋り出したら、不気味さがます。 
リュグナが痛みに堪えながら、その意味を問う。
 
 「な、何が」

 美羽はリュグナを見て、興味なさそうに言った。

「お前たちの順番。お前たちは魔王の命令で来た。だから、お前たちが人間を殺そうと思っていたわけじゃない。
だから、魔王は生き返ったら絶対にすぐに殺すけど、お前たちは別」

 魔将たちは美羽の真意を計りかねて黙る。

「すぐに殺しても殺さなくてもいい。順番も早くても遅くてもいい。でも……」

 美羽は言葉を区切ってから言う。

「殺すのだけは決まっているから」

(け、結局殺すのではないか! 今の話はなんだったのだ)

 ヴォルクが内心で突っ込む。

 そんなヴォルクの内心を知ってか知らずか、美羽が無表情で問いかける。

 「さあ、誰から死ぬ?」

 美羽の無表情から溢れる殺気は凄惨の一言に尽きた。
常人ではこの殺気を浴びただけで死んでしまうだろう。それほど強い殺気を静かに放っていた。

 アゼルファードとヴォルクは美羽のその言葉に肝を冷やした。
アゼルファードもヴォルクも歴戦の魔将である。

 命をかける気概は当然持っている。

 しかし、今回は相手が悪かった。

 美羽を相手に何をしても無力な自分に、生まれて初めて無力感を感じてしまった。

 無力感を感じてしまった以上、今までの気概など通じるわけがない。

 死の恐怖に晒されてしまったのだ。

 死の恐怖に晒されたら、次に起きるのは死から逃れようとする思いのみ。

 しかし、命乞いなど魔将である以上、絶対にできなかった。

 体は震え、声が掠れ、思考がまとまらなくなった。

 誰から死ぬかなどと聞かれて、答えられるわけがなかった。

 自然にアゼルファードとヴォルクの顔が下に下がる。
完全に心が折れようとしていた。

「私が相手になるわ」

 絶望の中、立ち向かったのは、魔王に恋をする魔将、リュグナだった。
 
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