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第5章 崩れた日常
第149話 堕天使
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『神気封滅』
美羽の体が漆黒の邪神気に包まれた。
美羽の体にドス黒い邪神気が染み込んでくる。
それによって、美羽の神気が抑え込まれる。
そして、、何より頭頂部の百会のあたりの邪神気が神界との繋がりを断ち切ろうとしているのがわかる。
「いやああああああ」
「ミウちゃん!」
美羽は必死に抵抗しようとするが、もはや悲鳴を上げるしかできず、クララも動けずミウの名を叫ぶしかできなかった。
美羽には体感としてわかった。
この『神気封滅』が完成したときは、完全に神界とコンタクトが取れなくなり、女神レスフィーナとも会えなくなる。
神気術の全てが使えなくなるということも。
嫌だった。この世界に来てから、ずっと支えてくれたきんちゃんを異世界に迎えに行きたい。
しかし、神気がなくなったらもはやそれもできない。
邪神を倒して、神気の封印を解こうにも、そもそも神気がない状態では、結局邪神には勝てない。
これでは、どうあってもきんちゃんとの再会は絶望的になってしまう。
それに女神レスフィーナとも会えなくなってしまう。
(だめ。なんとかしなきゃいけないのに、どうにもできない)
やがて、漆黒の邪神気は美羽の体の奥深くまで浸透して、神気術を完全に封印し、百会の邪神気は神界との繋がりを断ち切った。
「ごめんね、フィーナちゃん。きんちゃん。もう、ダメみたい」
せめてもの抵抗で、泣きたいのを我慢した。
『神気封滅』を完成させた邪神気は、美羽の体の中に消え去り、美羽の姿が現れた。
邪神エルナザールはそんな美羽の姿を見て感嘆の声を上げる。
「まあまあ、なかなか美しいわよ、美羽ちゃん。
うむ、魔力の色になったのだな」
美羽の桜色の髪と瞳は銀の髪と銀の瞳に変わっていた。
これは、美羽の魔力の色が銀色であり、その魔力の色が現れたものだった。
エルナザールは嬉しそうにスクリーンの帝都民に告げる。
「あなたたちの最後の希望の天使の力も失われたわ。
神気がなくなり、天使の証明の桜色の髪と瞳を失い、完全に堕天使になったぞ」
スクリーンの向こうでは帝都民たちが絶望する様子が映し出される。
「ああ、天使ちゃんまで」
「もう、終わりなのか」
そんな中、涙を流しながら食い入るようにスクリーンを見つめていた姉妹がいた。
リリとルルである。
「ミウ様……そんな」
ルルは呆然としながら涙を流していたが、同じく涙を流していたリリが涙を拭う。
「ルル! 神気をなくしてしまった以上、ミウ様のお命が危ない。私はお助けに行く」
「お姉ちゃん……私も行くわ! 」
「そうだ! 生き残れば封印を解けるかもしれない」
「そうよ、ミウ様ならできるはずだわ。それに何より」
「「私たちはミウ様をお守りするためにいる」」
いまだ、騎士見習いの姉妹は希望を失っていなかった。
「ここから皇城は遠いけど、とにかく行こう。ルル」
「うん、分かったわ。お姉ちゃん」
美羽は考える。神気がなくてもこの邪神を倒す方法を。
(どうすれば、邪神に対抗できる? 私に残っているのは魔力。それと……そうだ、ママのペンダントがある。
それに神気で作ったフィーナちゃん像もあるわ。クララのペンダントはこの邪神の結界内でも、薄く結界を張っていたけど、ママのペンダントは結界を張らなかった。多分、クララのペンダントは防御に比重をかけてるから。ママのペンダントはフィーナちゃんが満遍なく色々と機能をつけたからだと思う。でも、その機能の一つに、神気のタンクになる機能もある。
あとフィーナちゃん像には特に機能はないけども、神気の具現化だから神気を引き出せる。それと魔力を合わせて神魔気にすれば、邪神を倒せるかもしれない。大丈夫、まだ希望はある。まずはこの体を縛っている糸を邪神が外すか、自分でなんとかしないと)
美羽が思考をしていると、邪神エルナザールは興味深そうに美羽の顔を見つめる。
「あらぁ、美羽ちゃん。どうしたのぉ?
何か、悪巧みか?」
「……」
(ダメ、今気づかれては。油断させて、糸を解かせることができれば……)
エルナザールは、美羽が無言でいることに対して、気にするわけでもなく話し続ける。
「さあ、封印はなったわ。もう、あなたは女神の御使いではなく、ただの人。
もう、俺が相手をするほどの相手ではなくなった。
これからあなたは、私たちの観察対象よ。
神気がなくなった状態でどんな生き方をしていくかのな」
「お前に観察なんかされたくないよ」
「別にあなたの許可なんか求めないわぁ。
俺は好きに見るだけだ。
私たちは、退屈な神生を楽しく過ごしたいだけなのよぉ。
まずは、この糸を解いてやろう。
あなたは、好きに生きてねぇ」
「……」
エルナザールが近づいてきて、糸に手を伸ばす。
(もう少し。糸が解けたら、ペンダントの神気と私の魔力を混ぜて神魔気にして、全力でコザクラを邪神に刺す)
糸に手が近付いてくる。
50センチ、40センチ、30センチ。
緊張から、美羽の背中に汗が伝う。
(もう少し)
20センチ、10センチ、5センチ、0センチ
美羽の目は、邪神の手に注目する。
(そのまま糸を解いて)
しかし、いつまでたっても邪神の手は糸を解かない。
(どうして?)
美羽が恐る恐る、邪神の顔を見上げると、エルナザールは口を三日月の形にして笑って美羽を見ていた。
(はっ、気づかれた?)
美羽の全身から冷や汗が流れる。
「美羽ちゃん、最初から丸わかりよぉ。
糸を解いた瞬間に、そのペンダントの神気とお前の普通じゃない量の魔力を合わせて、一気に攻撃を仕掛けようというのだろう?
諦めが悪い子ねぇ。
でも、諦めが悪いのは好きだぞ。なぜなら」
邪神は笑みを深めた。
女声と男声が重なって言う。
「「最後の希望を奪うのが、これ以上にないくらいに好きだから」」
美羽の体が漆黒の邪神気に包まれた。
美羽の体にドス黒い邪神気が染み込んでくる。
それによって、美羽の神気が抑え込まれる。
そして、、何より頭頂部の百会のあたりの邪神気が神界との繋がりを断ち切ろうとしているのがわかる。
「いやああああああ」
「ミウちゃん!」
美羽は必死に抵抗しようとするが、もはや悲鳴を上げるしかできず、クララも動けずミウの名を叫ぶしかできなかった。
美羽には体感としてわかった。
この『神気封滅』が完成したときは、完全に神界とコンタクトが取れなくなり、女神レスフィーナとも会えなくなる。
神気術の全てが使えなくなるということも。
嫌だった。この世界に来てから、ずっと支えてくれたきんちゃんを異世界に迎えに行きたい。
しかし、神気がなくなったらもはやそれもできない。
邪神を倒して、神気の封印を解こうにも、そもそも神気がない状態では、結局邪神には勝てない。
これでは、どうあってもきんちゃんとの再会は絶望的になってしまう。
それに女神レスフィーナとも会えなくなってしまう。
(だめ。なんとかしなきゃいけないのに、どうにもできない)
やがて、漆黒の邪神気は美羽の体の奥深くまで浸透して、神気術を完全に封印し、百会の邪神気は神界との繋がりを断ち切った。
「ごめんね、フィーナちゃん。きんちゃん。もう、ダメみたい」
せめてもの抵抗で、泣きたいのを我慢した。
『神気封滅』を完成させた邪神気は、美羽の体の中に消え去り、美羽の姿が現れた。
邪神エルナザールはそんな美羽の姿を見て感嘆の声を上げる。
「まあまあ、なかなか美しいわよ、美羽ちゃん。
うむ、魔力の色になったのだな」
美羽の桜色の髪と瞳は銀の髪と銀の瞳に変わっていた。
これは、美羽の魔力の色が銀色であり、その魔力の色が現れたものだった。
エルナザールは嬉しそうにスクリーンの帝都民に告げる。
「あなたたちの最後の希望の天使の力も失われたわ。
神気がなくなり、天使の証明の桜色の髪と瞳を失い、完全に堕天使になったぞ」
スクリーンの向こうでは帝都民たちが絶望する様子が映し出される。
「ああ、天使ちゃんまで」
「もう、終わりなのか」
そんな中、涙を流しながら食い入るようにスクリーンを見つめていた姉妹がいた。
リリとルルである。
「ミウ様……そんな」
ルルは呆然としながら涙を流していたが、同じく涙を流していたリリが涙を拭う。
「ルル! 神気をなくしてしまった以上、ミウ様のお命が危ない。私はお助けに行く」
「お姉ちゃん……私も行くわ! 」
「そうだ! 生き残れば封印を解けるかもしれない」
「そうよ、ミウ様ならできるはずだわ。それに何より」
「「私たちはミウ様をお守りするためにいる」」
いまだ、騎士見習いの姉妹は希望を失っていなかった。
「ここから皇城は遠いけど、とにかく行こう。ルル」
「うん、分かったわ。お姉ちゃん」
美羽は考える。神気がなくてもこの邪神を倒す方法を。
(どうすれば、邪神に対抗できる? 私に残っているのは魔力。それと……そうだ、ママのペンダントがある。
それに神気で作ったフィーナちゃん像もあるわ。クララのペンダントはこの邪神の結界内でも、薄く結界を張っていたけど、ママのペンダントは結界を張らなかった。多分、クララのペンダントは防御に比重をかけてるから。ママのペンダントはフィーナちゃんが満遍なく色々と機能をつけたからだと思う。でも、その機能の一つに、神気のタンクになる機能もある。
あとフィーナちゃん像には特に機能はないけども、神気の具現化だから神気を引き出せる。それと魔力を合わせて神魔気にすれば、邪神を倒せるかもしれない。大丈夫、まだ希望はある。まずはこの体を縛っている糸を邪神が外すか、自分でなんとかしないと)
美羽が思考をしていると、邪神エルナザールは興味深そうに美羽の顔を見つめる。
「あらぁ、美羽ちゃん。どうしたのぉ?
何か、悪巧みか?」
「……」
(ダメ、今気づかれては。油断させて、糸を解かせることができれば……)
エルナザールは、美羽が無言でいることに対して、気にするわけでもなく話し続ける。
「さあ、封印はなったわ。もう、あなたは女神の御使いではなく、ただの人。
もう、俺が相手をするほどの相手ではなくなった。
これからあなたは、私たちの観察対象よ。
神気がなくなった状態でどんな生き方をしていくかのな」
「お前に観察なんかされたくないよ」
「別にあなたの許可なんか求めないわぁ。
俺は好きに見るだけだ。
私たちは、退屈な神生を楽しく過ごしたいだけなのよぉ。
まずは、この糸を解いてやろう。
あなたは、好きに生きてねぇ」
「……」
エルナザールが近づいてきて、糸に手を伸ばす。
(もう少し。糸が解けたら、ペンダントの神気と私の魔力を混ぜて神魔気にして、全力でコザクラを邪神に刺す)
糸に手が近付いてくる。
50センチ、40センチ、30センチ。
緊張から、美羽の背中に汗が伝う。
(もう少し)
20センチ、10センチ、5センチ、0センチ
美羽の目は、邪神の手に注目する。
(そのまま糸を解いて)
しかし、いつまでたっても邪神の手は糸を解かない。
(どうして?)
美羽が恐る恐る、邪神の顔を見上げると、エルナザールは口を三日月の形にして笑って美羽を見ていた。
(はっ、気づかれた?)
美羽の全身から冷や汗が流れる。
「美羽ちゃん、最初から丸わかりよぉ。
糸を解いた瞬間に、そのペンダントの神気とお前の普通じゃない量の魔力を合わせて、一気に攻撃を仕掛けようというのだろう?
諦めが悪い子ねぇ。
でも、諦めが悪いのは好きだぞ。なぜなら」
邪神は笑みを深めた。
女声と男声が重なって言う。
「「最後の希望を奪うのが、これ以上にないくらいに好きだから」」
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