蒼炎の公爵令嬢 〜追放された私は、最強冒険者と共に真実の力に目覚める〜

雛月 らん

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隠された力2

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 魔物の襲撃から数時間後、馬車は無事に隣国グランフェルト王国の国境の街、アインベルクに到着した。

 石畳の道、木造の建物が並ぶ街並み。王都ほど華やかではないが、活気に満ちている。

 エリアナは馬車を降り、深呼吸をした。新しい土地の空気を肺いっぱいに吸い込む。

「これから、冒険者ギルドに行くのか?」

 背後から声がかかった。

 振り返ると、フードの人物が立っていた。近くで見ても、深いフードのせいで顔はよく見えない。ただ、背が高く、がっしりとした体格であることは分かった。

「ええ、そのつもりですが…」

「なら、俺と一緒に来い」

「え?」

「話がある」

 フードの男は、エリアナが答える前に歩き出した。

 迷ったが、エリアナは後を追った。この街のことは何も知らない。案内してもらえるなら、それに越したことはない。

 男が向かったのは、街の中心部にある大きな建物だった。看板には「冒険者ギルド」と書かれている。

 中に入ると、広いロビーに多くの冒険者たちが集まっていた。武器を持った屈強な男たち、魔法使いらしいローブを着た女性、獣人族の戦士。様々な種族、様々な職業の人々が、依頼の掲示板を見たり、受付で手続きをしたりしている。

「ここが冒険者ギルド…」

 エリアナが呟くと、フードの男が頷いた。

「ああ。お前、冒険者になるつもりなんだろう?」

「はい」

「なら、まず登録が必要だ。だがその前に——」

 男はフードを外した。

 現れたのは、三十代前半と思われる男性の顔だった。黒い短髪、鋭い灰色の瞳、整った顔立ちだが、頬には古い傷跡がある。戦いを重ねてきた者の顔だ。

「俺はレイヴン。ソロのS級冒険者だ」

「S級…!?」

 エリアナは驚きを隠せなかった。

 冒険者のランクはF級から始まり、E、D、C、B、A、そしてS級が最高ランク。S級は一国に数人しかいないと言われる最強の冒険者たちだ。

「さっきの馬車での魔法、あれは尋常じゃなかった」

 レイヴンは真剣な眼差しでエリアナを見つめた。

「お前、本当は相当な魔力を持っているだろう?」

 エリアナは逡巡した。

 この人に、本当のことを話すべきか。でも、嘘をついても仕方ない。馬車での魔法を見られている。

「私は…出来損ないなんです」

 エリアナは静かに語り始めた。

 公爵家に生まれたこと。魔法が制御できなかったこと。家族から冷遇されたこと。婚約破棄されたこと。家を追い出されたこと。

 全てを話した。

 レイヴンは黙って聞いていた。表情は変わらなかったが、エリアナが話し終えた時、彼の目に怒りの色が浮かんだ。

「馬鹿げている」

 レイヴンの声は低く、怒りを含んでいた。

「お前は出来損ないなんかじゃない。ただ、正しい指導を受けなかっただけだ」

「でも、私の魔法は制御できなくて——」

「制御できないんじゃない。制御の方法を知らないだけだ」

 レイヴンはエリアナの肩に手を置いた。

「いいか、エリアナ。魔力が強すぎることは、決して悪いことじゃない。ダイヤの原石と同じだ。磨けば、とんでもない輝きを放つ」

「でも…」

「俺とパーティーを組め」

 レイヴンの突然の提案に、エリアナは目を見開いた。

「え…?」

「お前の魔法の制御方法を教えてやる。その代わり、俺のパーティーに入れ」

「で、でも、私はまだ駆け出しで、S級の方の足手まといに——」

「足手まといなんかじゃない」

 レイヴンは強い口調で言った。

「お前には才能がある。それも、途方もない才能がな。それを腐らせるのは、もったいない」

 エリアナは自分の手を見た。魔物を倒した時の、あの巨大な炎。確かに強力だったかもしれない。でも、制御できなければ意味がない。

「本当に…私でも、ちゃんと魔法が使えるようになりますか?」

「ああ、約束する」

 レイヴンの瞳は真剣だった。

 エリアナは深呼吸をした。

 この人を信じてみよう。どうせ失うものは何もない。

「分かりました。お願いします、レイヴンさん」

 レイヴンは満足そうに頷いた。

「よし。じゃあ、まずは冒険者登録とパーティー登録をするぞ」
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