蒼炎の公爵令嬢 〜追放された私は、最強冒険者と共に真実の力に目覚める〜

雛月 らん

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蒼炎の目覚め1

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 翌日、レイヴンはエリアナを街の外れにある訓練場へ連れて行った。

 広い草原に、いくつかの標的が設置されている。冒険者たちが個人的に借りられる訓練場だ。

「まず、お互いの実力を確認する。簡単な討伐クエストを受けてきた」

 レイヴンが懐から羊皮紙を取り出した。

「ゴブリンの群れの討伐。F級向けのクエストだ」

 ゴブリンは最も基本的な魔物で、新人冒険者の訓練相手としてよく使われる。小型で知能は低いが、群れで行動するため油断はできない。

「森の中に巣がある。行くぞ」

 二人は街道を外れ、深い森の中へ入っていった。

 木々の間を抜け、小さな川を渡り、しばらく歩くと、洞窟の入り口が見えてきた。

「あそこだ」

 洞窟の前には、数体のゴブリンが見張りとして立っていた。緑色の肌、鋭い爪、醜い顔。身長は子供ほどしかないが、粗末な武器を持っている。

「エリアナ、お前が魔法で攻撃しろ。俺は見ている」

「分かりました」

 エリアナは深呼吸をした。

 魔力を感じる。体の中に渦巻く、巨大な力。いつも通り、制御が難しい。

 でも、やってみるしかない。

「火よ、我が意に従え——ファイアーボール!」

 エリアナの手から、炎の球が放たれた。

 それは本来の何倍もの大きさに膨れ上がり、ゴブリンたちだけでなく、周囲の木々までも焼き尽くした。

 爆発的な炎が広がり、洞窟の入り口が崩れる。

 ゴブリンたちは一瞬で消滅した。

 しかし、エリアナの右腕が熱を持ち、わずかに赤く腫れていた。

「また…」

 エリアナは自分の腕を見つめた。いつものことだ。制御できない魔法の反動。

 でも、表情は変えない。これくらい、慣れている。

「エリアナ」

 レイヴンが近づいてきた。その顔には、怒りが浮かんでいた。

「腕を見せろ」

「大丈夫です、いつものことですから——」

「いつものこと、だと?」

 レイヴンの声は震えていた。

「お前、今まで魔法を使うたびに、こんな怪我をしていたのか?」

「はい。でも、軽い火傷程度ですから——」

「軽い、だと…」

 レイヴンは深く息を吸い込んだ。

「お前の家族は、何を教えていたんだ」

 レイヴンはエリアナの腕を優しく取り、治癒魔法をかけた。淡い緑色の光が腕を包み、火傷が消えていく。

「いいか、エリアナ。お前の魔法の使い方は、根本的に間違っている」

「間違って…?」

「ああ。お前は魔力を押さえつけようとしている。まるで暴れ馬を無理やり縛り付けるように」

 レイヴンは草原に座り、エリアナにも座るよう促した。

「魔力は敵じゃない。お前の一部だ。だから、押さえつけるんじゃなく、受け入れろ」

「受け入れる…?」

「そうだ。魔力は怖いものじゃない。お前の友達だと思え」

 レイヴンは自分の手のひらに、小さな炎を灯した。それは優しく、穏やかに揺れている。

「魔法はイメージが大切だ。強い魔法を使おうとするんじゃなく、まず正確な魔法を使うことを考えろ」

「正確な…」

「例えば、指先に火を灯す。ただそれだけでいい」

 レイヴンの炎が、さらに小さくなった。

「小さく、優しい炎をイメージしろ。ロウソクの炎のようにな」

 エリアナは自分の手を見つめた。

 いつも、大きな炎しか出てこなかった。小さな炎なんて、考えたこともなかった。

「やってみます」

 エリアナは目を閉じた。

 魔力を感じる。いつもなら、それを必死で押さえつけようとする。でも、今日は違う。

 受け入れる。魔力を友達だと思う。

 小さな炎。ロウソクの炎。優しく、穏やかに揺れる、小さな光。

 エリアナはゆっくりと手のひらを開いた。

 そこに、小さな炎が灯った。

「できた…!」

 エリアナの声に、驚きと喜びが混じっていた。

 でも、その炎は——蒼かった。

「え…?」

「見事だ、エリアナ」

 レイヴンは満足そうに頷いた。

「蒼い炎。それは、魔力が濃い証拠だ」
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