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サラの結婚
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その日はやってきた。サラの結婚式だった。一応は王族との結婚であるがヴィクトリアとポールは3日前から具合の良くない祖母を見舞いに訪ねていた。
「なんでおねーさまもおにーさまもいないの?!」
ひらひらとリボンとレースでこれでもかと飾られたウェディングドレス姿のサラはヒステリックに叫ぶ。
「しかたないでしょう。サヴェージ様の名代でのお見舞いなんだから」
エリスにそう言われてもサラはふくれっ面だ。サラとしてはシャルル王子との結婚式をヴィクトリアに見せつけたかったのだ。
「王妃様も陛下も来ないし」
「お忙しい方達ですから」
サラはシャルルに
『陛下も正妃様も来ないよ?僕は側妃の子供ですらない妾妃の子だからね。寵愛のない妾の子供なんてこんなものさ。王族からは陛下の名代でプロスペール兄上がいらしてくださってるから』
と聞かされていてそれもサラは不満だった。婚約してから一度も陛下やその妾妃様とも挨拶すらしていないからだ。シャルル王子にサラは陛下たちに会いたいと強請った。シャルルは一刀両断でサラに却下をつきつけたのだ。
『だって君、陛下に会えるだけのマナーを身に着けてないでしょう?』
意外な事にシャルルはサラにいうべきことははっきりときっぱりと言い、サヴェージやエリスよりもサラをうまくコントロールしているのだ。シャルルは自分から何かしようというような覇気はないし、現状維持でいいや、というタイプではあるが周りが思っているほど無能でもない。ただ諦念が彼の主たる生き方なので冒険者を自ら志すサヴェージのような人種からみると足りないのであった。
シャルルが信仰する豊穣の女神の神殿でサヴェージ達と第三王子の立ち合いで静かに式が終わる。サラが取り巻きと思っている下級貴族の少女たちも今日は呼んでいない。シャルルが『家族だけで式を』と希望したからだ。
サラは自分が主役であることに満足している。取り巻きやヴィクトリアに見せつけられないのは残念だけどこれからは王族として今までヴィクトリアだけの特権だった『夜会』で『綺麗なドレス』を着てちやほやされる、そんな生活が始まるのだと脳内が花畑になっているのだ。
「これから僕らの暮らす家に向かうよ」
「え?」
王宮でのディナーがあると思っていたサラは眼を丸くする。
「あの、披露パーティは?」
「しないよ?兄上とご両親との夕食を僕らの家で取るんだ。デュカス子爵家でね」
「え?デュカス子爵?
サラはまだ理解していない。
「僕の新しい身分と新しい家名」
「新しい身分?」
「そう。さっきの婚姻契約書にもちゃんと書いてあるよ。『この婚姻の成立をもって王籍を離脱し新しく『デュカス子爵家』を立てるって」
シャルルは根気よくサラに話す。エリスもサヴェージも理解していなかったがサラは話を理解するまでゆっくり何度も話すと理解するのだ。納得するかは別として。
エリスはきちんと育てなきゃで上滑りしているしサヴェージはそこまでサラ自身には興味がない。ポールはサラを軽蔑している。
シャルルは子供の頃、勉強がわからなかった自分にプロスペールがやってくれたやり方を思い出しサラに説明をしている。
「だって……シャルル様は王子だよね?陛下の子供なんだもの」
「元はね。君と結婚した瞬間から僕はデュカス子爵なんだ。デュカス子爵として王宮で勤めるんだよ」
「なんで……、なんで王子様じゃなくなるの?」
サラは泣きそうになっている。シャルルが王族じゃないと意味はない、とも思ったがこの婚姻を成し遂げなければ自分は娼館送りになる、と思い出す。
「悪いようにはしないから、サラ、僕らの家に行こう。きっとサラも気に入るよ」
シャルルは混乱しているサラの手を取った。
「なんでおねーさまもおにーさまもいないの?!」
ひらひらとリボンとレースでこれでもかと飾られたウェディングドレス姿のサラはヒステリックに叫ぶ。
「しかたないでしょう。サヴェージ様の名代でのお見舞いなんだから」
エリスにそう言われてもサラはふくれっ面だ。サラとしてはシャルル王子との結婚式をヴィクトリアに見せつけたかったのだ。
「王妃様も陛下も来ないし」
「お忙しい方達ですから」
サラはシャルルに
『陛下も正妃様も来ないよ?僕は側妃の子供ですらない妾妃の子だからね。寵愛のない妾の子供なんてこんなものさ。王族からは陛下の名代でプロスペール兄上がいらしてくださってるから』
と聞かされていてそれもサラは不満だった。婚約してから一度も陛下やその妾妃様とも挨拶すらしていないからだ。シャルル王子にサラは陛下たちに会いたいと強請った。シャルルは一刀両断でサラに却下をつきつけたのだ。
『だって君、陛下に会えるだけのマナーを身に着けてないでしょう?』
意外な事にシャルルはサラにいうべきことははっきりときっぱりと言い、サヴェージやエリスよりもサラをうまくコントロールしているのだ。シャルルは自分から何かしようというような覇気はないし、現状維持でいいや、というタイプではあるが周りが思っているほど無能でもない。ただ諦念が彼の主たる生き方なので冒険者を自ら志すサヴェージのような人種からみると足りないのであった。
シャルルが信仰する豊穣の女神の神殿でサヴェージ達と第三王子の立ち合いで静かに式が終わる。サラが取り巻きと思っている下級貴族の少女たちも今日は呼んでいない。シャルルが『家族だけで式を』と希望したからだ。
サラは自分が主役であることに満足している。取り巻きやヴィクトリアに見せつけられないのは残念だけどこれからは王族として今までヴィクトリアだけの特権だった『夜会』で『綺麗なドレス』を着てちやほやされる、そんな生活が始まるのだと脳内が花畑になっているのだ。
「これから僕らの暮らす家に向かうよ」
「え?」
王宮でのディナーがあると思っていたサラは眼を丸くする。
「あの、披露パーティは?」
「しないよ?兄上とご両親との夕食を僕らの家で取るんだ。デュカス子爵家でね」
「え?デュカス子爵?
サラはまだ理解していない。
「僕の新しい身分と新しい家名」
「新しい身分?」
「そう。さっきの婚姻契約書にもちゃんと書いてあるよ。『この婚姻の成立をもって王籍を離脱し新しく『デュカス子爵家』を立てるって」
シャルルは根気よくサラに話す。エリスもサヴェージも理解していなかったがサラは話を理解するまでゆっくり何度も話すと理解するのだ。納得するかは別として。
エリスはきちんと育てなきゃで上滑りしているしサヴェージはそこまでサラ自身には興味がない。ポールはサラを軽蔑している。
シャルルは子供の頃、勉強がわからなかった自分にプロスペールがやってくれたやり方を思い出しサラに説明をしている。
「だって……シャルル様は王子だよね?陛下の子供なんだもの」
「元はね。君と結婚した瞬間から僕はデュカス子爵なんだ。デュカス子爵として王宮で勤めるんだよ」
「なんで……、なんで王子様じゃなくなるの?」
サラは泣きそうになっている。シャルルが王族じゃないと意味はない、とも思ったがこの婚姻を成し遂げなければ自分は娼館送りになる、と思い出す。
「悪いようにはしないから、サラ、僕らの家に行こう。きっとサラも気に入るよ」
シャルルは混乱しているサラの手を取った。
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