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イネスが騎士服で入ってきた。
「体がなまるので偶には、と思って」
イネスはリリゼットの問いかけるような視線にそう答えた。レイピアを腰にしたその姿は決まっていて、かなり格好良かった。それまで何も言わなかったルイが思わず
「かっこいい」
という程度に似合っていた。リリゼットは王太子たちにかけたのと同じ結界をイネスにかける。
視察のハイライトというわけで女子達も後方のリリゼットの父親と一緒に魔法騎士団の奮戦ぶりを見学する。何本かの柱の上に屋根が乗っている、簡素な天幕の下、きっちり防寒したイネス以外の女子とリリゼットの父親、そしてルイ、騎士団の交代要員とリリゼット達の護衛がいる。
騎士団の騎士達が魔獣を追い立てある程度弱らせたところで落とし穴に落とし込みそこに魔術師たちが魔法を打ち込み魔獣を倒す。大抵の魔獣は雷系の魔法で心臓を止めてしまうのが一番早いのでここには雷系の魔術師が集まっている。
冒険者ギルドの解体人も出張してきて、さくさく皮や肉や牙やと素材に分けている。ただ解体前、それも倒してすぐにリリゼットの父親は魔獣のところに飛んでいき、その魔獣を吟味している。今来ているギルドの解体人はユーグの懇意の人らしく仲良くふたりであーだこーだとやっている。ルイはその横で真剣に話を聞いている。
「かなりきつい」
殿下たちが天幕に戻ってくる。
「落とし穴に追い込むまで走りっぱなしだ。騎士は体力いるな」
王太子、エリク、アラン、イネスの四人の中でイネスが一番息が切れてなかった。
「俺、なまってるな」
リリゼットにアランが話しかけてくる。リリゼットは実はこの義兄と同じ名のアランという少年が苦手だった。なにか押し付けがましいのだ。彼とはクラスが違い、かかわる事がないのでどんな少年かも知らずに判断するのは早計だと思いながらも会話を続ける気力がなくなるので困っていた。
「他人にはわからん事聞きなや」
菫姫がぴしり、とアランに言う。
「それに『そうですね』なんて返されへん言い方やろ、それ」
菫姫はアランが好きではなかった。なにか蛇のような陰湿さを感じるのだ。その上で、自分が贔屓してるリリゼットに『肯定』するしかないような言い方で話しかけるのがいらっとするのだ。リーゼやイネス、菫姫には話しかけない。目を伏せて目も合わせないそんなところも菫姫の中でアランの評価を下げるのだ。
それが貴族間のマナー、上位貴族には下位貴族から話しかけない、を守ってるつもりならリリゼットにもアランから話しかけられるはずもない。アランの家は先々代が男爵となり、当代の前騎士団長がその忠勤を陛下に認められ子爵に爵位が上がった、新興の家。そしてリリゼットは伯爵家の娘なのでアランの方からリリゼットに話しかけるのも無理なはずなのにリリゼットにはなぜか話しかける。なんとなく秋波を送ってるのかとも思える発言があるのだが、リリゼットにはわかってもらってなかった。
生徒会内でもクレマンがリリゼットに正式に申し込んでいるのは有名になってるし、ここにきてジャックが良くリリゼットと話すようになった。そのあたりでアランは焦ってるのではないかというのが菫姫の見立てだった。
ジャックとリリゼットの会話について行けてるのは王太子とリーゼ、菫姫だった。これ王妃教育や王太子教育で宗教の教育で叩き込まれているからであった。ジャックとリリゼットの会話は殆ど宗教問答に近かったからだ。
何かがぴりっと来て、リリゼットは殆ど無意識に近い感じで天幕の前面に結界を張る。それとほぼ同時にリーゼの父親による土の壁が立ち上がった。
「何事だ!」
王太子の声にも誰も答えられない。
暫くして
「実行犯捕縛」
という声とともに土の壁が取り払われた。リリゼットもそっと結界を解く。このタイミングで結界を張られたことが理解できてるのはユーグとルイの二人だけだった。ルイが何か言いかけるのをリリゼットはしっと人差し指を口に当てるジェスチャーで制した。
イネスがあからさまに緊張を解いた。この中でイネスだけが全容を知っていたが黙っていた。イネスの家の役目、影は情報収集だけでなく最悪の時の身辺警護も含んでいて今回はリーゼの父親やエドアール、宰相や陛下とも連携した仕事であった。騎士団の人員もほどんど影の役目をになった人員になっていたのだ。
「体がなまるので偶には、と思って」
イネスはリリゼットの問いかけるような視線にそう答えた。レイピアを腰にしたその姿は決まっていて、かなり格好良かった。それまで何も言わなかったルイが思わず
「かっこいい」
という程度に似合っていた。リリゼットは王太子たちにかけたのと同じ結界をイネスにかける。
視察のハイライトというわけで女子達も後方のリリゼットの父親と一緒に魔法騎士団の奮戦ぶりを見学する。何本かの柱の上に屋根が乗っている、簡素な天幕の下、きっちり防寒したイネス以外の女子とリリゼットの父親、そしてルイ、騎士団の交代要員とリリゼット達の護衛がいる。
騎士団の騎士達が魔獣を追い立てある程度弱らせたところで落とし穴に落とし込みそこに魔術師たちが魔法を打ち込み魔獣を倒す。大抵の魔獣は雷系の魔法で心臓を止めてしまうのが一番早いのでここには雷系の魔術師が集まっている。
冒険者ギルドの解体人も出張してきて、さくさく皮や肉や牙やと素材に分けている。ただ解体前、それも倒してすぐにリリゼットの父親は魔獣のところに飛んでいき、その魔獣を吟味している。今来ているギルドの解体人はユーグの懇意の人らしく仲良くふたりであーだこーだとやっている。ルイはその横で真剣に話を聞いている。
「かなりきつい」
殿下たちが天幕に戻ってくる。
「落とし穴に追い込むまで走りっぱなしだ。騎士は体力いるな」
王太子、エリク、アラン、イネスの四人の中でイネスが一番息が切れてなかった。
「俺、なまってるな」
リリゼットにアランが話しかけてくる。リリゼットは実はこの義兄と同じ名のアランという少年が苦手だった。なにか押し付けがましいのだ。彼とはクラスが違い、かかわる事がないのでどんな少年かも知らずに判断するのは早計だと思いながらも会話を続ける気力がなくなるので困っていた。
「他人にはわからん事聞きなや」
菫姫がぴしり、とアランに言う。
「それに『そうですね』なんて返されへん言い方やろ、それ」
菫姫はアランが好きではなかった。なにか蛇のような陰湿さを感じるのだ。その上で、自分が贔屓してるリリゼットに『肯定』するしかないような言い方で話しかけるのがいらっとするのだ。リーゼやイネス、菫姫には話しかけない。目を伏せて目も合わせないそんなところも菫姫の中でアランの評価を下げるのだ。
それが貴族間のマナー、上位貴族には下位貴族から話しかけない、を守ってるつもりならリリゼットにもアランから話しかけられるはずもない。アランの家は先々代が男爵となり、当代の前騎士団長がその忠勤を陛下に認められ子爵に爵位が上がった、新興の家。そしてリリゼットは伯爵家の娘なのでアランの方からリリゼットに話しかけるのも無理なはずなのにリリゼットにはなぜか話しかける。なんとなく秋波を送ってるのかとも思える発言があるのだが、リリゼットにはわかってもらってなかった。
生徒会内でもクレマンがリリゼットに正式に申し込んでいるのは有名になってるし、ここにきてジャックが良くリリゼットと話すようになった。そのあたりでアランは焦ってるのではないかというのが菫姫の見立てだった。
ジャックとリリゼットの会話について行けてるのは王太子とリーゼ、菫姫だった。これ王妃教育や王太子教育で宗教の教育で叩き込まれているからであった。ジャックとリリゼットの会話は殆ど宗教問答に近かったからだ。
何かがぴりっと来て、リリゼットは殆ど無意識に近い感じで天幕の前面に結界を張る。それとほぼ同時にリーゼの父親による土の壁が立ち上がった。
「何事だ!」
王太子の声にも誰も答えられない。
暫くして
「実行犯捕縛」
という声とともに土の壁が取り払われた。リリゼットもそっと結界を解く。このタイミングで結界を張られたことが理解できてるのはユーグとルイの二人だけだった。ルイが何か言いかけるのをリリゼットはしっと人差し指を口に当てるジェスチャーで制した。
イネスがあからさまに緊張を解いた。この中でイネスだけが全容を知っていたが黙っていた。イネスの家の役目、影は情報収集だけでなく最悪の時の身辺警護も含んでいて今回はリーゼの父親やエドアール、宰相や陛下とも連携した仕事であった。騎士団の人員もほどんど影の役目をになった人員になっていたのだ。
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