リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

文字の大きさ
61 / 61

クレマン・ドルバック 【完】 

 「結婚してから幸せそうだな」

兄がクレマンをからかう。クレマンはぬけぬけとのろける。

「それはもう。向こうの家の居心地もいいですしね」

兄のエティエンヌが二人きりなので気になっている事を聞く。

「その、ニコルの奥方は…」

「まだ軟禁状態です。教育プログラムが進まないんですよ。リリと結婚して、子供がも二人出来るだけの年数経ってるのに全然。あ、でもマダムフルールのおかげで伯爵家の社交は彼女が担ってくれてますし、リリは別段何をしなくてもリーゼ妃やイネス嬢やヴィオレット夫人がいるので社交界で酷い目にはあいませんしね」

と言いながらクレマンはちょっと浮世離れしたリリゼットが同年代の同じ家格の女性たちからは少々疎まれているし、男性の好奇心をそそっているのも知っていた。その上でマダムフルールの義理の娘になったので、夜会などでマダムに紹介してほしい女性たちがリリゼットにまとわりつく。

 リリゼットはドルバック家の別枠ということで準伯爵の家格を与えらていた。それは王国の古い法律で『ドルバックの赤毛』の特権であった。意に添わねば王族の依頼も断ってよいという特権までついていた。
 信仰に篤いリリゼットには聖女の誘いが教会からでて、教会へはドルバックから抗議が行った。その時に今の聖女はかなり老齢で月々の遠征が出来なくなっている事で、国境線が危ないという事を相談され、次の聖女候補(複数の令嬢が既に教会に入っている)が聖女になるまで東西南北の教会のある守護石に魔力を注ぐのを手伝う事になった。
 先代が一人でやっていた業務をするには今代の聖女候補たちは力が足りないので合計8人、正副の聖女を決め東西南北に配置すると決めたらしい。
 教会側は修道院にいるときにリリゼットの事を知っていれば、とかなり悔しい思いをしているらしい。リリゼット達がいたのは西の方の修道院で、ここの院長はドルバック領出身の人間だったので『ドルバックの赤毛』の事を知った上で教会の上層部には伝えなかったのだ。教会がその件で問い合わせたところ、件の院長はすでに還俗して、領地に帰ったと返答されたとか。



 「お前らはいいとして、子供達は…貴族籍は持てないんだろう?」

「いいえ、『赤毛』の子供なので、嫡子は子爵位になるらしいです。ドルバックの領内は子爵や男爵が多いのはそのせいですね。ある程度領地内の親戚での結婚をしているので一定数以上増えないようには気を付けているとニコル義兄上に聞きました」

「実務は相変わらずニコルが?」

「ニコル義兄上とマダムでやっておられます。最近は戦闘メイド育成組織からの手袋の依頼が多くて義父上もルイも領地の革細工勢も忙しいらしいです。義父上は悪さをする余裕もないらしいですし」

クレマンがくすり、と笑う。
 エティエンヌは弟のこういう人間らしい風情は結婚して、いや、リリゼットと付き合い出してからだな、と表に出さず考えていた。エティエンヌもそろそろ婚約を、と言われており、年齢が高いにかかわらず12~3才の令嬢を持つ家からも申し込みがあり、困っていた。

 「クレマンの知り合いとかに少々高齢で独り身の女性はいないかな?最近、俺が結婚相手を探しているというので未婚女性を持つ貴族からの申し込みが多くてな。未婚女性の一番多い年代が15までだからそのあたりの年齢の子供の申し込みが多くてな。………ちょっと勘弁してほしくて」

 クレマンは兄の秘密の恋人が全て未亡人や訳アリの年上の女性だったことを知っているのでそれは十代の令嬢は避けたいだろうな、とは思った。

「俺では無理ですね。一度、うちに食事に来てくれますか。週のうち5日は義父上もマダムもうちで食事してますから」

「うちって、別邸?」

「ええ、ニコル義兄上達が一家で、ジュリエット夫人も一緒に食事できるように、と。子供と一緒に食事をした方が彼女の為になりますし」

 これもマダムとリリゼットで話し合って決めた事だった。ニコルもジュリエットの矯正は半ばあきらめていて、週に3回の外出、庭の散歩はニコルかルイがつきそって行っている。ルイは伯爵領を継ぐよりもエドアールの下で魔法騎士団に入るべきか否かを悩んでいる最中らしい。



 「いらっしゃいませ」

エティエンヌは弟の妻、リリゼットを少しまぶしそうに見た。相変わらず赤い髪を綺麗に結い上げて薄いクリーム色のドレスを身にまとっている。ドレスの裾から膝辺りの高さまで大小色々な大きさの菫の花が飛んでいる。

「マダムもいらっしゃるけど、今日は…紹介したい方がおりますの」

エティエンヌが見知った顔があった。

「イネス・ラングレー嬢、お久しぶりです。デビュタント以来ですね」

エティエンヌは彼女と1度だけ踊ったことを覚えていた。

「覚えていただいていて光栄です」

 エティエンヌはかつての少女の見事な成熟形であるイネスに好感を持った。女性二人が話している時にクレマンにそっと言った。

「クレマン、俺頑張る」

二人は目を合わせてにやり、とした

 == 完 ==
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

かりりん
2025.11.14 かりりん

リリという名前、愛称の女性が複数出てくるので名前が被らないようにしたらよいかなと思いました。

解除
珠華
2025.07.22 珠華

大変面白く読めたけど
2つだけ声を大にして言いたい!
(」゚Д゚)」12歳の幼妻はアカーン!!
(」゚Д゚)」貞操概念帰ってこーい!!

でもソレ込だから楽しく読めたのも
事実なのが悔しい(;`皿´)グヌヌ

解除
operahouse
2025.05.06 operahouse

 話は面白かったのですが、もう少し、話や登場人物像を整理した方がよいかと思いました。特に二人のジュリエットや二人のアラン、混乱するだけで人物名を同じにする意味がある話でもなかったので、別名で良かったのではと思います。
 また、義兄アランの性格が話の前半(純朴な姉をラブホテルに連れ込んで好き物にしたみたいな人物と噂されるほど)と後半(家庭的)では違い過ぎるし、義姉のジュリエットも前半はオシャレを知らぬ義妹にオシャレを教える成熟した人物で後半は義妹や使用人や一族の慣行を無視する未熟な人物として描かれていて、読んでいて混乱します。
 あと、せっかくの一族の設定が物語の中で生かされていないというのが、残念です。リリゼットの能力ですら、あまり生きていない。加護を付加できてすごいを物語るのではなく、その加護を付加できることによって物語が広がるとより面白いのです。
 

解除

あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!