悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

文字の大きさ
3 / 212
第一章

グランジエ家の事

 辺境を統治する4家でグランジェ家だけが子爵位にいた。これでは辺境を護る四家として足並みがそろわないと北方を護るグリモー侯爵家から王家に進言があり寝耳に水の状態で陞爵したのが3年前のことであった。そしてグリモー侯爵家の遠縁でもあるアルノー伯爵家との縁組が決まる。年周りが丁度いいということでアランとマドレーヌの婚約がきまったのだ。
 この結婚をまっとうすればアランにはグリモー侯爵家がもっているいくつかの爵位のうち準男爵位を領地と文官の仕事ごと譲ろうという話になっていた。


 が、どうしてもマドレーヌが欲しいネイサンがアランに手を回したようで、アランはマドレーヌを『悪役令嬢』だと最近リディ嬢から読まされた少女向けのロマンス小説で覚えた言葉でのののしったりしていた。
 ただそれがマドレーヌの耳に入る事はなかった。アラン達とマドレーヌは違うグループに属していたのと、マドレーヌは騎士科、アランは普通科で学園内での接触は皆無だったのである。アランとしたらおとなしやかなみための癖に騎士科に属しているマドレーヌに嫌気がさしていたというのも大きかったので、ネイサンの申し入れは渡りに船、でもあったのだ。
 ネイサンは普段から横柄なのと、王族というのに余りにも成績が悪いので巻き込まれたくないと生徒に敬して遠ざけられていた。2回の進級不可は王族で初めてであった。今までは忖度されてきたのも大きいのであろうが現在、学園長は王弟殿下であり一番王太子に近いはずの正妃の息子がこれでは……と、進級を許可しなかったのだ。
 
 マドレーヌは子爵令嬢としては目立つ美貌であった。そして騎士科の制服で髪を一つにまとめていると、倒錯的に美しく、少女たちの中にファンクラブもあったのだ。
 マドレーヌ自身は座学やマナーはあまり好きではない、というところで騎士科を選んだのだが、しょうに合っていたらしく体を使う学科は男子に混じってそこそこの成績を出している。
 そして騎士科と普通科は食堂すら違ったので、学園での接点は面白いくらい騎士科と普通科にはなかった。ただこのところアランは騎士科の食堂に来てマドレーヌに嫌味を言って帰るという謎の行動をとっていたのだ。



 マドレーヌがどこかに飛ばされたのと、同時にアルノー伯爵家からグランジエ伯爵家に娘の出奔と婚約不履行の連絡が来た。二人の婚約時点でどちらかの勝手な都合での婚約不履行には莫大な違約金が課せられていた。間の悪い事に陞爵したばかりのグランジエ家には余裕がなかった。

『今、グランジエ家が取り潰されたらグリモー侯爵家の顔を潰す事になりますね』

アルノー家からはまだ3才の3男以外の嫡男次男長女をアルノー家に差し出せ、と。それで借金を払い終わるまでは身柄を預かる、という事であった。

『娘が男の子を生んだら少しは考えてやる』

と長女はアランの慰み者となる事が判っていたが

『マドレーヌが消えたから……』

悲壮な決心をし、アルノー家に赴いたのだった。

「私がなんとかする」

嫡男はそう言ったが長女は首を横に振る。

「……マドレーヌに言い寄ってた王族の方も噛んでるんでしょう。私たちは『家』を護りに行くのです、お兄様。アントワーヌ末っ子が継げるようにグランジエ家を護りましょう」

 長女マリアンヌの決意を助けるかのようにアルノー家に着いたら奥方にさっさとマリアンヌは保護された。

「うちの次男が馬鹿な事を……。私も表立っては動けませんが多少は力になりましょう。どうも次男は王族の方を後ろにつけたつもりでいい気になってるようなので」

奥方は柳眉を逆立てて言い切った。

「愚鈍な人間を味方にして家を危険な目に会わせるような人間は家から追い出さねば」
感想 1

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

特技は有効利用しよう。

庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。 …………。 どうしてくれよう……。 婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。 この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?

中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。 殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。 入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。 そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが…… ※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です ※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。