悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第四章

エリクは天使のように微笑む

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 グランサニュー公爵がかかと笑った。

「アーノルドよ、戻ってきたな」

「モンスター津波と戦うのは我々の使命だかですよ。……我が領軍は最終的に神殿と共闘させたいですね。先行隊を捕まえたい」

エリクが頷く。

「こちらもそうありたいですな。聖騎士たちを10人ほど都合着けてきました。我々、私、ドニ様、グランサニュー侯爵とグランジエ一家、アル様を私は運んで廃神殿へ行きます。…ウジェ、マドレーヌのを死守してくれ」

ウージェーヌは静かに笑う。

「うちの娘を舐めんでくれ。……一人は喰われちまったけどな。マリアンヌのかたき、っていうかね」

ウージェーヌはちろりと北の侯爵を見る。

「アルノー伯爵本人と対峙できるならガチで殴りに行くからな」

「……俺もだ。どうも妻を寝取られてる」

侯爵が吐き捨てるように言った。公爵から昨夜、アルノー伯爵家に起こった事を知らされたのだ。

「ウジェに言っておかんといかんことがある」

「なんでもとはいいませんが聞きますよ?」

ウージェーヌは少々皮肉な表情になった。

「アランとマドレーヌの婚約なんだが……。表向きはアルノーの奥方、俺の遠い親戚だな、を信用してという事で進めたが、どうも……妻がウジェの所との婚約をアルノー伯爵に強請られて俺がそう考えるように誘導された節がある」

「何年も前ですよ、子供の婚約。ま、もう破棄したけど」

ウージェーヌが不思議そうな顔になる。

「そこででてくるのが正妃だ。王都の屋敷にいる時にちょくちょく正妃からお茶会の誘いの手紙が来てたんだ」

エリクがぐりんと顔をこちらに向けた。

「……その話詳しく」

侯爵は話始めた。

「新年のパーティ前後、3か月ぐらいの間か、王都のいる間に大体4、5回正妃からの茶会の手紙が来ていた。妻、メリッサは『普段は免れてるお役目だものね、王都にいる間は私もせいぜいお手伝いしなきゃ。私が入ることで休める奥方もいますからね』と毎回断らずに茶会に出てたんだよ」

ウージェーヌもその茶会がただのお茶会ではない事を知っていた。ウジェの妻、ジョアンは誘われることは一度もなかった。そのお茶会は貴族夫人を招いて『ちょっとした、背徳的な楽しみ』を繰り返す会だったのだ。一番狙われたのは新婚の下位貴族夫人だった。正妃宮の秘密の一室で繰り広げられる淫靡な宴は男は大抵ヤギの頭を模したマスクを被っていたという。アランとネイサンはそういう宴にも参加していたらしく彼らから詳細をエリク達は聴いていた。

「で?」

「どうもアルノー伯爵は辺境を狙っていたんだと思う」

「ま、そうでしょうね。我ら辺境の森にある魔獣を産む黒い靄、この北の辺境には無いはずの靄、を狙っていたんだと思いますよ」

ウージェーヌの冷静な分析に北の侯爵も頷く。

「うちが狙われた、のではなく……メリッサのが迂闊だったんだよな」

「そうか、そんな前からか」

エリクがにんまりと笑う。

「アルノー伯を痛めつける口実が出来たな。ウジェ、出来たらいや出来なくても伯爵、殺さないでくれよ?」

ウージェーヌは珍しく不機嫌な顔をする。

「加減する自信気持ちもないんだが?」

エリクは説得をしようとはしない。

「できるよ、ウジェは。俺に渡した方が、あいつが死ぬより辛い目いあう事をしってるから」

ウージェーヌは言い負かされたし、それが真実であると知っていた。

「ドニ様もいるしね」

エリクに微笑は天使の様に美しかったがその部屋にいる人間には悪魔がほほ笑んでいるように感じられた。


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