151 / 212
第四章
エリクは天使のように微笑む
しおりを挟む
グランサニュー公爵がかかと笑った。
「アーノルドよ、戻ってきたな」
「モンスター津波と戦うのは我々の使命だかですよ。……我が領軍は最終的に神殿と共闘させたいですね。先行隊を捕まえたい」
エリクが頷く。
「こちらもそうありたいですな。聖騎士たちを10人ほど都合着けてきました。我々、私、ドニ様、グランサニュー侯爵とグランジエ一家、アル様を私は運んで廃神殿へ行きます。…ウジェ、マドレーヌのを死守してくれ」
ウージェーヌは静かに笑う。
「うちの娘を舐めんでくれ。……一人は喰われちまったけどな。マリアンヌのかたき、っていうかね」
ウージェーヌはちろりと北の侯爵を見る。
「アルノー伯爵本人と対峙できるならガチで殴りに行くからな」
「……俺もだ。どうも妻を寝取られてる」
侯爵が吐き捨てるように言った。公爵から昨夜、アルノー伯爵家に起こった事を知らされたのだ。
「ウジェに言っておかんといかんことがある」
「なんでもとはいいませんが聞きますよ?」
ウージェーヌは少々皮肉な表情になった。
「アランとマドレーヌの婚約なんだが……。表向きはアルノーの奥方、俺の遠い親戚だな、を信用してという事で進めたが、どうも……妻がウジェの所との婚約をアルノー伯爵に強請られて俺がそう考えるように誘導された節がある」
「何年も前ですよ、子供の婚約。ま、もう破棄したけど」
ウージェーヌが不思議そうな顔になる。
「そこででてくるのが正妃だ。王都の屋敷にいる時にちょくちょく正妃からお茶会の誘いの手紙が来てたんだ」
エリクがぐりんと顔をこちらに向けた。
「……その話詳しく」
侯爵は話始めた。
「新年のパーティ前後、3か月ぐらいの間か、王都のいる間に大体4、5回正妃からの茶会の手紙が来ていた。妻、メリッサは『普段は免れてるお役目だものね、王都にいる間は私もせいぜいお手伝いしなきゃ。私が入ることで休める奥方もいますからね』と毎回断らずに茶会に出てたんだよ」
ウージェーヌもその茶会がただのお茶会ではない事を知っていた。ウジェの妻、ジョアンは誘われることは一度もなかった。そのお茶会は貴族夫人を招いて『ちょっとした、背徳的な楽しみ』を繰り返す会だったのだ。一番狙われたのは新婚の下位貴族夫人だった。正妃宮の秘密の一室で繰り広げられる淫靡な宴は男は大抵ヤギの頭を模したマスクを被っていたという。アランとネイサンはそういう宴にも参加していたらしく彼らから詳細をエリク達は聴いていた。
「で?」
「どうもアルノー伯爵は辺境を狙っていたんだと思う」
「ま、そうでしょうね。我ら辺境の森にある魔獣を産む黒い靄、この北の辺境には無いはずの靄、を狙っていたんだと思いますよ」
ウージェーヌの冷静な分析に北の侯爵も頷く。
「うちが狙われた、のではなく……メリッサのが迂闊だったんだよな」
「そうか、そんな前からか」
エリクがにんまりと笑う。
「アルノー伯を痛めつける口実が出来たな。ウジェ、出来たらいや出来なくても伯爵、殺さないでくれよ?」
ウージェーヌは珍しく不機嫌な顔をする。
「加減する自信気持ちもないんだが?」
エリクは説得をしようとはしない。
「できるよ、ウジェは。俺に渡した方が、あいつが死ぬより辛い目いあう事をしってるから」
ウージェーヌは言い負かされたし、それが真実であると知っていた。
「ドニ様もいるしね」
エリクに微笑は天使の様に美しかったがその部屋にいる人間には悪魔がほほ笑んでいるように感じられた。
「アーノルドよ、戻ってきたな」
「モンスター津波と戦うのは我々の使命だかですよ。……我が領軍は最終的に神殿と共闘させたいですね。先行隊を捕まえたい」
エリクが頷く。
「こちらもそうありたいですな。聖騎士たちを10人ほど都合着けてきました。我々、私、ドニ様、グランサニュー侯爵とグランジエ一家、アル様を私は運んで廃神殿へ行きます。…ウジェ、マドレーヌのを死守してくれ」
ウージェーヌは静かに笑う。
「うちの娘を舐めんでくれ。……一人は喰われちまったけどな。マリアンヌのかたき、っていうかね」
ウージェーヌはちろりと北の侯爵を見る。
「アルノー伯爵本人と対峙できるならガチで殴りに行くからな」
「……俺もだ。どうも妻を寝取られてる」
侯爵が吐き捨てるように言った。公爵から昨夜、アルノー伯爵家に起こった事を知らされたのだ。
「ウジェに言っておかんといかんことがある」
「なんでもとはいいませんが聞きますよ?」
ウージェーヌは少々皮肉な表情になった。
「アランとマドレーヌの婚約なんだが……。表向きはアルノーの奥方、俺の遠い親戚だな、を信用してという事で進めたが、どうも……妻がウジェの所との婚約をアルノー伯爵に強請られて俺がそう考えるように誘導された節がある」
「何年も前ですよ、子供の婚約。ま、もう破棄したけど」
ウージェーヌが不思議そうな顔になる。
「そこででてくるのが正妃だ。王都の屋敷にいる時にちょくちょく正妃からお茶会の誘いの手紙が来てたんだ」
エリクがぐりんと顔をこちらに向けた。
「……その話詳しく」
侯爵は話始めた。
「新年のパーティ前後、3か月ぐらいの間か、王都のいる間に大体4、5回正妃からの茶会の手紙が来ていた。妻、メリッサは『普段は免れてるお役目だものね、王都にいる間は私もせいぜいお手伝いしなきゃ。私が入ることで休める奥方もいますからね』と毎回断らずに茶会に出てたんだよ」
ウージェーヌもその茶会がただのお茶会ではない事を知っていた。ウジェの妻、ジョアンは誘われることは一度もなかった。そのお茶会は貴族夫人を招いて『ちょっとした、背徳的な楽しみ』を繰り返す会だったのだ。一番狙われたのは新婚の下位貴族夫人だった。正妃宮の秘密の一室で繰り広げられる淫靡な宴は男は大抵ヤギの頭を模したマスクを被っていたという。アランとネイサンはそういう宴にも参加していたらしく彼らから詳細をエリク達は聴いていた。
「で?」
「どうもアルノー伯爵は辺境を狙っていたんだと思う」
「ま、そうでしょうね。我ら辺境の森にある魔獣を産む黒い靄、この北の辺境には無いはずの靄、を狙っていたんだと思いますよ」
ウージェーヌの冷静な分析に北の侯爵も頷く。
「うちが狙われた、のではなく……メリッサのが迂闊だったんだよな」
「そうか、そんな前からか」
エリクがにんまりと笑う。
「アルノー伯を痛めつける口実が出来たな。ウジェ、出来たらいや出来なくても伯爵、殺さないでくれよ?」
ウージェーヌは珍しく不機嫌な顔をする。
「加減する自信気持ちもないんだが?」
エリクは説得をしようとはしない。
「できるよ、ウジェは。俺に渡した方が、あいつが死ぬより辛い目いあう事をしってるから」
ウージェーヌは言い負かされたし、それが真実であると知っていた。
「ドニ様もいるしね」
エリクに微笑は天使の様に美しかったがその部屋にいる人間には悪魔がほほ笑んでいるように感じられた。
33
あなたにおすすめの小説
特技は有効利用しよう。
庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。
…………。
どうしてくれよう……。
婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。
この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
クゥクーの娘
章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。
愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。
しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。
フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。
そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。
何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。
本編全24話、予約投稿済み。
『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる