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ダンジョン攻略の章

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 その日から暫くエドガーとヨアヒム、ブラッド、オールは工房に籠っている。みんな食事の時間には出てきて黙々と食事をし、昼は食事のあと3時間ほどの仮眠を拠点のハウスの中で適当な場所でとっている。エドガーはいつの間にかヨアヒムの錬金鍋の作者の作った汎用型の錬金鍋をヨアヒムからもらっていた。そしてヨアヒムがエリクサー作りで悩んでいる横で、ポーションを作るために必要な素材を作っているらしい。

「師匠は悩みつつ指導してる最中に思いついてはノートに書き込みしてる。俺も師匠が使ってる皮の表紙のノートもらった。『思いついたらなんでもいい、書け』って。最初は構えた事しか書けないかもだけど、メモするくせをつけろって言われた」

久しぶりに夜にもエドガーは戻ってきていたのでアキラ、エドガー、ルトガー、ユリアーナ、ランディでトランプで遊んでいる。このトランプはウルリッヒ商会製でちょっと豪華な意匠のものだった。
 ルトガーはユリアーナとブランカにとバレッタを買って帰って、ユリアーナに欲しいものを選んでもらってからブランカへのものはエドモンドへ預けた。その時にユリアーナは石付のバレッタのトルマリンの方を選んだ。

『この緑の石のは姉さんが持ってる方が喜ぶと思うよ』

と言った。兄弟はユリアーナの言外の意を汲み取った。ブランカがルトガーの瞳をほうふつとさせる石を喜ぶだろう、と。エドガーは『ブランカも昔ほど嫌なやつじゃなくなってるし』と考えていた。

「そうだ、ユリアーナ。ルトガーとランディと一緒にちょっとお試しに言ってくれないかな」

アキラが依頼する。

「今、再生中のダンジョンの強さ調査に行ってほしいんだ」

「こないだ吸血鬼がとか言ってたやつか」

「そう。今回の移動はズルをしてオールとブラッドの門を使う。冒険者が入る前に様子見てほしい」

「了解」

「なんで俺は指名なしなの?」

エドガーが不満そうなのでアキラが

「エリクサーの調合なんてまず見る事出来ないと思うけど。ヨアヒム手伝ってるんだろ」

エドガーの顔がぱっと明るくなった。

「うん。そだね。師匠のすごいとこ見ておかないと」

「そういうこと」

アキラの言葉にエドガーは納得したようだった、



 ユリアーナは父親、ラルフに『母親の実家には戻らず、数年は冒険者をするつもり』『もっと先の将来は田舎で農場をしたいけど『どこ』でするかはまだ決めていない』事を報告した。ラルフも感じている『善良だけど独善的』である事で暫く一緒にカタリナと暮らした時のカタリナへの愛情の薄さとカタリナがいることで増すエリザへの愛情と愛情表現を見て、カタリナをあの人たちと一緒にしないで、とユリアーナは訴えた。

 ユリアーナは『いくら関心がない相手でも罰としてあの人たちと一緒に過ごさせるのはだめだと思う。…ブランカ姉さんが一緒にいると亡くなったエリザさんの年齢に近くなったせいか、姉さんを『エリザ』って呼んだり、あの祖父母二人、ちょっと…怖いまではいかないけど違和感がある』とラルフに告げた。

 ラルフは二度とカタリナと会う気はなかったからカタリナの父母に婚費を渡して取りに行かせていたが(ユリアーナがその家にいたし子供の顔もみたかろうという配慮ではあった)、子供からみても祖父母がおかしいと見えるならばカタリナを実家に行かせなくていいと思ったし、もう離婚と騒ぐほどの情熱もないのでただ単にジョンに来てもらって不都合はないか、を報告をもらう形でいいだろうとラルフは決断した。ユリアーナとエドガーが来た時にかなり『痩せた』『顔色がよくない』と言われた。たしかに取引の挨拶に行った国で熱病にかかり2週間で帰国の予定が一月以上かかったのだ。その病み上がりだからだよと二人にラルフは説明した。この熱病は後々までラルフを苦しめる。肺を痛めつけられたのだ。また今回は国内も大きな取引があったのでレドモンドもエドモンドも連れずに行ったのだ。今回、エドモンドかマルクのどちらかを連れて居れば熱病が後ひくこともなかっただろうとラルフは思っている。

 ラルフはカタリナの妊娠や相手の事を聞いても『そうか』という言葉しか出さなかった。それは『そうか』以上の感想がなかったからだった。ジョンがあの村に、というかカタリナの実家や本家の側に居たくない気持ちもわかったが、そのせいのトラブルではあるな、と思ったが口にはしなかった。

 
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